スポニチ

写真拡大

 将棋の第45回JT杯準決勝が2日、愛知県常滑市の中部国際空港で指され、先手・広瀬章人九段(37)が藤井聡太王将(22)=7冠=に137手で勝利した。広瀬は準優勝だった2019年度以来5年ぶりの決勝進出。24日、東京・ビッグサイトでの決勝では、その前回敗れた渡辺明九段(40)と対戦する。

 「飛車と金桂の2枚替えになった。良くなっているはずと感じたが、それでもプレッシャーをかけられて最後はギリギリ残せた。勝つのは大変だなと感じた」

 終局後、1勝の感慨として口にした「勝つのは大変」。その対象は「将棋」だったろうか。「藤井」としか受け取れなかった。対戦成績を4勝11敗(未放映のテレビ対局は除く)とした。

 振り駒の結果、先手は広瀬になり、戦型は相掛かりへ進んだ。飛先の歩を交換し合った27手目、広瀬が横歩を取ったのが開戦の合図。角交換の後、藤井が左金を3段目へ押し上げて飛車にぶつけた。4筋へ角も打って広瀬飛車を押し込め、1筋の歩も敵陣近くまで押し上げた。

 対して広瀬は金桂を犠牲に藤井飛車を確保。大駒3枚を手中にして攻勢を強めた。それでも勝利目前では、藤井の猛攻を耐えしのぐ必要があった。

 対局前、広瀬は司会者から意気込みを聞かれた後、勝てば5年ぶりの進出となる決勝の話題も振られた。ところが言った。

 「決勝はできれば指したいが、きょうが難敵なので。決勝進出より、本局をどう勝つかを考えてきた」。そして付け加えた。「藤井さんの地元の東海対局と言うことで、非常にやりにくいところもあるんですけど、私のことを応援してくれる人も多少はいると思います。そういった方々に恥ずかしくないような将棋が指せれば」

 広瀬は藤井への挑戦を目指し、ALSOK杯第74期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の挑戦者決定リーグにも参戦中。現在2勝2敗で残り2局。挑戦の可能性も残すだけに、7番勝負を見据えた前哨戦という観点でも価値ある1勝だったに違いない。「藤井さんと当たることが貴重な機会」。対局は1年7カ月ぶり(未放映のテレビ対局除く)だった。

 22年度竜王戦で藤井に挑み、2勝4敗で屈して以降は大舞台を踏めていない。棋戦優勝なら09年度新人王戦以来。「(決勝の相手・渡辺には)不思議な縁を感じる。引き続き頑張りたい」。広瀬はJT杯初制覇への意気込みを穏やかに語った。