退職金は激減、仕事の意義を見失う…50代会社員を襲う「不安の正体」
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。
10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
退職金15年で700万円減
多くの人の不安の一つである「退職金」は実際のところ、どうなっているのだろうか?
厚生労働省「就労条件総合調査」などから退職金の状況を確認してみよう。
〈2003年に2499万円あった退職給付金額は、2018年には1788万円と、近年急速に減少している。退職金額が減少している背景には、バブル崩壊以降の低金利によって退職積立金が減少していること、などが影響している。
近年、退職金制度を取り巻く状況は大きく変わっている。
日本企業では歴史的に給付額が約束されている退職金のみを支払う企業がほとんどであったが、バブル崩壊による低金利などを背景に前払い賃金の性格が強い確定拠出年金への移行が進んでいる〉(『ほんとうの定年後』より)
ここ15年で、700万円以上も減っている。
それでいて、「老後2000万円」問題と言われれば、不安は大きくなる一方かもしれない。
自己責任で年金確保という方向?
退職金が大きく減少するなか、確定拠出年金の普及は進んでいる。
〈確定給付企業年金と確定拠出型の給付ではその役割は大きく異なる。
前者では将来の退職時の給付が企業の責任となる一方、後者では企業はその時々に拠出金の拠出さえ行えばよく、その後の運用は従業員の責任となる。
また、社員が転職した場合も確定給付型の退職金であればその都度精算され勤続年数に応じた積算が解消してしまうが、確定拠出年金であれば退職後もその額を引き継げることから一つの会社での長期雇用のインセンティブが発生しない。
確定拠出年金制度は近年大きな改正が行われている。
個人型確定拠出年金(通称iDeCo)の加入者範囲の拡大や、税制上の優遇措置の拡大など、制度面の拡充が急速に進んでいる。
企業が退職金制度を設けていない場合や、自営業者などの場合でも、個人型の確定拠出年金によって将来の給付の受け取りが可能だ。
政府としても厳しい財政事情のなか、公的年金に頼るよりも、個々人に自身の責任のもとで将来の年金を確保してもらう方向に軸足を移しているのである〉(『ほんとうの定年後』より)
50代で仕事の意義を見失う
また、「定年後」の問題は、60代以降だけが当事者というわけでもない。
たとえば、『ほんとうの定年後』のなかでは、〈キャリアの中で人は仕事に対する意義を見失うタイミングがあり、多くの人は50代でその転機を経験する〉と書かれている。
「他者への貢献」「生活との調和」「仕事からの体験」「能力の発揮」「体を動かすこと」「高い収入や栄誉」といった、日本人が働く上で感じる価値観を分析してみると見えてくることがあるという。
〈歳を経るにつれ、仕事を通じて感じる価値は減じていく。30代になると多くの因子が急激に下がり、仕事に対して緩やかに価値を感じなくなっていくのである。
人数自体は減少していくが、会社で地位を上げ収入を高めることに希望を見出す人は、30代や40代の時点でもなお一定数存在している。ただし、それ以外の要素はだんだんと重要だと感じなくなってくる。「生活との調和」は引き続き重要な価値となっているが、これは家庭を持って子供ができ、仕事を通じて家族の生活を豊かにすることを求める人が増えるということだろう。
多くの人が仕事に対する希望に満ち溢れていた20代から、人は徐々に仕事に対して積極的に意義を見出さなくなっていく。そして、落ち込みの谷が最も深いのが50代前半である。この年齢になるとこれまで価値の源泉であった「高い収入や栄誉」の因子得点もマイナスとなり、自分がなぜいまの仕事をしているのか、その価値を見失ってしまう。
定年が迫り、役職定年を迎える頃、これからの職業人生において何を目標にしていけばいいのか迷う経験をする人は少なくない。そうした現実がデータからうかがえるのである〉(『ほんとうの定年後』より)
退職金は激減、仕事の意義を見失う……定年が現実味を帯びてきた50代にはそうした大きな問題と不安が直撃する。
データなどから実態を正しく把握しておくことで、少しは安心できるのかもしれない。
つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。