都立の雄対決にスタンドも満員、お互い意識過剰の部分もあったが雪谷に軍配 

力投する鈴木優(都立雪谷)

 注目の都立の雄対決に、多くの高校野球ファンか集まって、神宮第二球場には朝から長い行列が出来ていた。

 都立小山台は今春のセンバツに21世紀枠代表校として、都立校で初めて出場を果たしたことで注目された。

 一方都立雪谷は、2003年夏に東東京大会を制して初出場を果たしている。ともに、甲子園出場を経験している都立校同士でもある。しかも、都立雪谷には鈴木 優君というプロも注目する投手がおり、小山台の伊藤 優輔君も実績のある好投手で高い評価を受けている。

 それだけに2〜3点の攻防で投手戦が予想されたのだが、思わぬ展開の試合になった。2回戦の段階だというのに、2階席も開放するという満員のスタンドや、広島、中日、DeNAや日本ハムなど多くのスカウトたちもネット裏から見つめ、応援スタンドもぎっしりと詰まり、都立雪谷は夏の大会並みにブラスバンドとチアガールもフル装備だった。それに、都立小山台は品川区で都立雪谷は大田区と隣接する区で、お互いに知っている顔も多いという。だから、意識するなという方が無理なくらいに、お互いに意識しあう対決となった。

 そんな雰囲気もあったのか、どちらも最初から硬いなという感じはしていた。何か、いつもとちょっと違うぞ…、という空気を感じていたのかもしれない。どこかに、相手に対して意識過剰になっていたところもなかったと言えば嘘になるだろう。それが、結果的には乱戦となった試合の背景にあったのではないだろうか。

 初回、ともに先頭打者が二塁打してバントで進め、3番打者が返すという同じような形で1点ずつ取り合った。さらに2回は都立小山台は失策絡みで、都立雪谷も暴投絡みで、ともにまたも1点ずつを入れる。3回になって、やっとお互いが0で抑えたところで試合は落ち着くのかと思われたが、そうはならなかった。

 4回にも四球と失策絡みで都立小山台が3度目のリードをすると、都立雪谷も5回に失策と暴投2つの暴投などで3点を奪って、この試合初めて都立雪谷がリードした。ところが、都立小山台も粘り強く、二死から諏訪君とこの日1番に起用した風間君の二塁打などでチャンスを作ると、またしても失策で2点差を追いついた。

 決して雑なプレーをしているとか、そういうことではないのだろうけれども、何かどこかがいつもと違うという、お互いがそんな動きだったようだ。

 

先発した伊藤(都立小山台)

 決着がついたのはその裏で、都立雪谷が打者一巡で4点を挙げたことで、ついに都立小山台を振り切ったという形になった。この回、一死二三塁から5番三井君の左前への2点タイムリーと6番小豆畑(あずはた)君の右中間三塁打、さらには8番木本君のタイムリーなどで4点が入った。

 それでも、都立小山台は8回に、またも失策絡みで2点を返して食い下がったが、結局あと一歩及ばなかった。乱戦気味になっていながらも、伊藤君は8回裏、そして鈴木君は9回表と、お互いにこの試合での最後のイニングだけは3者凡退で抑えたのはさすがだった。9回の雪谷の守りは、先頭の8番に入っていた吉田君の好打を中堅手山北君がダイビングで好捕したのも大きかった。

山北君は、相原健志監督がキーマンとして挙げている選手で、1番打者としても二塁打を含む3安打を放つなど、その役を果たしていた。それでも、これだけ得点が入っていながら試合時間は2時間02分というスピーディーなものだった。失策や暴投、捕逸はあったものの、四球で崩れることがなかったということも、試合そのものは何とかまとまった要因の一つだったであろう。

 試合後都立雪谷の相原監督は、「鈴木は、負けたくないという気持ちもあって、地元の後輩なんかも多く来ていて意識したところもあったのでしょうが、今日はよくなかったですね。それに、インターフェアやボークなど、不運もありましたけれども、こんな雰囲気の中で、最後はよくまとめましたよ」と、かばいながら評価していた。

 また、都立小山台の福嶋正信監督は、いくらか肩を落としつつ、「う〜〜ん、硬かったですかねぇ。甲子園というもっと凄いところでやってきているんですけれども…。まあ、でもいくつか課題が見えてきたことで収穫はあったと思います。ただ、シード権を取っておかないと、夏の試合が平日になるとね…授業と重なりますからね」と、進学校としてのついて回る悩みも口にしていた。

 ただ、都立有力校対決、失策や暴投はあったものの、いい緊張感はあった試合だった。ともかく、これだけの人が集まるということも含めて、注目度は高いということは間違いない。今年は、他の都立校にも有力選手や注目選手と言われる逸材が多く、夏までずっと、こうした雰囲気は続いていくのではないだろうか。

(文=手束 仁)