“闇バイト強盗”から親と実家をどう守る?簡単には侵入させない「窓」「ドア」対策を総合防犯設備士が解説
関東で相次いでいる、住民を暴行したうえで金品を奪う強盗事件。一連の事件には“闇バイト”がかかわっている可能性があるとみられている。
9月18日のさいたま市の事件以降、被害者のほとんどは一軒家に住む高齢者だ。その多くが夜から明け方にかけて勝手口のガラス部分や窓ガラスを割られている。玄関の鍵を壊され押し入られたケースもあった。
連日報じられる強盗事件に、離れて暮らす家族が心配になる人も多いと思う。
特殊詐欺のリストを元にターゲットを決定?
平野さんによると、“闇バイト”の関連が疑われる強盗には、空き巣のような従来の侵入窃盗と異なる次のような特徴があるという。
・メンバーをネットで募集
・現場で初めて顔を合わせる
・指示役の指示に従って動く
・住人に暴行を加える
一連の強盗事件は、勝手口のガラス部分や窓ガラスを割って侵入されたケースが多いが、過去には業者を装って押し入った手口もあると話す。
「宅配便などの業者を装って玄関を開けさせ、力ずくで侵入するケースも多いです。そして、住人を縛り、どこにお金があるのか聞き出し、奪って逃げるのです。強引に家に押し入るこのような手口は“押し込み強盗”とも呼ばれます」
ターゲットの決め方も独特だという。
「従来の侵入窃盗犯は“入りやすく逃げやすい家”を下調べして犯行に及びますが、闇バイト強盗の場合は、お金を持っている高齢者のリストを保有していて、そのリストからターゲットを決めています。したがって、入りやすく逃げやすい家というセオリーは当てはまりません。なおこのリストはいわゆる“オレオレ詐欺”に使われているものと考えられます」
リストは、固定電話に電話をかけ、市場調査や営業を装い探りを入れて作成していくという。
「同窓会名簿のようなものを入手するなど、さまざまな方法で電話番号を調べます。そして、『投資しませんか?』『土地を買いませんか?』などと電話で持ちかけ、会話の内容から、ターゲットがどのくらいお金を持っているか探り出すのです」
固定電話の番号が流出している心配がある人は、電話番号を変えることも有効な対策になるという。
窓はダブルロックに防犯フィルムや面格子を
では、被害に遭わないために、どう対策をしたらよいのだろうか。
まず気になるのは、最近の強盗事件でも破壊されている窓の対策だろう。
「窓からの侵入を防ぐためには、防犯フィルムを貼る、補助錠を付ける、面格子を取り付けるという対策があります」と平野さん。
順番に見ていこう。
・防犯フィルム
防犯フィルムを貼ることで、窓ガラスを割ってクレセント(締め金具)を回そうとしても、手が入るほどの穴を開けにくくする効果がある。
ただし、注意点が2つある。一つは、防犯フィルムは貼ってすぐに効果を発揮するわけではないということ。フィルムがガラスにしっかり接着するまで「養生期間」があり、季節によって1〜3カ月程度を要する。
もう一つは、防犯フィルムは部分的に貼るよりも、全面に貼るほうが効果が高いこと。これは、クレセントのまわりだけに貼ったとしても、窓全体を割られてしまったら意味がないためだ。
・補助錠
窓枠に付けられる補助錠を追加で設置することも有効だ。ガラスを割られてクレセントを開けられても、補助錠があることで侵入までの時間を稼ぐことができる。
・面格子を取り付ける
高窓(高い位置に設けられた窓)には面格子を取り付けると、簡単に侵入されない。ただし、ものによっては簡単に壊されてしまう場合もあるので注意。できれば、官民合同会議の防犯性能試験に合格し防犯性能があると評価された製品である「CP部品」を選ぶとよい。
宅配業者でも安易に玄関を開けない
「業者を装った強盗には、ドアチェーンやドアガードが有効です。業者が来た時にはこれらを外さずに対応する習慣をつけましょう。サインを要求されてもドアチェーンを外さずにサインして、宅配の場合は荷物を玄関横に置いてもらってください」
万が一、業者を装った強盗だった場合は、通報する時間稼ぎになるという。
「強盗は何か道具を使ってドアチェーンやドアガードを開けようとしてくるかもしれませんが、その間に110番通報してください」
なお、玄関ドアにも「CP部品」があるので、旧式のドアの場合は交換を検討してみてもいいかもしれない。
強盗の手口が過激化している昨今。離れて暮らす親の家の防犯対策の強化を検討してもいいかもしれない。
各地域の防犯設備協会では、ボランティアで防犯相談や防犯診断を行っているので、気になる人は相談してみるのもいいだろう。
平野 富義(ひらの・とみよし)
NPO法人大阪府防犯設備士協会理事長、公益社団法人日本防犯設備協会理事。1973年エフビーオートメ株式会社を設立と同時に代表取締役に就任、防犯・セキュリティ機器や自動制御機器を約50年にわたり製造・販売。現在は、総合防犯設備士の資格を持つ“防犯の達人”として各地で講演を行っている。