【戸塚啓コラム】課題はディフェンスだけにあらず
6月のコンフェデ杯、7月の東アジアカップと合わせると、7試合で19失点である。大会のレベルも出場メンバーも違う試合をひと括りにするのはフェアでないが、それにしても失点が多過ぎる。目に余る。
長く失点パターンとなってきたＣＫからは、ゴールネットを揺らされなかった。もっとも、リスタートという意味では、２失点目が直接ＦＫからである。カベの作り方に問題があったが、ここでは時間帯をあげたい。
３点目の時間帯もコンフェデ杯を思い起こさせる。ブラジル戦で48分に２点目を、イタリア戦では50分と52分に失点をした。メキシコ戦でも54分に先制されている。付け加えれば、昨年10月のブラジルとの親善試合でも、48分に３点目を失った。
今回も54分である。同じような時間帯に、かくも失点を繰り返す。直接的には吉田のクリアミスが原因でも、チーム全体の課題として認識するべきである。自ら勢いを削ぐような失点の、何と多いことか。
試合後のザッケローニ監督と選手たちは、ミスの多さを敗因にあげた。そのとおりではある。日本が冒した技術、戦術、連携のミスを、ウルグアイは決して見逃さなかった。得点に至らないまでも、日本の守備陣を絶えず脅かした。
日本はどうだったか。
後半開始直後の47分、岡崎がビッグチャンスを迎えている。相手ＤＦのクリアが相手ＤＦにあたり、岡崎のもとへ跳ね返ってきた。ウルグアイからすれば、明らかなミスである。
しかし、フリーで抜け出した岡崎は１対１で決め切れない。ＧＫがセーブしたボールは香川のもとへこぼれてきたが、彼のシュートはＧＫの胸に収まってしまった。
ウルグアイ戦の完敗を受けて、『依然として守備に課題』とか『またしても守備が崩壊』といったフレーズが氾濫している。だが、ウルグアイはチーム全体でハードワークできるチームであり、鋭利なカウンターの使い手である。局面での激しさは彼らの伝統的な持ち味で、フォルランとスアレスの「個」の力も強烈だ。まともにぶつかりあえば、失点のリスクが高まるのは必然である。
ならば、今後は守備的に戦うべきなのか。真っ向勝負を挑んでなお勝利をつかめる可能性を、いまは探っていい段階にある。
失点の多さはもちろん気がかりだ。個人のミスによるものも減っていない。しかし同時に、相手のミスを生かし切れていない攻撃にもフォーカスを当てなければ、ウルグアイ戦は失望のみをもたらすことになってしまう。
コンフェデ杯の開始早々に、香川が決定的なシーンを逃した。ゲームは始まったばかりだったが、そこで先制していればメキシコに大きなダメージを与えることができた。それもまた、１対２で敗れた一因である。ウルグアイ戦の後半開始早々にスポットを当てたいのも、岡崎か香川が決め切っていれば、ゲームの行方が変わっていた可能性があるからだ。
1年前の8月15日にホームで行なわれたキリンチャレンジカップは、ベネズエラが相手だった。海外組も出場した一戦は１対１の引き分けに終わり、その後噴出するディフェンスの課題は表面化しなかった。
ウルグアイではなくベネズエラと対戦すれば、今回も守備は崩壊しなかっただろう。だが、それでは進歩がない。成長速度は上がらない。
ホームでもウルグアイにひねられてしまうのが、ザックのチームの現在地である。そこから出発して課題を洗い出し、改善策を練っていくことが、ワールドカップでの上位進出につながる。日本人の組織力と規律を持ってすれば、守備に軸足を置いた戦いはすでに担保されていると言っていい。だからこそ、いまはまだ攻撃的なサッカーの可能性を探ってもいい時期である。
同時に、個々の選手への要求は高くなっていく。同じようなミスを繰り返す選手の先発落ちは、その選手だけでなくチーム全体に危機感をもたらすためにも、停滞感や閉塞感を取り除くためにも、必要な手段となる。何よりも、この時期からブラジルW杯のレギュラーを保証するような選手起用は、チームに利益をもたらさない。
関連情報（BiZ PAGE＋）
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している
