コントローラでの操作に対応し、より遊びやすくなった「ディアブロ3」の体験版がPS3で先行配信中!
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いま、ゲームの評価軸が大きく変わりつつあります。背景にあるのがF2P(基本プレイ無料のアイテム課金スタイル)ゲームの拡大です。

これまでのゲームは「支払った金額に対して、どこまで楽しめるか」がポイントでした。しかし、最近では違います。ただ遊ぶだけなら「無料」のゲームが増えています。より大切なのは「時間」です。つまり「このゲームはどれだけ時間を費やす価値があるか」、ひらたくいうなら「無料でどれだけ楽しめるか」がキモになりつつあるんですね。「パズル&ドラゴンズ」も「艦隊これくしょん〜艦これ〜」も、「無課金でこんなに楽しめる」ことがウリの一つになってるでしょう?

もちろん、その裏には企業としての冷静な計算があります。ビジネスモデルがあります。課金に繋げる手練手管があります。しかし、ユーザーとして楽しむだけなら、そんなの関係ありません。まず遊んでみて、続きを遊びたければ購入すれば良いんです。音楽配信でも動画サイトでも電子書籍でも、サンプル視聴のオンパレード。いわば試食品が満載の、デパ地下状態だといえるでしょう。クリエイターには地獄でも、プレイヤーには天国のような世界の到来です。いやー、生きてて良かった!

その中でも今、注目したいゲームがアクションRPGの「ディアブロ3」。1月30日の正式発売を前に、プレイステーション3で体験版が先行配信中です。アイテム課金ではなくダウンロードの落としきりタイプですが、無料でプレイ体験を広めて、課金(購入)に繋げる点では同じだと言えるでしょう。そして、これがホントに良くできているんですよ。家庭用の大作ゲームは遊ばなくなって久しいんですが、年末年始の休暇でどっぷりと浸ってしまいました。人にもよると思いますが、10時間くらいは余裕で楽しめること請け合い。セーブデータも製品版に引き継げる安心の作りです。

もともと「ディアブロ」は1996年にアメリカのブリザード・エンタテインメントから発売されたPCゲームで、洋ゲー不毛の地と言われる日本でも異例のヒットを記録しました。ゲーム内容は、挑戦するたびに形状が変わるダンジョンを進み、モンスターを退治してアイテムを収集し、キャラクターを成長させていく、「ハック&スラッシュ」といわれるジャンル。ひらたくいえば「不思議の何とか」です。なにより最大の特徴が、4人までオンラインでパーティを組み、マルチプレイができた点。これが最高に楽しくて、世界中で「ディアブロ」フリークを生み出しました。「PK」(プレイヤー・キル)なる用語を、世界に知らしめたゲームだと言えましょう。

その後2000年に発売された「2」をはさんで、2012年に最新作の「3」が登場。そして2013年9月に海外でPS3版・Xbox 360版がリリースされ、日本では満を持してPS3版が、スクウェア・エニックスから発売されることになりました。シリーズで初めての家庭用ゲーム機版で、ゲームコントローラーで遊びやすくするための配慮が随所に見られます。左スティックで移動し、ボタンで攻撃するのに加えて、右スティックで緊急回避できるようになったのは、その一つ。天井から落とせるシャンデリアや、崩れ落ちる本棚などの仕掛けが随所に配置され、うまく立ち回れば魔物を一定時間ピヨらせることもできます。このように伝統のシリーズが家庭用ゲーム機で生まれ変わり、より磨きがかかった印象です。

選択できるキャラクタークラスは4種類から5種類に増え、バーバリアン(戦士)以外は総入れ替え。新たにウィザード(魔法使い)、ウィッチ・ドクター(召喚士)、デーモン・ハンター(弓矢使い)、モンク(格闘戦の達人)が加わりました。体験版では、このうちバーバリアンとウィザードが使用でき、前者は初心者向けで、後者は上級者向けといったところ。バーバリアンもさることながら、右スティックでバックステップを刻みつつ、遠距離から攻撃魔法をバシバシ撃ち込むウィザードが楽しいです。4人までの協力プレイにも遊べますが、バーバリアンとウィザードだけでは寂しいので、早く他のクラスも交えてパーティを組んでみたいところ。さすが商売上手ですね!

余談ですが初代「ディアブロ」は自分が唯一、攻略本の制作に係わったゲームでした。諸事情で日本語版が出なかったため、英語版のメッセージを翻訳して巻末に掲載した思い出があります。体験版を遊んでいると、シリーズの重要人物デッカード・ケインをはじめ、懐かしい固有名詞がぞろぞろ。当時を懐かしく思い出しました。ローカライズのレベルも高く、ダークファンタジー的な雰囲気をうまく醸し出しています。その一方でメッセージをスキップし続けて、ゲームに没頭し続けても、普通にプレイできる新設設計。クエスト内容なども画面上に常に表示され、進行に迷いません。「ストーリーも手を抜きませんが、出しゃばりませんから」という姿勢が嬉しい限りです。

最後にこのゲーム、ものすごく製作費がかかっています。PC版の「3」の売上は1400万本を突破しており、相応のコストがかけられたのでしょう。しかし「コール・オブ・デューティ」や「グランド・セフト・オート」シリーズといった、他の海外大作ゲームと方向性がちょっと違います。広大でリアルな世界を作り込み、自由に遊んでもらうスタイルではなく、「ハック&スラッシュ」という特定のゲームプレイに絞り込んで、それ以外を切り捨てているのです。「2」ではその「変わらなさぶり」を疑問に感じたこともありますが、「3」で彼らは「ディアブロ」というジャンルを作り上げたのだと感じました。この方向性は日本のゲーム開発にも相通じるものがあるのではないでしょうか。

振り返れば「ディアブロ」が発売された1996年は、ストーリー主導型の大作ムービーRPGが主流でした。にもかかわらず、そのストイックな内容で、日本のゲーム開発者に大きな刺激を与えました。そして最新作もまた、その変わらぬ姿勢が無言のメッセージを投げかけているようにも感じます。

とまあ、こういった理屈はおいといて、無料でこれだけ遊べたら大したモンだと思いますよ、いやホント! ぜひ遊んでみてください。
(小野憲史)