もっと言えばJFAやJリーグもいいレフリーにはお金を出し、悪いレフリーにはお金を出さないメリハリがあってもいいとは思います。レフリーの皆さんの中にも体質改善、待遇改善を望んでいる方はいらっしゃるはずですから」

――そんな声が表に出てくれば、私たちのようなサッカーを見る側との議論にもなるんですが・・・・・・。

大西「それすらしないからクローズなんですよ。声を出してくれればコミュニケーションもできるし、お客さんもレフリーに対して興味を持つようになる。お客さんがレフリーに興味を持ってもらえば、レフリーの体質も改善される」

――その結果、日本にピエルルイジ・コッリーナ(イタリアの元・名物レフリー)が出たって構わないわけですよね?

大西「規定概念をどこかで外さないと。日本のサッカーが川渕三郎(JFAキャプテン・名誉会長)さんを中心に行動したことで変わったように、レフリー界も変わっていって欲しい。僕はそのきっかけになれればと思って、スカパー!中継ではレフリーに対するリスペクトはしつつも、いいものはいい、悪いものは悪いと言い続けているんです」

■サッカー普及につなげるため地方にこそいいレフリーを

――ここまで日本のレフリーを取り囲む現状について、かなり「ぶっちゃけ」て話もして頂きました。では大西さん、日本のレフリーは周囲からの評価をどのように受け止め、どう未来へ進んでいけばいいのでしょうか?

大西「今、高校や大学サッカーでは学生がレフリーを務める試みがなされています。そのようにいいことはまず声として出していくこと。ここはもっとアピールしていいことだと思うんですよ。
 そしていいレフリーがいたら、欧州リーグに派遣するのもありだと思うんです。そこまでに色々な障害があるのも理解はできますが、その障害を1個ずつ取り除いて、チャレンジできる環境を作ってあげるのも必要でしょう。レフリーとして目標を持ってしっかり頑張れる人が出てくれば、日本のレフリー待遇ももっとよくなってくるはずです。『レフリーもサッカーの一部だ』と、レフリー自身が思える働きかけが大事。『試合を裁く』のではなく、『ジャッジでゲームを盛り上げる』意識がレフリーに欲しいですね」

――そして地方にいいレフリーを派遣することも、サッカーを盛り上げる一助になりますよね?

大西「地方はいいレフリーを見る機会が少ないし、レフリー側も地方でレフリングする機会が少ない。地方からいいレフリーが出ればサッカーの地図も変わってくるんですが、現状、いいレフリーは関東、関西に集中する傾向にあります。でも、全てのレフリーを関東・関西に集中させる必要はない。2人から3人は持ちまわりで地方に行って笛を吹けばいいんですよ。特にプロフェッショナルレフリーについては、地方で模範のレフリングを見せる責務があると思うんです」

――ただそうなると、レフリーが試合で笛を吹くだけというのももったいないですよね。

大西「試合の前日に現地入りしてもらって、ないしは滞在を一日延ばしてもらって、その地方のレフリーを集めて講習会を開いてもらうのはどうでしょうか?そうすれば、地方のレフリーが費用と時間をかけて中央の講習会に集まるよりよっぽど安上がりだし、金銭的な理由で地方の審判講習会に行けない中央のレフリーにとっても試合の笛を吹く交通費で兼ねればいい話です。
例えば試合の翌日に地区のレフリーを一同に集めた講習会があるとしたら、レフリーの方には前日の試合におけるレフリングの所見や解説をしてもらう。そうすれば、前日に実際の試合を見た地区のレフリーは、よりスムーズにレフリングのポイントがわかるし、いい影響も受けやすい。地方でいいレフリーに触れる環境作り、いい影響を受ける機会を与える作業もこれからの日本サッカー界にとって必要な仕事の1つだと思いますよ」