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シャネルやルイ・ヴィトンなど高級ブランドのメゾンが多いフランス。フランス人はブランドものを多く持っているのでしょうか? フランス文化研究者のペレ信子さんが教えてくれました。

※ 記事の初出は2023年11月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

フランス人と憧れの高級ブランドのつき合い方

そろそろ贈りものを考える季節になってきました。よいものを贈ろうとすると高級ブランド品や名品を見て回ることもあるでしょう。高級ブランドのメゾンが多いフランスで、フランス人たちが高級品とどのようにつき合っているのかをご紹介します。

ジュエリーは「クラシカル」なものが多い

結婚指輪に大きなダイヤの婚約指輪を重ねづけ。このスタイルは、日本のバブル期に大学卒業した私世代の女性のお出かけには多いスタイル。同世代で少しドレスアップして会食するとき、みんなの指にキラキラのダイヤが輝いているのに気がつき、フランスではどうだったかしらと、この夏フランスに行ったときに観察をしてみました。

フランス人はシンプル好きで、さりげなさを大切にしているので、ジュエリーも控えめなのではと予想していました。シンプルなTシャツやセーターに意外にもキラッと光る指輪やジュエリーを身につけている人が多かったです。

ただ、よく見ると大きな宝石がついた指輪やピアスは、最近のデザインではなくてクラシカルなもの。話を聞くと、お母さんからのお下がりだったり、代々家族の間で継がれているものがほとんどです。家族に伝わるお守りのような存在のよう。

フランス人は「一点集中」。人とかぶらない、上質のものを選ぶ

シャネルやルイ・ヴィトンは日本と同様にフランスでも憧れのブランドです。パリには世界中から羨望の眼差しを集めるグランドメゾンが軒を並べています。そんな界隈に住む人々にとっては身近かもしれませんが、普通の人々にとってはやはり高嶺の花。普段着にそのようなブランドを着るのは一般的ではないと思います。

とくに若い女性がシャネルスーツを着ているというのは余程の家柄でないとあり得ないと思います。また、若いのにシャネルスーツを着たいと思うとしたら、それは「母も祖母もシャネルスーツ」みたいな家でないと育たない感覚かもしれません。

だからフランス人はそのような高級ブランドは着ない、とは言いません。ロゴマークがしっかり主張しているものを選択する人が稀なのか、普段は気がつきませんが、ホームパーティでさりげなくハンガーにかけられたシンプルなコートがじつは高級ブランドのものだったということはよくあります。一点集中。人とかぶらない、上質のものに身を包む幸せを提供するのが高級品なのでしょう。

日本は高級ブランド品を堂々と持って歩けるすてきな国

この夏、パリには多くの観光客が戻って来ていました。有名観光地を通る地下鉄の線では、東京のラッシュ時の通勤電車を思わせる混み具合だったのには驚きました。そんなときに思うのは「カバンに気をつけなければ」です。

外食に出て夜遅くなったときも、暗い道を歩くときも「大丈夫かしら?」と周りを気にしつつ、早足で通り過ぎます。そんなときに見えるように高級品を持っているとトラブルに巻き込まれることがあるので、指輪やネックレスを外すこともあります。

今回の旅行から、私は「トラベルジュエリー」を導入しました。キラッと光ってきれいだけれど、じつはオモチャのような値段で、盗難に遭ったり紛失したりしてもダメージが少ないアクセサリーです。トラベルジュエリーは、それはそれでかわいいのですが、ブランドものを堂々と地下鉄で持っていられる日本ってすごいと再認識しました。

フランスでも日本でも、高級品は気分を上げてくれる宝物

この夏、姑(フランス人)が家に代々受け継がれている指輪を野外コンサートで落としました。どんなに探しても戻ってきませんでした。自分の母も祖母もしていたその指輪が今でも忘れられないそうです。

フランスでも日本でも、高級品は気分を上げてくれる宝物なのですね。