サウサンプトン戦に先発出場した香川真司が久しぶりに生き生きとしたプレイを見せた。おそらくはマンチェスター・ユナイテッド移籍以降、最も活躍した試合と言ってもいいのではないか。

「今は本当にコンディションがいいので、その中で良い形でアシストできたことは、今の状態を物語っている。だけど得点ができていないというのがすごい課題。それに、後半の戦い方。チームとしても個人としても落ちてしまうので、そういう意味ではまだまだですね」

 いつもにくらべ幾分穏やかな口調で、香川は試合を振り返った。試合は2−1でマンチェスター・ユナイテッドが逆転勝利を収めた。

 香川がこの日、躍動したのには、大きく二つの理由がある。一つ目は本人が言うように、コンディションが良好であること。昨年末に負傷から復帰はしたが、準備期間があまりない中での実戦復帰だった。それから約1ヵ月が経過し、試合の中での動きもスムーズになってきた。

 もう一つはルーニー、ファン・ペルシーとの関係性だ。実はこの2人とのそろい踏みは、香川が長期離脱のきっかけになる負傷をしたチャンピオンズリーグ、ブラガ戦以来のこと。前半のうちに香川は膝を痛めたため、実質的に試合で機能するのは初めてと言ってもいいだろう。

 サウサンプトン戦で香川は4−4−2の左MFでプレイした。いつもであれば、なかなかゴール前での動き出しを見てもらえない。いくらディフェンダーとディフェンダーのギャップや、スタンドから見れば絶妙に思える場所に走り込んでも味方の視野には入らない。

 だがこの日は、圧倒的に視野の広いルーニーとファン・ペルシーの2人が前線にそろったことで、逆に香川のチャンスも増えた。3分に先制された直後の5分、まずはルーニーから香川へとペナルティエリア内にスルーパスが通る。惜しくもこれは得点にはつながらなかったが、ゴール前で味方がスルーパスを出してくれる状況自体がこれまでにはなかったことだ。

 ついで同点になった8分のシーン。味方の右サイドのスローインからパスがつながり、相手ディフェンダーがスライディングでカットしたボールを、香川が浮き球のスルーパスでダイレクトにゴール前へ送り込む。ペナルティエリア内のルーニーは素早く反応し、ディフェンダーに挟まれながらも冷静にゴール左隅に流し込んだ。

「スルーパスを出したら上手く決めてくれた」(香川)

 個人技ではなくコンビネーションから生まれた会心のゴール。テレビ中継局であるスカイも、ウェブサイトで今日のゴールとして取り上げ、香川のパスを称えた。

 対戦した吉田麻也は苦笑いで振り返る。

「シンジとファン・ペルシーだけにはやられたくないと思ってたら、ルーニーにまんまとやられた。大変ですね、マンチェスター・ユナイテッドに勝つのは」

 3人が次から次へと前線へ飛び出すために、気を抜くことはできなかった。吉田は冷静に続けた。

「でも、もっと本気にさせたかった。(2年前のチャンピオンズリーグ)シャルケ対マンUで見たときの(ような本気の)チームではなかった。相手を変えるような試合ができれば良かった」

 試合終盤にはサウサンプトンも相手を追いつめる猛攻を繰り出しはしたが、力の差は確実にあったわけだ。

 同点とした直後には、ルーニーの落としのパスから香川のシュートが左ポストをたたく決定機も生まれた。ペナルティエリア内の左側からのシュートだったが、「角度がなかったからコースを狙ったんですけど、1、2ミリの世界かなと思います」(香川)

 どんなに美しいアシストをしても、どれだけ好プレイを見せても、心から納得できる表情を見せるところまではいかない。

「毎試合、得点に近づいてきている中で、とるかとらないかは紙一重だから。そういう意味では僕にもっと、強い意志が必要なのかな」

 やはりこだわるのは得点。活躍を見せたからこそ、そのことをあらためて知らされる一戦だった。

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