『朝まで生テレビ!』(1992)の番組資料としてまとめられ、『週刊エコノミスト』2000号(1992)に論文として掲載されたもの。ヤクザや暴力団についての概要を知るための資料。17分割で再録。著作権は著者が保持。

* 以下は『週刊エコノミスト』1992年掲載当時のままの原稿の再録です。

5)ヤクザの国権主義化:日清日露戦争

94年、朝鮮において反欧独立主義の東学党が反乱を起こすと、これを玄洋社は支援し、日本政府も出兵して、《日清戦争》(94〜95)が勃発することになる。これをきっかけとして、日本は政府主導で産業革命を強硬に推進した。ここにおいて、ヤクザは富国強兵に貢献する愛国的行動として、むしろ政府・経営側に接近して、労働者の管理や搾取を強化していった。また、内務省警保局長の古賀廉造も、国粋主義的な武士道によって一般大衆の戦意高揚を図ろうとした。これに呼応して、説教芝居的な大道芸にすぎなかった「波花節」は、桃中軒雲右衛門を得て、勧善懲悪と義理人情を訴える高座芸となり、人気を博した。また、新劇が洋風演劇を演じて新派劇を凌駕していく一方、後者から伊井蓉峰が「まげもの」に力を注ぐようになり、近松劇を経て、「本国劇」として「清水の次郎長」などの任侠劇を開拓していく。このような波花節と本国劇によって、江戸幕末のヤクザたちは理想化・伝説化していったのであり、また、当時の一般大衆にまで通俗的な「武士道精神」が浸透していったのである。


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