「しまった、闇バイトだ…」《引っ越し手伝い》《事務作業》に応募したら「半グレ」が待っていた…普通の若者が「闇バイト強盗」で人を殺すまで

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首都圏で相次ぐ強盗事件。テレビの中のことと思いきや、危険は身近に迫っている。事情通曰く「カネに詰まっているグループが手当たり次第に叩いている」。凶悪化する犯罪組織の手口を追った。

ここからは通話で指示します

指示された集合場所に到着すると、すでに同じ“仕事”に応募したと思われる見知らぬ男たちが3人佇んでいた。時間になると一台のバンが到着。同時にスマホの匿名メッセージアプリ「テレグラム」に通知が来た。雇い主のリーダーからだ。

「皆さんで到着した車に乗ってください」

男たちとバンに乗り込む。なにかを話すわけではなく、次の指示を待つだけ。異様な雰囲気に違和感を覚えるが、逃げ出すこともできない。車に揺られること20分。閑静な住宅街の一軒家の前で停車した。

「ここからは通話で指示します」とリーダー。両手が空くように無線イヤホンを耳に装着する。すると、隣の男性からバールを手渡された。

(しまった、闇バイトだ……)そう思ったが、すでに手遅れ。リーダーから指示されるまま、窓ガラスを割って家屋に侵入。別の男が、奥の部屋で寝ている老人を殴りつける嫌な音が聞こえる。その間に、金目のものを粛々と持ち出す―。

これは、実際に闇バイトに参加した経験のある若者の証言を元に構成した、典型的な犯行の風景だ。いま、関東近郊でこうした恐ろしい強盗犯罪が横行している。

普通の仕事を装って…

実行犯に仕立て上げられる若者の多くは、闇バイトとは聞かされない。SNS上で、ごく普通のアルバイトだと思って応募したら、犯罪の片棒を担がされるのである。

「SNSでアルバイトを探すなんて」と考えてしまうが、若者にとってSNSは日常生活の一部。実際、マイナビの調査によれば、高校生の46.6%、大学生の32.1%がSNSでアルバイトを探したことがあると回答している。

そうした状況を悪用しているのが半グレなどの犯罪者集団だ。犯罪ジャーナリストの石原行雄氏が解説する。

「以前はUD(受け出しの意)などの隠語を用いて、金に困っている若者をSNS上で集めていました。様相が変わったのが、'23年の『ルフィ事件』の頃です。この頃から『#ホワイト案件』という言葉を用いてさらに敷居を下げ、いわば素人も半ば騙される形で応募するようになったのです」

さらにSNSだけでなく、一般的なバイト求人サイトや、短時間の仕事を募集するスキマバイトのサービスでも、普通の仕事を装って闇バイトが募集されるようになった。

「脅し」を入れる巧妙な手口

たとえば、「事務作業」と記載しておきながら犯罪用の携帯電話や銀行口座の契約をさせられたり、「引っ越しの手伝い」「荷物の運搬」などと記載されていても、実際に現場に行くと強盗犯罪を強制されたり―という例が後を絶たない。

スキマバイト大手のタイミーは、本誌の取材に対し「審査をしっかりとやっている。また、求人情報が犯罪に関わるものだったケースはこれまでに1件も確認していない」と回答している。

今回、本誌取材班は半グレ集団の構成員にも取材し、闇バイトに応募してきた若者に対して、逃げさせないように「脅し」を入れる手口を聞いた。

「まず応募してきた段階で、免許証やパスポート、保険証、学生証などの写真を送らせるのはもちろん、家族構成や親の勤務先までも聞く。

その時点では、まさか自分が闇バイトに巻き込まれるとは思っていないし、いまの子は素直なのが多いから、だいたいの奴は正直に教えてくれる。そうするといざ闇バイトだと気づかれたとしても、『全部、バラすぞ』『家族がどうなっても知らないぞ』『警察に行ったらタダじゃ済まないぞ』とちょっと凄めば、大抵の奴は観念するね。最後は『現場を飛ばない(逃げない)で一度やってくれるだけでいいよ』と優しくすれば言うことを聞く」

後編記事『なぜ「普通の若者」が「強盗・殺人」を犯してしまうのか…《闇バイト強盗団》の「人心掌握術」と「カモにされる意外な年齢」』へ続く。

「週刊現代」2024年11月9日号より

なぜ「普通の若者」が「強盗・殺人」を犯してしまうのか…《闇バイト強盗団》の「人心掌握術」と「カモにされる意外な年齢」