京都に敗れ、足取り重く引き揚げる鳥栖の選手たち(撮影・永田浩)

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 ◆明治安田J1第34節 京都2―0鳥栖(19日、サンガスタジアムbyKYOCERA)

 福岡や大分、長崎で何度も降格を見たが、こんなに淡泊な場面は初めてだ。敗戦後、鳥栖の選手たちはゴール裏に軽く一礼しただけ。涙を流し、後ろ姿を見つめるサポーターと対照的だった。

 この時点で降格確定ではなかったが致命的な敗戦。朴一圭は「選手たちに申し訳ない気持ちはあったけど、確かに淡々とした感じはした。そういう空気感がまん延しているのかも」と語った。

 「サガン」には長い年月をかけて砂粒が固まって砂岩となるように、小さな力を集結して立ち向かう意味を込めている。ホームタウンの人口はJクラブ最少の7万4千人。経営危機を何度も経験しながらサポーターや行政と「砂岩」となって乗り越え、チームもハードワークと統率された守備で表現した。

 その根幹が、J1残留のために限られた資金を使って期限付き移籍選手でやりくりし、有望な若手を育てて移籍金を得る経営を続けるうちに薄れたのではないか。

 中小クラブが生き残るための手法を否定はしない。ただフロントはどこまで選手に「砂岩魂」を植え付ける努力をしたか。朴は2020年秋の加入時点で「本当にクラブのためにささげる気持ちを出せる選手が、もっとピッチに出てこないと難しい」と感じたという。そのつけが今夏の主力の大量移籍だろう。

 降格決定後、強化担当を含めたフロントは現場で対応せず、約3時間後に小柳社長が公式サイトで声明を出しただけ。異例の「塩対応」に砂岩のかけらも感じなかった。(末継智章)