11月ロイター企業調査:25年春闘で実現可能な賃上げ率、全体の1割が「5%以上」 前年調査から倍増

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Miho Uranaka

[東京 7日 ロイター] - 11月のロイター企業調査で、2025年の春闘について実現可能な賃上げ(ベースアップと定昇)水準を聞いたところ、9%が「5%以上」と回答した。24年春闘に向けて調査した前年12月の結果からほぼ倍増し、「3%以上5%未満」と回答した企業も10ポイント上昇した。業績に関係なく物価上昇率を上回る賃上げを継続するとした回答も半数を上回り、人手不足が顕在化する中で賃上げへの意識が一段と高まっている様子が伺えた。

石破茂首相が掲げた「2020年代に最低賃金1500円」については、「非現実的」との回答が6割を超えた。

調査は10月23日─11月1日に実施し、調査票発送企業は505社、回答社数は240社だった。

どの程度の賃上げが可能か質問したところ、「3%以上5%未満」との回答が42%と最も多かった。「5%以上7%未満」の9%と合わせると、「3%以上」と回答した企業は51%。前年12月の調査(調査期間11月21日─12月1日。調査票発送企業501社、回答社数240社)では「3%以上5%未満」が32%、「5%以上」が5%で、「3%以上」とした回答は合わせて37%だった。今回は14ポイント上昇したことになる。

一方、今回の調査で「1%以上3%未満」は41%、「1%未満」は8%だった。「3%未満」は合わせて49%となり、前年12月調査の64%から低下した。

賃上げ幅は69%の企業が24年と同じ水準かそれ以上と答えた。

連合によると、24年春闘の平均賃上げ率は33年ぶりの高水準となる5.1%で着地した。連合は25年も5%以上の賃上げ継続を目指している。

業績の良し悪しに関わらず、今後も物価上昇率を上回る賃上げを継続するかとの問いには、52%の企業が続けると答えた。「人材確保・維持の観点から、競合他社などへの転職を防止するためにある程度の賃上げをしないといけない」(紙・パルプ)、「理系中心に人材の採用が年々厳しくなっており、人材確保の面から賃上げは必須の状況」(化学)など、人材確保のために賃上げが必要との意見が目立った。

「継続しない」と答えた企業は48%で、「業績が悪いまま賃上げすれば、最終的に赤字幅が広がり、従業員解雇につながることから、結果として従業員のためにならない」(電機)、「賃金上昇による原価率の上昇に耐えられない」(化学)、「財源なき賃上げは不可能」(機械)などの声が聞かれた。

持続的な賃上げに対する逆風(複数回答可)として、「将来の不透明感」を挙げる企業が48%で最も多かった。「価格転嫁が困難」が46%、「業績低迷」が42%で続いた。「物価高」を指摘する声もあった。

<最低賃金目標達成、「非現実的」は64%>

石破茂首相が就任時に掲げた最低賃金の目標「2020年代に全国平均1500円」の達成について尋ねたところ、「非現実的」とする回答が64%に上った。

企業からは「特に中小の経営者にとっては死活問題になることが懸念される」(ガラス・土石)、「急激な賃上げ要求は多くの廃業を生み出す危険性がある」(窯業)など、急激な引き上げは負担が重く、逆に雇用環境が悪化すると指摘する声があった。「無理して数字だけをおいかけるのは逆効果、耳あたりのよいスローガンだけでなく1500円実現の道のりを示し日本国民全体で納得し協力しないと達成できない」(輸送用機器)との意見も聞かれた。

「現実的」と回答した企業も36%あった。「アルバイトの雇用はほぼ無い業界であるが、日本全体で見ると賃金は他の先進国並みとなるのが好ましい」(化学)、「生産人口が減少傾向にある中で今後は適切な賃金を支払えるところにしか人は集まらない」(小売)、「賃金の引き上げに耐えられない企業の存続は厳しくなると思われる」(輸送用機器)といった声が出ていた。

目標達成に向けて取り組むべき課題(複数回答可)として、「労働時間の効率化」との回答が69%で最多だった。「コスト構造の見直し」、「商品・製品・サービスの価格改定」と答える企業も多かった。

(浦中美穂 グラフィック作成:照井裕子 編集:久保信博)