成立学園vs早大学院 9回に一発で追いつかれるも、成立学園延長10回サヨナラ勝ち
小気味のいい投球を見せる左腕・木寺 凌世君(成立学園)
やわらかな春の陽射しが注ぎこまれて、周辺の桜の花も満開に咲き誇って球児たちを見守っている昭島市民球場。そんな中で、テンポのいい投手戦が展開された。
早大学院は177cm67kgという、投手としてはやや線が細いかなという印象だが、今風のバランスのとれたスタイルの新田 大貴 君、成立学園は165cm61kgと小柄ながら、小気味のいい投球を見せる左腕木寺 凌世君が先発。どちらも立ち上がり先頭打者こそ出しはしたものの、お互いに持ち味を発揮して、4回まで試合はスイスイと流れてわずか40分足らずだった。
展開からしても、ロースコアの決着になるだろうと思われたが、成立学園は5回にチーム初安打が5番大橋君のレフトへソロホーマーとなって先制。出会い頭の様でもあったが、何はともあれ97mのスタンドへ運んだのは見事な一振りだった。
追う早大学院は6回までは3安打散発で、走者を二塁へまでも進めることが出来なかった。しかし7回、失策もあって二死二塁とすると、ここで7番新田君が中前へはじき返して同点打となった。早大学院としては、唯一の得点機を見事に生かしての同点劇である。
こうなると試合は動き出す。その裏の成立学園は失策や捕逸で得た二死三塁を生かし切れなかったが8回、ここまで3三振だった小山君が右前打すると死球もあって二死一二塁となる。6番山下君は新田君の球が少し高めに浮いたところを捕えて中前打して再び成立学園がリードを奪った。
こうして成立学園は同点から8回裏に得点してリードという、後攻チームとしては願ってもない形で最後の守りに入った。木寺君の出来からしても、そのまま逃げきるのではないかというムードだった。ところが、早大学院も粘り強かった。
投手としてはやや線が細いが、今風のバランスのとれたスタイルの新田 大貴君(早大学院)
9回、先頭の4番中村君が木寺君のチェンジアップが抜けきらないで中途半端に引っかかったところを捕えてレフトへ同点のソロホームランを叩きこんだ。
ただ、木寺君はそれでも慌てることなく、後続は3人で抑えいった。その裏、新田君もまた成立学園の攻撃をあっさりと3人で仕留め、試合は延長戦に突入した。
両投手のこの日の調子とお互いの打線との兼ね合いから、もしかしたら15回くらいまでもつれてしまうのではないかという雰囲気でもあった。ただ、延長に入って緊張感も増してくると、何が起こるかわからない、それが野球ある。
10回の早大学院は9番永木君が中前打したものの、進めることが出来ず盗塁失敗もあって、結果的には3人で攻撃が終わった。その裏の成立学園は1番からの好打順だが、先頭の岩成君が四球で出ると、続く布施君が丁寧に送りバントを決めて一死二塁。3番小山君は1ボールの後の2球目を叩いて右翼線へ運び、二塁から岩成君が帰ってサヨナラとなった。
試合後、早大学院の木田茂監督はこの場面での迷いを悔いていた。「一番打つ打者だということはわかっていたんですけれども、今日は3つ三振取っていましたからね。2ボールになったら歩かせてもいいと思っていたんですけれども2球目を打たれてしまいました。やっぱり敬遠で塁を埋めて、次が途中で代わっていたので、併殺を狙った方が良かったのかなぁ」
それでも、9回に一発で追いつけた場面については、「4番だし、思い切っていけって送り出したら、打っちゃいましたね。ただ、その後ベンチがはしゃぎ過ぎて審判に注意されたりして、あれで冷めちゃったんですよね」と、苦笑していた。
2年前に甲子園初出場を果たしている成立学園は、小山君ら2年生はそれを見て入学してきた生徒たちである。もっとも、菅澤 剛監督は、「甲子園効果っていうのは、正直あまりないですよ。今年も、見ての通り小粒ですし…。打てませんしねぇ。それでも、こうして競り合って何とか勝っていくという、まあ、そんなスタイルです」と語っていたが、やはりチームとしてのスキはあまりないという印象だった。寺君に関しては、この日はやや球が浮き気味だったので、それが修正点ということになりそうだ。
ブロック予選でも1対0という試合で勝ってきている。まさに、こうした試合こそが成立学園らしさとも言えそうだ。
(文=手束 仁)