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 親善試合である。場所は改装の終了したマラカナンスタジアム。ワールドカップの予選がないブラジルは親善試合も本気モードで臨んでいる。そして、数少ない公式戦であるコンフェデレーションズカップがもうすぐ始まる。当たり前のホーム開催なので、結果が求められていることだろう。

 おなじみのルイス・フェリペ・スコラーリ監督になってからのブラジル代表は選手配置に特徴がある。今までは、ネイマールを左サイド、起用されるならフッキは右サイドで起用する監督が多かった。しかし、ルイス・フェリペ・スコラーリはネイマールを中央、フッキを右サイドで起用することを基本としている。定まらないのは、中央のセントラルコンビ。パウリーニョの相方問題に結論が出るのはまだ先になりそうである。

 対戦するはイングランド代表。試合前に、Englandはワールドカップの優勝候補ではないよとブラジル代表の選手が言ったか否か。事実はどっちでもいいのだが、スタメンのネームバリューを見ると、その言動も否定出来ないのは事実である。なので、結果と内容で見返したいプレミアリーグ軍団である。ちなみに、監督はホジソンである。

 ■中盤に5枚を並べるぞイングランド

 序盤の両チームは、高い位置からの攻撃的な守備合戦で試合をスタートさせた。この試合が親善試合であることを忘れさせるようなスピードあふれる躍動感は両チームの狙いが何か?とか、システムはどのような形だろう?ということが非常に見えにくい立ち上がりであった。

 時間がたつと、イングランドが守備で自分たちの狙いをピッチで示すようになっていった。

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 イングランドは、4-1-4-1によって、ネイマールをマンマークするのだろうと予想していた。しかし、キャリックはランパードたちの隣にポジショニングしていた。狙いは、選手間の距離を近くすることで、図で示されたようなパスをさせないという狙いである。そして、SBにボールが出れば、イングランドのSHが素早く寄せることで、ボールを前進させない作戦である。

 よって、ブラジルはダビド・ルイスとチアゴ・シウバの両名から攻撃が始まることが多かった。相手がルーニーしかいないので、周りの選手と比べると、時間とスペースのあるCBがロングボールを中心にブラジルはイングランドに仕掛けていった。しかし、裏に飛び出す&ハイボールでなかなかいい攻撃が組み立てられそうもないブラジルはパウリーニョが動き始める。

 ■パウリーニョの作る動き

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 大切なことは、CBを押し出すためにDFラインに落ちるポジショニングをするパウリーニョ!ということである。ただし、これは定型文だよもうということで、こんな技もしていた。

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 完全にフットサルである。ランパードとミルナーの間のスペースで止まってボールを受ける場面もあった。こうして、愚直に相手の守備網をはがしにかかるパウリーニョの動き&後方からのロングボールの質の改善&個人能力の高さによって、徐々にブラジルがイングランドゴールに迫るようになり、ハート大忙しの前半戦を過ごすこととなった。

 ■守備に奔走するネイマールだけども

 イングランドが守備をセットしたのに対して、ブラジルの前線は時間がたっても、高い位置からの激しい守備をなかなかやめなかった。恐らくそれが狙いなのだろう。イングランドはボールを保持することができずに、最終的にハートが蹴っ飛ばす場面が多発していた。せめて空中戦を!なので、アウベスサイドを狙う事が多かったが、あまり意味はなかった。

 バルセロナへの移籍が決まったことで守備もしないと駄目だネイマールなんだけど、この試合のネイマールの守備を見ていると、しっかり守備をしてくれそうな予感である。GKまで走っていく場面も多かったから。ただし、この試合の気温は28度。どこまで持つかと思ったが、30分過ぎで終了していた。

 そうなると、ブラジル代表の守備の狙いがとらんにぼやてけてくる。ときにDFラインをどこに設定するのかが曖昧になり、パウリーニョ&ルイス・グスタボ周りにスペースができるようになる。フッキもオスカルも引いて守備をするのか、それでも追いかけ回すのか迷うのか、攻め残る判断なのかは、状況に依るのだろう。

 なお、イングランド代表で後半から登場したチェンバレン。彼にパウリーニョ&エルナネス→後半から登場したの周りのスペースを狙わせたホジソン采配はさすがであった。ただし、その後にフェルナンドと登場させ、スペースを埋めたルイス・フェリペ・スコラーリも見事であったが。

 というわけで、ブラジル代表の前プレは途中で止まる。ただし、止まるまでの激しさは異常。高い位置からの攻撃的な守備&ショートカウンター。相手がロングボールを蹴ることで回避するなら、その精度を落とし、ボールを回収することで、ボールを保持する時間を長くする。

 なので、この時間をどのように過ごすかが重要になる。ただし、仮にスコアレスでしのぎきったとしよう。そうなれば、前プレ圧力が落ちるので対戦チームのボールを持つ時間が増え、攻撃を仕掛けることができるだろう。ただし、そのときのブラジルはロングカウンターを執拗に狙ってくるので、めんどくさい状況なのは代わりはないのだが。

 ■エルナネスの登場

 後半の頭から、ルイス・グスタボ→エルナネス。ラツィオでトップ下をやっている印象なのだが、ブラジルでは低い位置で起用されているルナネスである。

 前半がスコアレスだったので、後半はより攻撃的にのブラジル代表。ルイス・グスタボも決して悪くなかったが、相手のブロックの外からでも存在感を発揮できるエルナネスの登場でブラジル代表の攻撃は加速する。狭いエリアでも平気でパスを狙うエルナネスであった。

 そんなエルナネスのミドルシュートのこぼれ球をフレッジが押し込んでブラジルが先制する。しかし、エルナネスに好き勝手にさせるかと投入されたチェンバレンの動きによって、イングランドは徐々に攻撃を仕掛けられるようになると、チェンバレンのミドルが炸裂する。

 後方でボールを動かせるフェルナンドを投入し、パウリーニョを前線に送り込むブラジル。イングランドはカウンターを狙う形に推移していき、ルーニーのわけわからないミドルが炸裂し、リードすることに成功する。しかし、前線に送り込んだパウリーニョのボレーが炸裂し、スコアは2-2。そして、そのまま終了した。

 ■独り言

 なかなか勝てないブラジルだが、やっていることは非常に理にかなっている印象。CBコンビは鬼だし、ダンテがまだ控えているわけだし。スタメン争いも左SBのフェリペ・ルイス対マルセロなど各地で行われているので、競争も激しそうである。というわけで、日本代表がどれだけやれるかは楽しみになってくる。まずはオーストラリア戦だけども。