「主人の後を引き継ぐのは萩生田さん」安倍昭恵氏が東京24区に参戦! 有田芳生氏を”刺客”に立てた立民も「裏金!」連呼で応戦

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衆院選で東京都八王子市の東京24区が注目を浴びている。強固な地盤を誇ってきた萩生田光一自民党元政調会長(61)が旧統一教会と裏金問題で批判を浴びる中、立憲民主党が旧統一教会問題を追及してきた有田芳生元参院議員(72)を「刺客」に送り、最重点選挙区と位置づける。裏金を理由に自民執行部は萩生田氏を公認しなかったが、地元では自民、公明両党が組織をフル回転して後押しをしており、激戦模様だ。

〈画像〉萩生田氏の応援に駆けつけた安倍昭恵氏

「裏、裏、裏。自民党政治に決別を」

「裏金だけではなくカルト教団にもべったりの政治。今度の総選挙を通じて、この八王子から終わらせようではありませんか」

公示日の10月15日の朝、JR八王子駅北口での最初の演説で萩生田氏を批判した有田氏。その隣には立民の野田佳彦代表が並んだ。

「なぜ(自分が)第一声をここでやるのか。裏金は大きな争点だと国民の皆さんにご理解いただくためです。

(萩生田氏は)裏金の額の多い議員であると同時に、その裏金議員を裏から支えてきた旧統一教会との結びつきも強い人であるからです。裏、裏、裏。自民党政治に決別しようじゃありませんか」(野田代表の演説)

自民党旧安倍派で政治資金収支報告書に未記載があった議員のなかで、萩生田氏の未記載額は2728万円と規模で3番目に高額だった。

有田氏は「これは5年間の金額。裏金作りは20年前から行なわれている。総額はいくらになるのか」と、発覚した額は氷山の一角だと追及している。

「裏金事件では収支報告書に記載しなかった資金を何に使ったのか、依然説明がなされていません。

このカネが買収資金に使われた疑いがあるとにらむ立民は、石破新内閣が発足した先の国会で予算委員会の質疑で追及する準備を進めていましたが、石破首相が衆院を解散し、その道をふさぎました。

そこで野田氏は“裏金隠し解散だ”と主張し、選挙でもこの問題を軸に据える方針です。派閥の領袖だった故・安倍晋三氏に最も近く、裏金の額も大きい萩生田氏はわかりやすいターゲットです」(政治部記者)

いまだ根強い八王子での萩生田人気

一方で有田氏は、八王子の多くの市民団体と政策協定を結び、共産党や社民党も候補者を立てず有田氏支援に回っている。

有田氏は15日夕にはこれらの団体や他党と行なった演説会で、若者の自殺の多さや介護制度の不備を挙げて政治の責任を指摘し、「真っ当に働く人が報われる社会に変えなければならない」と訴えている。

「有田氏は裏金で攻めたい立民の戦略の象徴であるとともに、広く市民団体が求める生活に密着した公約も前面に出す必要があります。このため野田氏が加わった党の演説と、他団体と一緒の公約を訴える演説を分けたようです」と立民関係者は話す。

有田氏を迎え撃つ萩生田氏は、裏金問題で4月に党から1年間の役職停止処分を受けていた。

処分はこれで済んだかと思われていたが、衆院解散直前の10月6日になって総裁に当選したばかりの石破氏が、萩生田氏を公認しないと発表し、自民党の看板は使えなくなった。

第一声で「何もないところからの再出発」だと萩生田氏は苦境を訴えたが、実態は少し違う。

15日午前、同じJR八王子駅北口で有田氏からやや遅れて行なわれた萩生田氏の街頭演説には、平日の日中にもかかわらず開始の30分以上前から100人規模の聴衆が集まった。

70代の女性は「萩生田さんはそれこそ地元のために一生懸命やってくれました。他から来た人がポンと来て何ができるんですか。だいたい、萩生田さんが悪いとかいうのは、報道が偏りすぎているんですよ。

あんなに自民党のためにやってきた人を処分するなんて。それでも私たちは“自民党の萩生田さん”ではなく“八王子の萩生田さん”を応援しますよ」と興奮気味だ。

そこへ到着した萩生田氏が乗る街宣車の看板には、所属党の表示は当然ないが、「比例代表も自民党へ」と書かれている。

街宣車の前や上には10人以上の自民党の八王子市議や東京都議、国会議員、地元商工会議所トップが並んだ。

応援演説に立った有村治子参院議員は「私は党両院議員総会長として全国の選挙応援にうかがう予定です。

すべて依頼を受けて選挙応援しますが、一か所だけ、依頼ではなく志願して応援に入らせていただく第一声がこの八王子です。萩生田光一とともに日本を守りたい。その一心です」と訴えた。

安倍昭恵氏も”参戦”

マイクを持った萩生田氏は「派閥のルールを踏襲したとはいえ、どこかで考えなければならなかったと反省しております。お詫びを申し上げたい。しかし意図して裏金を作るとか私的流用を図るとか、ましてや脱税だとか、このような事実は一切ございません」と弁明した。

そのうえで、八王子のインフラを充実させてきた実績をアピールし「批判をするためだけにこの八王子を選んだ野党候補がいいのか、皆さんの声を国政に届けることを仕事としている私、萩生田光一がいいのか、市民の皆さんに判断していただきたい」と強調。

2か所目の演説では「私を国会に戻すかどうかを決めるのは自民党や石破さんではない。この地域の皆さんです」と口にし、石破首相に抱く複雑な感情を隠そうとしなかった。

地元の古参自民党員が言う。

「萩生田くんは党の東京都第24選挙区支部の代表の立場はそのままで、党本部から支部に来る資金の采配ができる立場です。選挙に臨む条件が大きく不利になることはないでしょう。

萩生田くんの系列の市議らも後援会組織を萩生田応援でフル回転させています。これに、推薦は出していませんが公明党さんも変わらず支援をするはずです」

萩生田氏の陣営が16日に開いたメディア取材NGの後援会の会合には安倍昭恵氏も出席した。

「昭恵さんは、河口湖の自分たちの別荘に萩生田さんが奥さんと一緒に来たときの思い出を話しておられました。会場のスクリーンには安倍さんの映像も映し出されて昭恵さんは涙ぐんでいましたね。

政治的な話はなく『主人の後を引き継ぐのは萩生田さんだからがんばってほしい』と呼び掛けていました」と、出席した樫粼博・八王子商工会議所会頭は会場の様子を話した。

公示前の13日には安倍氏に近かった保守派の大物、櫻井よしこ氏も応援に入り「有田芳生という共産主義者のような人が闘いを挑んできている。万万が一、百万分の一でも萩生田さんが負けることがあったら日本国は終わりだ」と有田氏を非難。

同時に、「安倍総理が『この男だけは絶対に総理にしてはならない』と言っていた人が少なくとも2人いました。石破さんと河野太郎さん。河野太郎さんは今回沈んでしまったと思いますけれども、石破さんが(首相に)なってしまった」と、石破首相もこき下ろした。

17日には総裁選で石破氏に敗れた高市早苗・前経済安全保障担当相も萩生田氏の応援に八王子入りする予定だ。

東京24区には、ほかに維新、国民民主、参政の各党の公認を受けた新人と無所属の新人も立候補している。

逆風を浴びる自民党にあって、地元組織の足腰が試される萩生田氏の当落の行方は、与野党間だけでなく、党内で角を突き合わせてきた石破首相と旧安倍派との今後の力関係にも大きな影響を与えそうだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班