メンバー表交換を終え、笑顔を見せる岡田監督(撮影・北村雅宏)

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 「JERA CSセ・ファーストS第2戦、阪神3−10DeNA」(13日、甲子園球場)

 ありがとう、岡田監督−。「2024 JERA クライマックスシリーズ(CS) セ」の第2戦が行われ、レギュラーシーズン2位の阪神は投打に精彩を欠いて3位のDeNAに大敗し、敗退が決まった。今季限りで退任する岡田彰布監督(66)の戦いもこれで終幕。昨季のリーグ優勝&日本一を含めて2年間にわたった第2次政権に心残りはない、と言い切った指揮官。2年連続日本一には届かなかったが、その功績が色あせることはない。

 力なく、乾いた打球音が聖地にむなしく響いた。二ゴロに倒れた森下が最後の打者となり、岡田阪神の2年間が終わった。15安打を浴び、3−10の大敗。CSでの10失点は岡田政権ワーストだった。岡田監督が「集大成」と位置付けた戦いには、無残な結末が刻まれた。

 「ひっどいなあ。え?最後の最後に」

 最後の会見はおなじみの“岡田節”で始まった。

 崖っぷちに立たされた一戦は初回、森下の先制ソロで派手に幕を開けた。森下は3安打2打点。2試合を通じて打率・625と孤軍奮闘した。打撃指導を直接施し、2軍にも送るなど厳しく接してきた若虎が最後にたくましい姿を見せた。

 「言うたやつだけやろ。野放しにしたら全然やもんな。大変やで、怒る人間がゼロやったら」

 独特の表現で森下の健闘をたたえた。

 虎党の誰もが勝利を疑わなかったが、二回に先発の高橋が4失点。七回にも中継ぎ陣が崩れた。村上が被弾した際には、終戦を悟ったようにベンチで苦笑いを浮かべた。

 ほとんどの指揮官が最後は敗れてチームを去る。昨年18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一に導き、球団の歴代最多552勝を挙げた岡田監督も例外ではなかった。あえて心残りを問われた指揮官は断言した。

 「全然何にもないよ。別にないやんか、なんでよ。日本一にまでなったのに。なんで心残りがあんねん。順番間違えただけやん。1年目に(日本一に)なってしまうから、おかしなってしもたんやんか」

 就任1年目に快挙を成し遂げたが、2年目は失速。2位という結果に「尻すぼみのチームになってしもうた。継続の能力がなかったということや」。猛虎愛が強いからこそ、苦言を交えながら最後のゲキを飛ばした。

 試合後、選手がいなくなったグラウンドに岡田監督の応援歌が響いた。精いっぱいの感謝の思いが降り注ぎ、ファンは指揮官が再びグラウンドに姿を現すのを待った。だが、岡田監督は静かにベンチ裏へと消えた。

 通例であればシーズン終了のあいさつに向かうが、粟井球団社長は岡田監督の体調が優れないため、大事をとったと説明した。さらにシーズン終了の翌日に行われるオーナー報告や退任会見を見送ることも明かされた。今後、岡田監督の体調回復を待って、あらためて会見などが行われるかは未定。希代の名将は虎党に肉声を届けることなく、タテジマを脱いだ。