日本のノーベル平和賞受賞で思い出す、村尾信尚が広島・長崎の取材で触れた数々の言葉
核兵器の恐怖に警鐘を鳴らす村尾信尚には、ノーベル平和賞受賞の一報は朗報だった。
10月15日の「くにまる食堂(文化放送)」では、関西学院大学教授の村尾信尚が、日本の団体にノーベル平和賞が授与されるというニュースについて、今の心境を語った。
野村邦丸アナ「ロシアと中国の海軍が、太平洋北西部で合同演習を実施したというニュースが報じられましたが、11日、ノーベル賞委員会が日本原水爆被害者団体協議会(以下・被団協)に、今年のノーベル平和賞を授与すると発表しました。日本のノーベル平和賞受賞というのは、1974年の佐藤栄作元総理以来50年ぶりということで、被団協のメンバーの皆さん……非常に高齢化が進んでいますけど、『えっ!?』って驚かれたみたいですね」
村尾信尚「私も『あっ、来たか!』と思いました。考えてみるとやはり今ロシアが、核の使用をほのめかしている時に、本当にタイミングのいい時期に被団協をノーベル平和賞に選んでくれたと思って、私は『やったな!』と思いました。けども、本当に核兵器というのは恐ろしいものだなと思っていて、実は私、キャスター時代にも8月6日の広島、8月9日の長崎は可能な限り現地からお伝えすることにしてましたし、広島ではもうお亡くなりになってますが、元被団協の坪井直(すなお)さんと対談させていただいたりしました。坪井さんは本当に被爆されて大変な目に遭われておられるのに、非常に前向きな方で一所懸命平和を唱えていたというのが非常に印象に残っていますね。で、広島で、あるいは長崎で色んな方にお話を聞きましたけども、未だに頭にこびりついて離れない言葉っていうのがいくつかあって。例えば長崎の被爆者の女性の方が『戦争とは人が人で無くなるものです』と。
戦争は始まってしまうと理性を失ってしまうということですね。あるいは広島の方に聞いたのは『戦争とは勝者も敗者も無いんだ。戦争をした者が敗者なんだ』と。また、広島の方にもう1人。『どうして広島に原爆が落ちたのか。日本が戦争をしたからじゃないか』というような言葉もあって」
邦丸「はい」
村尾「今、世界各国で残念ながら戦争が起きていますけど、何としても日本は戦争を避けないといけないということをつくづく思いますね。私は改めて作家の井伏鱒二さん、皆さんご存知だと思いますけど、『黒い雨』という作品の中でアメリカに原爆を落とされた当時の事を克明に書かれていますけども、この本の中にも非常に印象に残る言葉があって、当時、やはり戦火の中で井伏さんが取材されたと思うんですが、『戦争は嫌だ、勝敗はどちらでもいい。早く済みさえすればいい。いわゆる正義の戦争よりも、不正義の平和の方がいいという気持ちになってしまう』。あるいは別の人の『わしらは国家のない国に生まれたかったのう』という言葉がある。この選挙でも『国の為に』などと言う方がいらっしゃりますが、国家が前面に出てくると、結局犠牲になるのは市民だというようなことが私、感じ取っちゃうんですね。今回、被団協の皆さんがノーベル平和賞を受賞されたのを機に、こういう原爆に関わる書物、私なんかは井伏鱒二さんの『黒い雨』など、ぜひ皆さんに読んでいただきたいと思いますけどね」