松栄立也 株式会社DMM.com代表取締役社長。提督。DMM.comは1999年に動画配信事業の企業として設立された。現在では動画配信のみならず、ソーシャルゲームやFX事業、太陽光発電事業、3Dプリンターなど、さまざまな分野に進出している。一般向けオンラインソーシャルゲーム「艦隊これくしょん」は会員数100万人超の大ヒットとなった。

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――松栄社長って、艦これやってるんですか?
松栄 やってますよ、もちろん! ハイパーズ(大井改二&北上改二)は五セット持ってる。ちとちよ(千歳&千代田)も四セット。四〜五セットあると交替で連続出撃できるよねー。潜水艦は四種揃ったし……艦娘の最高レベルは98。
――ガチだ!

ユーザー数130万人を越えた大ヒットゲーム「艦隊これくしょん」(以下、艦これ)。株式会社角川ゲームスと株式会社DMM.comの協力で生まれたゲームだ。第二次世界大戦期の艦艇を擬人化した「艦娘」という少女キャラクターたちが活躍する。艦これについて、DMMの代表取締役社長、松栄立也提督はどう考えているのだろう? 話を聞いてきた。

■DMMは「お人好しのエンジェル」

――艦これにDMMさんはどのように関わることになったんでしょうか。艦これの企画は角川ゲームスですよね。
松栄 うちのオーナー(会長)直下にいるプロデューサーの岡宮と、角川の企画の田中さんが会長に持っていったら、「うん、わかったわかった!」みたいな感じで決まったんです。
――そんな簡単に!?
松栄 もちろん損益見込みとかはちゃんと吟味していますが、企画内容に関してはそんな感じです。うちの会長は萌え系とかさっぱりわからない人なんですけど、「岡宮が『いいですよこれ!』って言ってるんだったらいいかな」って、それくらいの気持ちだったとか。アクティブの会員数が二万人くらい集まればいいと思ってた。それがなんと130万人越え! まさしく無欲の勝利っていうのかな…(笑)。うちの会社って、「お人好しのエンジェル(投資家)」なんです。
――他にも投資したものってあるんでしょうか。
松栄 AKB劇場の動画配信ですね。劇場の観客がまたまだ少なく、売れてない時代からやってます。「うーん、わけわかんないけど、まあいいか、協力してあげるよ!」って。3Dプリンターとかもそう。色んな企画が持ち込まれて、だいたい五割くらいの確率で企画が通る。その中の九割方がだめになって撤退してるんですけど、たまーに艦これとか、大ヒットが生まれているっていう状況。なんか面白い企画があったら持ってきてください(笑)
――五割! けっこう多い…。どういう企画が通りやすいですか?
松栄 よくわからないもののほうが通る確率が高い。よくあるコンテンツだったら「うん、だいたい売上こんなもんだな、パス」ってなるけど、艦これは未知数だった。1998年からインターネット配信事業を始めて、2003年から一般コンテンツもやりだしたんだけど、一般コンテンツでこんなにヒットしたのは艦これが初めてかもしれない。

■武蔵ゲットまでの道のり

松栄 艦これのサービスは四月にスタート。ヒットしてるって気付いたのは六月くらいでした。DMMの中で必死に検索したんですよ。でも、艦これっていうのがどこにもない! 社員に聞いたら、「どこ探してます?」「アダルトのコーナーに決まってるじゃん!」「これ、一般なんです」。えー、アダルトじゃなくてもヒットしちゃったの!?って、すごくびっくりした。
――そして社長自らも、鎮守府に着任したわけですね。
松栄 ところがその頃にはすでに入会規制があったんですよ。「ちょっとー、俺やってみたいから入れさせてよ」って頼んだら、「ダメです。ユーザーと一緒に順番待ちしてください」ってあっさり拒否されちゃった。
――社長なのに。
松栄 やっと始められたのが、8月15日。たまたま終戦記念日に入れた。そのとき、ちょうど夏イベントをやっていて。戦艦大和がゲットできるかもしれなかったけど、とうてい間に合わない。だからもう一回頼んだ。「大和のデータだけ俺にくれよ!」。でも、「ダメです。そんなのは絶対ムリです。技術的にはできるかもしれないけど、ダメです」。超冷たいの。
――社長なのに……。
松栄 大和は諦めたけど、秋イベントの武蔵は自力でゲットしました。夜中にE-4突破したとき、もうガッツポーズですよ!
――あの地獄のE-4を抜けたんですか。
松栄 副砲を積んで、三式弾用意して……。E-4のゲージを削りきる前に資材が底をついて、一度諦めた。「もうこんなのやらない。もう二度とやらない。武蔵なんかいらないもん」って。で、一週間くらい経ったら、続々と「武蔵突破!」って報告がTwitterに上がりはじめた。くそー運営めー! もう行ったるわー! 突撃! 突破できた。
――運営っていうと、DMMさんも含まれるんですか?
松栄 主に角川さん。プロデューサーの岡宮と角川の田中さんの信頼は厚く、こちらは後方支援しながらお任せしている。運営が良対応とかって言われてるのは、田中さんのチームとそのチームが相当な情熱を注いでがんばってくれてるから。……そういえば、艦これ運営のツイートで知ったんだけど、またイベントやるんだねー(『蒼き鋼のアルペジオ』のコラボイベント。インタビューを行ったのは12/19)。
――ツイートで知るんですか?
松栄 リリースも送ってくれるけど、Twitterもチェックしてます!

■ハマった原因は「ルーチン性」

――艦これにハマった原因ってありますか?
松栄 ルーチン性かな。艦これが生活に組み込まれるというか……。デイリークエストをやるのがクセになった。あと、意外に艦これって連続してできないじゃないですか。すぐ疲労してできなくなる。家で艦これやってると「あーみんな疲労してきたな。じゃあメールチェックして…」、その繰り返しでずっとやるようになる。疲労やダメージが溜まると入渠するけど、その待ち時間でついついその艦娘の歴史を調べ始めるようになった。島風って、最終的に敵にやられたんじゃなくて自沈したの知ってる?
――そうなんですか?
松栄 調べたらそうなんだって。島風って速いから、爆撃隊に襲われて40発くらい魚雷を空中から落とされたのに、すべて避けた。でも少しずつ機銃の弾は当たってる。装甲に穴があいて、少しずつ水が入っていって、最後ボイラーが爆発して沈没……。長門とか、他の艦も調べた。どんどん話読んでると、涙出てきて……。それでどっぷりはまっていってしまった。しかもその歴史がステータスの値に関連してるんだね。よく考えられてるなー、これ! って唸ってしまう。
――特に思い入れがあったり、お気に入りの艦娘っているんでしょうか。
松栄 外見が好みなのは榛名! ちょっと控えめで大和撫子っぽいところがいい。最初ちょっと苦手だったけど好きになったのは金剛と青葉。声を聞くと印象がかなり変わって可愛く感じるようになった。青葉は任務で必要なのになかなか来なくて困った……交換システムとか、ほしいよね。
――ほしいですね。要望とか、出してらっしゃるんですか?
松栄 「艦これ」として色々と考える部分があるみたい。今は演習以外のソーシャル要素がほとんどない。モンスターハンターみたいにみんなで助けあえたらいいよね。友達といろいろできればもっと面白くなるんじゃないかな。
(青柳美帆子)

後編に続く