選択するとは捨てること。わかっていてもなかなか難しいその原則を確実に実行して伸びているベンチャー企業がある。その秘密は何だろうか。

 ファストファッションの店舗に行くと、筆者は密かな楽しみ方をしている。商品のタグに書いてある生産国を確認するのだ。ZARA、H&M、フォーエバー21、トップショップなどの海外勢の商品を見るとよくわかる。バングラデシュ、ベトナムなどの東南アジア。トルコなどの中東圏、ギリシャ、ポーランドなどの欧州。実に多彩だ。比べてみれば、ユニクロはまだまだ中国製がほとんどで、生産国シフトと分散化が遅れていることが明確だ。
 生産国シフトは中国の人件費高騰を考えれば火急の懸案事項だ。分散化の重要性も今回のタイの洪水の例でよくわかるだろう。

 11月4日付の日経MJに、そんな海外生産どこ吹く風とばかりに、日本国内生産にこだわっているベンチャーのアパレルメーカーが紹介されている。エスワンオー(東京・目黒)。ブランド名は「サティスファクション・ギャランティード(sg)」。主な購入客は日本人ではない。<フェイスブックの登録ファン数は64万人><ファンの97%がインドネシアやインドなどアジアの若者>だという。実店舗は<東京・渋谷と代官山の2店舗しかない>という堂々たるネット企業である。それもそのはず、社長はネット広告会社に属していたこともある。

 同社の戦略は、マイケルポーターの「戦略の3類型」で考えれば、明確な「差別化集中戦略」、限定的な市場で差別化を武器にする戦い方だ。まず、日本という市場は<少子化に加え、低価格なファストファッションの台頭など市場縮小が続く>ため、バッサリと「捨てた」のだ。東京の2店舗は、あくまで広告等の位置づけであるはずだ。狙いはアジア。

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