(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

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40代、50代は、更年期真っ只中。気力が落ちたり、体重がコントロールできなかったりするせいで「おしゃれが楽しくない…」と悩む方もいるのではないでしょうか。そんななか、「45歳から55歳は、おしゃれも少しスローダウンする勇気を持って」と話すのは、ファッションエディターやスタイリストとして活躍する大草直子さんです。そこで今回は、大草さんの著書『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』から、大人のおしゃれのTIPSを一部ご紹介します。

【イラスト】素材感のあるジャケットはさまざまなシチュエーションで活躍

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シングルダブル? 使えるのはダブルのジャケット

ジャケット、少し堅苦しいなあとか、自分のライフスタイルには合わない、とか。

そう思っていたら、本当にもったいない! ジャケットは、本当にさまざまなスタイリングに似合い、かつ、マチュアな女性の体をきれいに見せてくれるアイテムです。

本来は男性のアイテムで、襟、袖、ポケットなど、直線的なラインで構成されているからこそ、起伏に富んだ女性の輪郭をピリッと見せてくれるのです。

「堅苦しくなく」「多くのシーンに似合う」のは、シングルよりもダブル、しかもヒップが隠れるほどの長さ。

肩パッドが入ったダブルのジャケットというと、バブル世代のオジサマを思い浮かべる同世代の方もいると思いますが、絶対にこっちのほうが汎用性が高い!

ジャケットの着方

まずは着方。

(1)きちんと着る
(2)袖を通さず肩に羽織る
(3)ボタンをまん中だけ留めて、ベルトでウエストマークをする


『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』(著:大草直子/マガジンハウス)

実は、シングルタイプだと(2)には分量が足りないことが多い。

よほど柔らかな素材で長めの1着なら別ですが、(3)もバランスが取りづらい。

良い例があります。「男はつらいよ」で、渥美清さん演じる寅さんが肩にはらっとひっかけているジャケット。ダブルです! シングルは肩から落ちてきてしまう。

着方にバリエーションがあればシーン、季節、中に着るものによってアレンジできるので週に何度も登場してくれて、かつ、スタイリングに自分が飽きない。

Tシャツにデニムなんていう着こなしにも、花柄のシルクのワンピースにも、トレーナーにレギンスにも。本当に何にでも合うので、オススメです。

夏は乾いたベージュのリネン、秋冬は、ネイビーでも良いし黒でも。

もちろん、イギリス紳士を連想させる、グレーのウールも素敵です。

ジャケットにお金をかける

47歳になって、ずっと憧れだったシャネルジャケットを手に入れました。

物質を所有しているかしていないかは、どちらでも良いのですが、なぜ、私がシャネルのジャケットを欲しかったかというと。

そして、どうして50歳直前まで待っていたかというと……。

それまでは、私の体のラインが、そして目指す方向性が、とにかく中途半端だったから。

そうしているうちに、あるタイミングで皮膚はゆるみ、肉質は柔らかくなり、重心は落ちる。

そろそろ、どのディレクションに行くかを、流れに任せて、ではなく自分で決めなくてはいけないときが来るのです。

シャネルだけではなく、上質なジャケットは、そんな瞬間に、私たちに問いかけてきます。

「そろそろ似合うけど、どうする?」と。

ジェンダーを解放した先駆者

ジャケットは、元々男性のアイテム。直線を際立たせ、立体的なフォルムを作ってくれるアイテム。

男性的で、マスキュリンなパーツをくっきりと見せてくれるのだとしたら、ボディラインが甘くなった年代には、間違いなく似合います。

そしてTシャツやデニムに比べて、素材だけでなく、パターン、縫製、そしてシルエット、ディテール。お金をかけるパーツが多いからこそ、ジャケットには投資してしかるべきと強く思います。

件(くだん)のシャネル。デザイナーのココ・シャネルは、元々紳士専売のジャケットを、女性がゆったりと、そして意思的に着こなすことで、ジェンダーを解放した先駆者です。

だからこそ、絶対に手に入れて体感したかったし、袖を通した瞬間、彼女のように、迷いなく人生を進め、きっぱりとマスキュリンに生きよう。そう、まさに人生のディレクションが決まったのでした。

ジャケットには、ブランドの矜持(きょうじ)が映る。

日本のブランドだったら、カオスやマディソンブルー、海外なら、セリーヌなど。

一生着られる、とは言わないけれど、一生に1回、覚悟を決めて良い。

※本稿は、『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。