まずはとにかく、グループステージ突破を讃えたい。Ｕ−23日本代表がモロッコを下し、最終戦を待たずにベスト８入りを決めた。五輪の８強入りは、２０００年のシドニー大会以来となる。

　モロッコはラマダン（断食月）の影響があったという。１トップのアムラバトが後半途中で退いたのも、体力的な消耗が理由だったとピム監督は話している。背番号９をつけたオーバーエイジが去ったことで、日本の最終ラインにかかる圧力は一気にダウンした。勝敗を分けたひとつのポイントだった。

　とはいえ、サッカーは国民性を色濃く反映するスポーツである。それぞれの国に息づく宗教や慣習を、切り離すことはできない。ラマダンと五輪が重なった不運には同情するが、だからといって日本の勝利を幸運としたら現実を見誤る。スペインとの第１戦に続いて、結果には必然性がある。

　この試合の日本は13本のシュートを許しているが、ペナルティエリア内から喫したものはごくわずかにとどまる。危険なゾーンへ侵入されたシーンは、シュート数ほど多くない。スペイン撃破の要因となった連動性のある追い込みには欠けたものの、守備の安定感は保たれていた。

　Ｕ−23日本代表の躍進に、僕はアベック出場の相乗効果を感じる。
「ひと足先に優勝した姿を観て、我々もやらなくてはいけない、と大きな刺激を受けました」
　10年秋のアジア大会を振り返って、関塚隆監督はこんな話をしている。Ｊ１、Ｊ２の控え選手と大学生中心のメンバー構成だったこともあり、アジア大会のチームは期待も注目も薄かった。南アＷ杯の16強入りで再燃した代表人気も、彼らのもとには届いていなかった。

　さらに加えて、なでしこジャパンが優勝を飾っていた。銀メダルでも銅メダルでも、なでしこジャパンの脇へ追いやられてしまう。冷やかな周囲を見返す唯一の手段が、史上初の金メダル獲得だったのだ。

「僕らはほとんど期待されていなかったので、何とか結果を残してやろうと思っていた」と永井謙佑が話したように、強い反骨心が勝利へのモチベーションとなっていたのである。

　今回もまた、なでしこが先陣を切った。初戦でカナダを下し、スウェーデンとの第２戦も好ゲームを演じた。

　中２日の過密日程にも、強豪国との対戦にも、なでしこは真っ正面から向き合っている。Ｕ−23日本代表が発奮しないはずはない。互いの存在を刺激剤としながら、両チームはグループステージ突破を果たしたのだ。

　モロッコ撃破で勢いを増しているＵ−23日本代表だが、イギリス入り後のテストマッチを含めれば、２週間弱で４試合を消化している。疲労は確実に蓄積している。

　日本のグループＤは、準々決勝でグループＣの国と対戦する。グループ２位に転落すると、ブラジルとの対戦が濃厚となる。ホンジュラス戦で引き分け以上の結果を残し、サッカー王国との激突は避けたいところだ。

　そのうえで、選手の疲労をできるかぎり軽減したい。ホンジュラス戦ではスタメンの入れ替えがあってもいいし、交代カードの有効活用は必須だ。決勝トーナメントでの戦いを見据えて、関塚監督のチームマネジメントが重要となっている。