「変身ベルト」のおもちゃは、子どもたちの憧れだった。

変身ベルトは仮面ライダーにとって無くてはならないキーアイテムだが、平成の仮面ライダーたちは改造人間ではなく、「クウガ」、「アギト」、「響鬼」以外のライダーはアイテムを使って変身する。

昭和からの変身ベルトは継承しつつも、そこにそれぞれのライダー独自のアイテム要素を取り入れている。

「仮面ライダー龍騎」は変身ベルトのバックルにカードをスロットインして変身するという、当時流行していたトレーディングカードの要素を取り入れた新しい試みだった。

この流行アイテムを取り入れる流れは以降も続き、「仮面ライダー555 (2003年〜2004年)」の変身ベルトには携帯電話、「仮面ライダー電王 (2007年〜2008年)」は電車をモチーフにしたキャラクターの通り、変身ベルトにICカードの自動改札機の要素が取り入れられ、「仮面ライダーW (2009年〜2010年)」では、USBメモリースティックをモチーフにしたガイアメモリを変身ベルトに差し込み、メモリースティックの属性によって変身する仮面ライダーが変わるという、日常の身近なものが変身アイテムになっている。

大人のまね事をしたがる子どもにとって変身ベルトは、大好きなヒーローと大人になった自分に変身することができる夢の道具になったのだ。

子どもたちからの絶大な応援を受け、戦い続けた昭和仮面ライダーたちだったが、次第に少子化の影響もあって人気に陰りが見えはじめ、1989年にシリーズを中断することとなった。

10年間の休止期間を経て2000年にスタートした平成ライダーシリーズ1作目の「仮面ライダークウガ」では、子どもだけでなく、父・母・子、親子2世代に受ける新しい仮面ライダーをコンセプトに制作された。

主役の俳優には、昭和時代のライダーのような、派手なアクションの似合う男らしい無骨な俳優ではなく、さわやかでモデルのような駆け出しの若手俳優を起用。

「クウガ」では、後に個性派俳優として数々の映画賞を受賞するオダギリジョーが主人公を演じている。

以降、水嶋ヒロや佐藤健といった若手俳優の登竜門として一つのジャンルを築いている。

さらに変身後の姿にもこだわった。

腹筋の割れた昆虫感のあるフォルムを無くし、クールでスタイリッシュなデザインに変えていった。

この狙い通り、変身前はイケメン俳優の活躍に母親が夢中になり、変身後はカッコいいライダーの戦いに父と子が夢中になれる、幅広い楽しみ方ができる作品になっている。

また、平成仮面ライダーシリーズが単なる子ども向けヒーロー作品ではない要素に、濃密な人間模様を描いたドラマ要素がある。

シリーズのなかでも「仮面ライダーキバ」はもっとも恋愛に焦点を当てた作品で、昼ドラ人気の影響を受けてか、ひとりの女性をめぐって主人公と弟が三角関係に陥り、さらには五角関係までドロドロの愛憎劇を繰り広げるといったかなり衝撃的な展開だ。

ファンの間では”昼ドライダー”と呼ばれるほど異色作に仕上がっている。

恋愛、人間関係など仮面ライダーに変身して、悪と戦うだけでは解決できない心の敵と戦う成長ストーリーでもあるのだ。

昭和から平成までざっと仮面ライダーの歴史を振り返ってきたわけだが、これから見ようと思った人は、「どの仮面ライダーから見ればいいの?」と迷ってしまう人もいるだろう。

どのシリーズから見ても十分に内容は理解できるので、ビジュアルがかっこいいライダーで選ぶも良し、女子なら気になったイケメン俳優から選ぶも良いだろう。

「dビデオ Powered by BeeTV」では平成仮面ライダー全9シリーズの配信中なので、ぜひ1作目の「仮面ライダークウガ」から順に平成仮面ライダーの経年変化も堪能してほしい。