大味な試合の中での、目の覚める一発 

最速135キロをマークした帝京第五2番手・清家悠太(3年)

 大会初日の雨天順延により、1回戦から決勝戦まで4連戦となった3連戦目。両校選手たちの疲労は明らかだった。 特に3試合連続先発となった北条・岡田 祐介(3年)は、前日見せた低目へのコントロールは全く影を潜め、5四死球を与え3回早々に降板。3回裏には二死満塁から代打・新家 淳史(3年)の中越二塁打で一度は逆転するも、続く2投手も好調を維持する帝京第五打線の餌食となってしまった。「この段階まで進み、経験できたことを夏に活かしたい」と試合後の北条・澤田監督は努めて前向きに語ったものの、もし県大会決勝戦に進出すれば春夏秋通じ初の快挙だっただけに、北条にとっては実に恨めしい雨天順延であろう。

 とはいえ、20年ぶりに春の愛媛県大会決勝へ駒を進めた帝京第五も決して誉められた内容ではない。先述の逆転を許したシーンは中堅手の松本 将太(3年)が「打球への距離感覚はあっていたが、背走する形になってしまって」グラブに当てて後逸。試合後、松本 将は2回3分の1で一塁手に回った先発左腕の伊丹 拓巳(3年)に「あれを捕っていればもっと投げられた。本当に悪い」と謝罪したが、彼がもしさらなる上のレベルを狙うのであれば、絶対に捕球すべき打球であったことは念押ししておきたい。

 また、高校通算30本塁打の1番・松本 凌太遊撃手(3年)もこの日は2盗塁したものの、4打数1安打1失策とやや精彩を欠く内容。この日は6球団、2日間でNPB12球団中10球団のスカウトが詰め掛けた前で、安定したパフォーマンスを見せるには至らなかった。

 その一方で帝京第五には収穫もあった。まず投手陣では2番手右腕・清家 悠太(3年)が最速135キロのストレートとフォーク、スライダーを駆使しゲームを落ち着ける活躍。この試合では左翼手に入った5番・中野 翔太(3年)も、5打数4安打7打点と大爆発。特に4回裏一死一・二塁から真っ直ぐを「気持ちで」思いっきり叩いてレフトスタンド中段に叩き込んだ大会第5号3ランは、高校初アーチとは思えないほどの目が覚めるような一発。概して大味な内容にあって、エースの打撃がひときわ際立つ準決勝となった。

(文=寺下 友徳)