話のきっかけが欲しくて動画を撮った。高橋愛出演CM仕掛け人が明かす撮影の舞台裏2
元・モーニング娘。の高橋愛が出演する防虫剤「ムシューダ&かおりムシューダ」新CM。“ライブ”編がオンエアされるのと同時に、メイキング映像が公開された。なぜ、CMだけではなく、メイキング映像も撮るのか。エステー特命宣伝部長・高田鳥場(たかだのとりば)こと、鹿毛康司さんに聞いた。(前編はこちら)
──メイキング映像はいつ頃から撮っているんですか。
鹿毛 エステーでは僕がCM製作を担当するようになってからなので、2003年以降ですね。当時は宣伝の仕事も初めてだし、CM撮影現場のことも何もわからない。製作チームと話したくても、きっかけがつかめない。そこでビデオカメラを持ち込み、メイキング映像を撮ることにしたんです。
──いいアイディアのような、そうでもないような……。周囲の反応はどうでした?
鹿毛 みんな戸惑っていました。通常、広告主はほとんど撮影現場に来ないんですよ。来たとしても、タレントを見にくるぐらい。それが、いきなりビデオカメラを持って現れ、現場をウロチョロするわけです。面と向かってやめてほしいと言われなかったのは、広告主に対する遠慮と「どうせすぐ飽きるだろう」と思われていたからでしょうね。
──ふつうCMにおいて、広告主はいちばんえらい人です。そんな人が撮影の現場で自由に動き回るって、現場としてはけっこう困ると思うんですが……?
鹿毛 かもしれません。でも、僕も仲間に入れてもらいたくて必死ですからね。まず、現場にスーツを着ていくのをやめ、なるべくTシャツにGパンといったラフで動きやすい服装を心がけました。上着はダウンジャケット、バッグはリュック。努力のかいあって、撮影現場でも広告主と気づかれなくなり、「ちょっと、そこの人、カメラに映り込んでるよ!!」と怒鳴られるようになりました。
──撮影の邪魔をしちゃダメじゃないですか!(笑)
鹿毛 ホントそうですよね。ただ、ああやって怒鳴られながらも、自分でカメラを回し、しつこくコミュニケーションを取り続けたおかげで今があるような気がしています。メイキング映像の撮影から編集まで自分でやり、DVDに焼いてスタッフに配ったり、監督に「僕が撮った映像です」「こんな風に編集しています!」と見せに行ったり……。今思うと、恥ずかしいけど、恥をかいたからこそ、本気だと思ってもらえたんじゃないかなとも思うんです。
──今回のCMのメイキング映像を見ると、高橋愛さんもファンもスタッフもすごく楽しそうです。
鹿毛 撮影の合間も、愛ちゃんがすごく盛り上げてくれていましたからね。じつは、今回の撮影時、あまりに一生懸命ファンサービスしている愛ちゃんを見て、内心ハラハラしていました(笑)。というのも、撮影の合間にタレントさんが控え室に行くのは休憩が目的ではありません。髪型やメイクを整え、気持ちを切り替え、コンディションを万全にする。そんな大切な時間であることを愛ちゃんは全部わかっていて、ファンと交流する時間にあてていた。その愛ちゃんの志は尊重したいわけにはいきません。
──前回のCMにも登場した「主婦ダンサーズ」に、高橋愛さんがなぜかEXILEの「Choo Choo Train」振り付けを指南している場面もありました。
鹿毛 主婦ダンサーズの4人はオーディションで「天才的にリズム感が悪い人」を選んだんです。全員すごいですよ! 本人たちはごく真面目で一生懸命踊っているんだけれど、素晴らしくリズムがとれない。オーディションのときに「キャラとしてはぜひ欲しいけれど、踊りがうますぎる」という人がいたんです。試しに「リズムを崩してダンスをしてみてくれませんか」とお願いしてみたけど、どうしてもわざとらしくなってしまう。主婦ダンサーズはまぎれもなく天然! 本人たちが真剣だからこそ、クスリと笑えるおかしみが生まれるんです。
───エステーの広告予算は約30億円。日本の企業の広告費ランキングで200位にも入らない低予算で知られています。なのに、好感度1位になるようなCMを連発。どうすれば、少ない予算でも面白いものが作れるんでしょうか。
鹿毛 法と倫理について徹底的に調べ、とことん考え尽くすことです。例えば、今回のCMではムッシュ熊雄がバーカウンターのような場所でくつろいでいます。でも、彼が飲んでいるのはお酒ではなく、ハチミツ。つまり、「CM内で未成年にアピールするキャラクターにお酒を飲ませてはいけない」という自主規制に抵触しないように作っているんです。
──メイキング映像にも、たしかにハチミツの壺が映ってました!
鹿毛 いざとなったら説明できるよう、メイキング映像でもしっかり記録を残しているんです(笑)。「自主規制に抵触するかもしれないから、やめよう」では、CMはつまらなくなってしまう。かといって、「バーに見えないだろうから大丈夫」と放置すると、指摘されてから慌てることになる。問題がないと証明できるよう、あらかじめ準備しておく。そこまで徹底してやれば、アイディアを守ることができるんです。
ビジネスの現場でやりたいようにやるには、それ相応の戦い方がある。そんな知見と戦略が詰まったエステーCMメイキング映像はエステー宣伝部ドットコムで閲覧できる。さらに今月28日(月)にはムシューダ新CM・1分バージョンがオンエア予定。
*『愛されるアイディアの作り方』(鹿毛康司/WAVE出版)
(島影真奈美)
──メイキング映像はいつ頃から撮っているんですか。
鹿毛 エステーでは僕がCM製作を担当するようになってからなので、2003年以降ですね。当時は宣伝の仕事も初めてだし、CM撮影現場のことも何もわからない。製作チームと話したくても、きっかけがつかめない。そこでビデオカメラを持ち込み、メイキング映像を撮ることにしたんです。
鹿毛 みんな戸惑っていました。通常、広告主はほとんど撮影現場に来ないんですよ。来たとしても、タレントを見にくるぐらい。それが、いきなりビデオカメラを持って現れ、現場をウロチョロするわけです。面と向かってやめてほしいと言われなかったのは、広告主に対する遠慮と「どうせすぐ飽きるだろう」と思われていたからでしょうね。
──ふつうCMにおいて、広告主はいちばんえらい人です。そんな人が撮影の現場で自由に動き回るって、現場としてはけっこう困ると思うんですが……?
鹿毛 かもしれません。でも、僕も仲間に入れてもらいたくて必死ですからね。まず、現場にスーツを着ていくのをやめ、なるべくTシャツにGパンといったラフで動きやすい服装を心がけました。上着はダウンジャケット、バッグはリュック。努力のかいあって、撮影現場でも広告主と気づかれなくなり、「ちょっと、そこの人、カメラに映り込んでるよ!!」と怒鳴られるようになりました。
──撮影の邪魔をしちゃダメじゃないですか!(笑)
鹿毛 ホントそうですよね。ただ、ああやって怒鳴られながらも、自分でカメラを回し、しつこくコミュニケーションを取り続けたおかげで今があるような気がしています。メイキング映像の撮影から編集まで自分でやり、DVDに焼いてスタッフに配ったり、監督に「僕が撮った映像です」「こんな風に編集しています!」と見せに行ったり……。今思うと、恥ずかしいけど、恥をかいたからこそ、本気だと思ってもらえたんじゃないかなとも思うんです。
──今回のCMのメイキング映像を見ると、高橋愛さんもファンもスタッフもすごく楽しそうです。
鹿毛 撮影の合間も、愛ちゃんがすごく盛り上げてくれていましたからね。じつは、今回の撮影時、あまりに一生懸命ファンサービスしている愛ちゃんを見て、内心ハラハラしていました(笑)。というのも、撮影の合間にタレントさんが控え室に行くのは休憩が目的ではありません。髪型やメイクを整え、気持ちを切り替え、コンディションを万全にする。そんな大切な時間であることを愛ちゃんは全部わかっていて、ファンと交流する時間にあてていた。その愛ちゃんの志は尊重したいわけにはいきません。
──前回のCMにも登場した「主婦ダンサーズ」に、高橋愛さんがなぜかEXILEの「Choo Choo Train」振り付けを指南している場面もありました。
鹿毛 主婦ダンサーズの4人はオーディションで「天才的にリズム感が悪い人」を選んだんです。全員すごいですよ! 本人たちはごく真面目で一生懸命踊っているんだけれど、素晴らしくリズムがとれない。オーディションのときに「キャラとしてはぜひ欲しいけれど、踊りがうますぎる」という人がいたんです。試しに「リズムを崩してダンスをしてみてくれませんか」とお願いしてみたけど、どうしてもわざとらしくなってしまう。主婦ダンサーズはまぎれもなく天然! 本人たちが真剣だからこそ、クスリと笑えるおかしみが生まれるんです。
───エステーの広告予算は約30億円。日本の企業の広告費ランキングで200位にも入らない低予算で知られています。なのに、好感度1位になるようなCMを連発。どうすれば、少ない予算でも面白いものが作れるんでしょうか。
鹿毛 法と倫理について徹底的に調べ、とことん考え尽くすことです。例えば、今回のCMではムッシュ熊雄がバーカウンターのような場所でくつろいでいます。でも、彼が飲んでいるのはお酒ではなく、ハチミツ。つまり、「CM内で未成年にアピールするキャラクターにお酒を飲ませてはいけない」という自主規制に抵触しないように作っているんです。
──メイキング映像にも、たしかにハチミツの壺が映ってました!
鹿毛 いざとなったら説明できるよう、メイキング映像でもしっかり記録を残しているんです(笑)。「自主規制に抵触するかもしれないから、やめよう」では、CMはつまらなくなってしまう。かといって、「バーに見えないだろうから大丈夫」と放置すると、指摘されてから慌てることになる。問題がないと証明できるよう、あらかじめ準備しておく。そこまで徹底してやれば、アイディアを守ることができるんです。
ビジネスの現場でやりたいようにやるには、それ相応の戦い方がある。そんな知見と戦略が詰まったエステーCMメイキング映像はエステー宣伝部ドットコムで閲覧できる。さらに今月28日(月)にはムシューダ新CM・1分バージョンがオンエア予定。
*『愛されるアイディアの作り方』(鹿毛康司/WAVE出版)
(島影真奈美)