27日に行われたFC東京の株主総会で、出資企業である東京電力から出向してきていた非常勤取締役の退任が承認され、翌28日には今シーズンの東電のスポンサー撤退が発表された。3月末の時点で、東電からの「広告掲載を控えてほしい」という申し入れにより、クラブハウスやスタジアムの看板も撤去されていた。また、なでしこリーグの東京電力マリーゼは、事故の影響で無期限の活動自粛中で、再開のメドは立っていない。

これは東日本大震災による福島第一原発の事故を受けてのものだ。でも、ことスポーツに関して言えば、問題の根本は原発事故ではないよ。日本のスポーツは、企業スポーツ文化だ。親会社の経営如何によって、チームの命運が左右される。最近でいえばJALの女子バスケチームが廃部となり、新潟のNSGグループに譲渡された。

今回は原発事故により東京電力が絡むスポーツチームに影響が出たわけだけど、いつどのチームがマリーゼと同じ状況になってもおかしくない。というより、大震災の影響で産業界は大変な経済的ダメージを被るのだから、今後親会社、スポンサーの財布の紐が固くなるのは間違いない。パナソニックは28日に4万人削減のリストラ案を発表したね。しかも、原発の状況を見ていると、その影響は1年、2年で終わる話ではなさそうだ。

僕は常々、親会社ありきの企業スポーツから脱却して、独り立ちできるクラブスポーツ文化へ転向すべきだと言ってきた。とはいえ、巨大な企業に抱っこしてもらっている日本のスポーツ界がいきなり独り立ちするのは簡単ではない。逆につぶれてしまうチームも出てきてしまうかもしれない。

だからといって、ただこの状況に手をこまねいているわけにはいかない。独り立ちして生き残るための準備はしなければならないんだ。たとえばチームの社長は親会社からの出向ではなく、外部から経営者を招き、営業的な競争力を磨く。Jリーグ本部は分配金制度のような中央集権的なあり方を改め、政府を小さくする。

今回のような大きな出来事をターニングポイントとして、今一度真剣に議論すべきだと思う。というより、今考えないで、いつ考える。(了)