11月ロイター企業調査:「出社」望むが8割、社員の働き方 人材採用にはマイナス
Miho Uranaka
[東京 7日 ロイター] - 11月のロイター企業調査で社員の働き方について聞いたところ、出社が望ましいとの回答が8割を超えた。米アマゾン・ドット・コムが週5日出社を義務付けて話題になったが、日本企業も大半がオフィスで顔を合わせてコミュニケーションを取るほうが効率的と考えていることが分かった。一方、人材採用の観点からは9割近い企業が在宅勤務など多様な選択肢を提供したほうがプラスに働くと認識していた。
調査は10月23日─11月1日に実施し、調査票発送企業は505社、回答社数は240社だった。
新型コロナウイルスの流行で多くの企業がリモートワークを取り入れたが、今回の調査では83%の企業が「従来型の出社が望ましい」と回答した。「できるだけリモートを増やすほうが望ましい」と回答した企業17%を大きく上回った。
出社が望ましいとする企業からは、「新製品開発業務のスピードを上げるためには、従来の出社体制での密なコミュニケーションが必要」(紙・パルプ)、「耳と目から入るコミュニケーションは対面のほうが有効」(食品)、「若手教育の機会が失われる」(そのほか製造)など円滑な意思疎通の必要性を指摘する声が聞かれた。
55%の企業がリモートワークでも業務効率は変わらないと回答したが、「リモート勤務の多い従業員の業務のアウトプットは明らかに低い」(輸送用機器)、「実際にリモート業務とパフォーマンスが違う」(電機)などのコメントがあった。リモート導入で効率が「下がった」と答えたのは30%、「上がった」と答えたのは16%だった。
また、製造現場で働く職員はリモートで働くことができないなど「社内での公平感に欠ける」(化学)との意見もあった。
一方で、「できるだけリモートを増やすほうが望ましい」と回答した企業からは、「リモートで処理できる業務が多々あり、事務所家賃の軽減につながる」(小売)、「都心オフィスの床面積減」(運輸)、「従業員エンゲージメント向上に寄与するなど、プラス側面の方が大きい」(化学工業)などの声が出ていた。
出社、リモートいずれかの回答を選択したものの、2つを組み合わせた柔軟な働き方の必要性を指摘するコメントも目立ち、「従来型の出社をベースとするものの、多様な働き方の1つとして定着したリモートを否定するものではない」(卸売)、「ライフワークバランスを考慮し在宅勤務を柔軟に取り入れたハイブリッドな形態が一番良いと考える」(化学)との意見が聞かれた。
働き方の柔軟性が採用に与える影響についても尋ねたところ、「影響がある」とした企業は88%に上った。「学生は柔軟な働き方を求めている」(建設)、「中途採用の会社への希望に、在宅勤務というリクエストが増えている」(卸売)、「子育て世代などは柔軟に働ける環境を求めている」(食品)などの声があった。企業は昔ながらの働き方が効率的とみているものの、人材不足が深刻化し、価値観が多様化する中でさまざまな働き方を用意する必要性に迫られている。
米国ではIT大手のアマゾンが25年1月から週5日出社を義務付け、社内で論争になっている。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は「発明、協力、つながり」に必要と説明した。グーグルやメタ、マイクロソフトは完全出社ではなく、週2─3日のオフィス勤務を求めている。
(浦中美穂 グラフィック作成:照井裕子 編集:久保信博)