このように、アシスタントレフェリーと呼ばれる副審が主審を補佐できることはたくさんある。しかし、現状はラインを見るだけのラインズマンになってしまっていると言われても仕方がない。もちろん、副審が主審の判定に介入しすぎるのはよくない。基準がぶれてしまう恐れがある。
 
 ただ、それくらい主審と副審の関係は難しいのだから、関係性をもっと強めるトレーニングにしなければ意味がない。「主審の基準を把握したい」と今年から新たにPRとなった副審二人は意気込みを語っていたが、このトレーニングこそまさにその時だ。にもかかわらず、遠い位置にいる主審が笛を吹くシーンばかりで、副審がファールをとることは皆無に等しかった。
 
 練習は実戦を意識して初めて意味を持つ。実戦を意識するのならば、主審は見えていないのであれば笛を吹かないことも必要だし、主審の位置から見えづらいファールを副審がとることだって必要だ。
 もちろん、トレーニングを終えて上川氏も「もっと副審が判定に関わっても良かったと思う」と振り返ったように、主審と副審の関係性の強化にこれから取り組んでいくだろう。しかし、今回の合宿で、改善されたようには私の目には映らなかった。
 
 ファールかノーファールかという基準は審判次第で、我々がどうこういうのは難しい。しかし、ポジショニングがどうだったかは主審とファールが起こった場所を見れば、一目瞭然だ。
 もし、主審がファールとなる争点から見えづらい位置にいるのに笛を吹き、それが微妙な判定ならばミスジャッジと言えると私は思う。また、副審があきらかなファールなのにファールをとらなければ、審判団というチームとして機能していないと言える。

 今回、合宿で取り組んだポジショニングの成果がどのように出るのか。まずは、2月28日に行われるゼロックススーパーカップのレフェリングに注目したい。(了)

著者プロフィール
石井紘人(いしい はやと)
某大手ホテルに就職するもサッカーが忘れられず退社し、審判・コーチの資格を取得。現場の視点で書き、Jリーグの「楽しさ」を伝えていくことを信条とする。週刊サッカーダイジェスト、Football Weeklyなどに寄稿している。