――プロフェッショナルレフリーの派遣は単にレフリー育成だけではなく、現状のサッカー界にありがちな中央集権文化、関東や関西での試合は面白いけど、地方の試合は面白くない傾向を打破する効果もあると思いますが・・・・・・

大西「そう思います。何も地方における全部の試合をそうしなさいというわけではない。来季であれば年間J2ホームゲーム21試合のうち3試合から5試合講習を兼ねてプロフェッショナルレフリーが笛を吹いてくれれば、例えば四国であれば徳島、愛媛2チームで年6試合から10試合トップレベルのレフリングに間近で触れる機会があるわけです。
 ユースレフリーの子たちに対して試合を見せ、レフリーの成功体験や苦労話などを聴かせてあげれば、自然に彼らはレフリーという職業に興味を持つようになるし、何人かは憧れをもつようになるはずです」

――それ自体が立派なサッカー普及活動ですよね?

大西「普及活動ですよ。間違いなく。現状において日本のレフリー界はものすごく閉ざされたイメージがあるし、このままだとその悪いイメージがサッカー関係者の中で定着しかねない。中央にいかないといいものが見ることができない、いいサッカーができない問題も含めて、この地方レフリー派遣はサッカー界の底上げにつながる1つの方法だと思います」

――停滞感をなくすために、もっと風通しをよくして、もっと水が流れるような働きかけが必要というわけですね。

大西「ですから今、U-18年代においてはプリンスリーグが地域のトップリーグになっていますが、このリーグでは高校生に笛を吹かせればいい。同じように大学リーグも大学生が笛を吹けばいいんです。その年代に選手だけでない『レフリーを志す』という目標を持たせてあげること。そんなことも日本のサッカー界には必要ではないかと感じています」

――そんなサッカー社会を実現するためにも、まずはJリーグがイニシアチブを取ってやっていってほしいですね。

大西「そう、Jリーグがレフリー育成への働きかけをしなくては。だからこそ普段の試合でレフリーはサッカーの本質に外れたジャッジはしてはいけないんです。一番選手とコミュニケーションを取るのがレフリー。選手たちにビビる必要はないけど、カードで押さえ込もうとするのは論外。南米でそんなことをしたら、11人対11人のサッカーは成り立たない。『サッカーは局面で闘うスポーツ』というワールドスタンダードをベースに、試合のレベルに合わせたさじ加減が大事なこともレフリーの皆さんには訴えたいことですね」

――これが問題提起になって、色々な議論が生まれてくれれば。

大西「そうですよ。僕もレフリーの皆さんと議論しないとわからなかったことも多々ありますから」

――ということで、次回は大西さんと対談してくれるレフリーの方、募集しています!

聴き手:寺下 友徳

■大西 貴(おおにし・たかし)
1971年・愛媛県生まれ。南宇和高では主将として1989年度の第68回全国高校サッカー大会制覇。福岡大を経て1994年に広島へ入団し主にDFとして広島で3年間、京都で1年間プレーしJ1・21試合に出場。広島時代はマンチェスター・ユナイテッドへの短期留学も経験した。そして1998年には当時四国リーグ所属だった愛媛へ里帰り。愛媛FCでサッカースクールコーチを務めつつ2001〜2003年には選手兼監督・2004年には監督専任で4年間JFLでも采配を振るう。その後は2年間の愛媛ユース監督経験を経て、現在は愛媛県立松山北高コーチ。スカパー!Jリーグ愛媛ホームゲーム中継では切れ味鋭い解説に定評がある。日本サッカー協会公認A級ライセンス保持。

■著者プロフィール
寺下友徳
1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。学生・社会人時代共に暗中模索の人生を経験した末、2004年にフリーライターに。さらに2007年からは愛媛県松山市へと居を移し、「週刊サッカーダイジェスト」、「中学サッカー小僧」、「スポーツナビ」、「高校野球情報.com」、「ホームラン」、「野球小僧」など様々な媒体に四国のスポーツ情報を発信している。

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