「選手層」で決まった昨秋県準決勝再戦の行方 

西条先発・松田蓮(3年)

 四国大会出場権を懸けた昨秋県大会準決勝の再戦。昨秋は東温左腕・渡辺 翔吾(3年)と西条右サイド・島田 真希(3年)が素晴らしい投手戦を演じた末、西条が3対1で勝利している。

 しかし、今回の対戦は両者ともに試合前から、もっと言えば大会前から、全く異なるシチュエーションにあった。西条・島田は右肩に違和感を抱え、大会のベンチ入りメンバー20名から外れることに。先発は当時エースナンバーを背負うも2番手に甘んじた松田 蓮(3年・右投右打・167センチ68キロ)。対する東温・渡辺は3連投の先発マウンドに立つも「将来を考えたうえで自分が決断して」(和田 健太郎監督)3回からは外野へ回ることになってしまった。

 ここでモノを言ったのが「選手層」である。松田は7回表には2四死球で出したランナーを2番・青野 凌太二塁手(2年)の右中間二塁打で返されるなど計3点は失ったが、力のある自己最速にあと2キロと迫る最速134キロのストレートとスライダーを中心に8奪三振。打っても3回裏の先頭打者で中前打を放つと「センターの捕球体勢がよくなかったし、次の塁を狙うことは徹底してやってきた」冬の成果を体現し二塁を陥れる好走塁。試合の流れを引き寄せる2点目への布石で自らを助けた。

 

西条7番・山内竣希左翼手(3年)

 それ以上に圧巻だったのは西条の打撃陣である。「この大会では頑張ってきた色々な選手に経験を積ませる」菅 哲也監督の意向を受け、「6番・一塁手」に入った183センチ81キロの堀 優斗(2年・右投右打・西条東中出身)や、7番・左翼手に入った山内 竣希(3年・168センチ62キロ・右投右打・新居浜スワローズ<ヤングリーグ>出身)、そして「3月の練習試合から調子を上げてレギュラーをつかんだ」と指揮官をも驚かせた木花 賢弥(2年・右投左打・伊予三島リトルシニア出身)の3名がスタメン入り。

 それでも6回までに5点を奪うと、7回裏には4連打で始まり「昨秋の四国大会2回戦・池田(徳島)戦で打てなかった後、臥薪嘗胆でやってきた」1番・矢野義記遊撃手(3年)の左前打で決める7安打集中でコールド勝ち。昨秋の2番・浅海 将也遊撃手(3年)、3番・白川 大智左翼手らが控えに回わっても、全くそん色ない破壊力は東予地区予選から5試合連続の2桁得点となって表現された。

 一方の東温。2004年・済美のセンバツ初出場初優勝、夏甲子園初出場準優勝に大きく寄与した和田 健太郎監督(当時はコーチ)、竹本 治義バッティングコーチ指導の下、昨秋より明らかにスイング力と打球スピードが上がってはいたが、現時点で西条をしのぐだけの選手層はなかったことは否めない。

 ただ、夏の愛媛大会での第4シードが確定した東温の選手たちも灼熱の時期までには「打ち合いができるようにしたい」指揮官の狙いを体現してくるはず。準決勝以上での対戦、両者万全で迎えるであろう「3度目」があった場合は、また興味深い内容と結果が待っていることだろう。

(文=寺下 友徳)