期待か不安のどちらを呼び覚ましたかと言えば、後者になるだろう。３月22日のカナダ戦である。

　そうは言っても、テストマッチである。課題を見つけることにも意義はあり、あれができていない、これができていないと指摘するのは、実際にはそれほど意味がない。不安を感じさせたとしても、ヨルダン戦までの時間で十分に塗りつぶせるものである。本田と長友を欠くザックにとっては、最終的なテストの機会だったことも忘れてはならない。

　公式記録の上では２０００人の観衆が集まったカナダ戦だが、スタジアムの空気感は限りなく練習試合に近いものがあった。選手も人間である。観衆の後押しが少なければ、緊張感を高められなくても責められない。

　ここでケガをしてはいけないとの心理も、心のどこかで働いていただろう。それもまた、当然のことである。

　いずれにしても、大切なのはヨルダン戦までの残り３日間だ。カナダ戦を踏まえて、どのような準備をしていくのか。

　ヨルダン戦が行われるスタジアムは、ピッチコンディションが良くないと聞く。綺麗に芝生が刈り揃えられたカリファ・スタジアムと、相当な開きがあるのは間違いない。いつものパスサッカーができるのかは疑問だ。

　問われるのは柔軟性である。
　不用意にボールを失うリスク回避の手段として、ヨルダン戦ではロングボールを使う必要性が出てくる。前線からチェイスしてくる相手のプレスをかわす意味でも、中盤を飛ばすのは効果的だ。１トップにロングボールを当ててセカンドボールを拾い、そこから攻撃をひろげていければ、ヨルダンにはストレスとなるだろう。

　優先されるのは、相手が何を嫌がるのか。日本らしさではない。ピッチコンディションに合わせたサッカーが求められる。つまりは柔軟性である。

　ディフェンスの局面におけるリスクマネジメントは、「はっきりとしたプレー」だ。その前提となるのが、主審の判断基準である。

　コンタクトプレーで、どの程度ファウルを取るのか。あるいは取らないのか。ホームタウン・デシジョンはあるのか。

　そのあたりをできる限り早めに判断し、現実的な対応をしていくのである。先制点を与えると、中東勢は勢いづく。ゲームの立ち上がりは、とりわけ細心の注意を払いたい。

　キーマンには前田を指名する。カナダ戦では周囲との距離感が遠く、前線で起点と成りきれなかった。とはいえ、後半のような距離感であれば、ハーフナー・マイクに見劣りしないインパクトは残せたはずだ。

　彼がボールを収めれば、2列目の選手が前を向いて、しかもパワーを持った状態でボールを受けられる。周囲を生かせる背番号18の奮闘が、ヨルダン撃破には欠かせない。