1人遊びトランプゲームが世界を席巻する理由
熱中必至の悪魔的ゲーム『Balatro』の魅力を紹介する(画像:任天堂公式サイトより)
2024年10月24日、『Balatro』というゲームのNintendo Switchパッケージ版が発売される。本作はひとりでトランプ遊びの「ポーカー」をするゲームなのだが、プレイヤーを熱中させる仕組みがスゴいと話題になっている。
なお、すでにNintendo Switch、PlayStation、Xboxといった各種家庭用ゲーム機やPCで発売されているが、特におすすめなのがスマホ版である。手軽に遊べるゆえにかなり相性がよい。
ゲームレビュー集積サイト「Metacritic」では100点中90点の高評価を獲得しており、発売から半年も経たずに世界での累計販売本数が200万本を突破している。そんな『Balatro』の魅力とはなんなのだろうか。
基本ルールは1人で遊ぶポーカー
基本ルールは役を揃えてカードを出すだけと、かなりシンプル(画像:Steamより)
ゲームを開始すると、プレイヤーには一定枚数のトランプが配られる。そこからカードを最大5枚まで選んで出して、役を作ればポイントとなる。
同じ数字のカードが2枚ある「ワンペア」、すべて同じスート(柄)で揃えた「フラッシュ」など、基本ルールはポーカーそのままだ。なお、役は都度確認できるためまったく知らなくとも問題ない。
もし、これといった役がなければ、一定回数までカードを交換することができる。もちろん成立難易度の高い役であればあるほど、スコアが増えていくといった仕組みだ。
規定のスコアを超えることができればステージクリアとなる。ひとつのステージをクリアすると、必ずショップが現れる。ショップでは役のスコアを上げるカードなどが売っているのだが、一番重要なのが「ジョーカー」だ。
ジョーカーの種類はかなり豊富。バナナやフィボナッチ数列を題材にしたユニークなものも存在する(画像:Steamより)
ジョーカーはさまざまな効果を持っており、シンプルにスコア倍率を上げるものや、借金ができるようになるもの、条件を満たすと特殊なカードがもらえるものなど、さまざまだ。
それこそジョーカーはどのようにプレイするかの方向性を変える。たとえばフラッシュを揃えるとスコアが上がるジョーカーが手に入ったら、それを狙うようになるだろう。しかもプレイするたびに出現するジョーカーが異なるため、遊び方が毎回のように変わっていくわけだ。
手軽さとアツい演出がハマる理由
基本的にカードをタップ、もしくはスワイプする程度の内容なので、ルールさえ覚えればあとはかなり簡単だ。細かい説明もプレイ中に確認できる(画像:Steamより)
以上が『Balatro』の基本ルールだが、本作がハマる理由はこれだけでは説明しきれない。重要なのは2点あり、「プレイヤーはカードを選ぶだけ」という簡便さと、「スコアが増えていく演出がすごい」ところにある。
本作においてプレイヤーがやることは、基本的にカードを選ぶだけである。役を揃えるにしてもカードを交換するにしても、あるいはショップでジョーカーなどを買うにしても、目の前にある選択肢からどれかをチョイスするだけでよいのである。
もちろん、戦略がないわけではない。前述のように、入手したジョーカーに対してどのような役でプレイしていくかを考える必要がある。ただ、ある程度は考える必要がある一方で、プレイヤーはただカードをぽちぽちしているだけでもあるわけだ。とにかく手軽に遊べるのは間違いない。
とはいえ、手軽なだけではおもしろくない。そこで重要なのが演出である。
本作の演出はかなり気持ちよく作られている。音を出してプレイするのがベターだろう(画像:Steamより)
本作は、カードを出した際に「ポン、ポン、ポン」と効果音を鳴らしながらスコア計算が行われていく。ジョーカーなどの特殊効果が発動すればするほど効果音が鳴り、どんどんそのテンポが速くなって、画面が揺れつつ、スコアが何十倍・何百倍に増えていくのである。
おまけにスコアが大きく増えると、スコア表示部分が赤く燃える。まさしくアツい演出だ。それが終わったと同時に爆発的なスコアが流れ込んでくるのだが、この様子はかなりの快感を覚えるものに仕上がっている。
ましてや『Balatro』は運によるところが大きいゲームであり、よいジョーカーを引ければそれだけでスコアが爆発的に増える。なんとなく買った宝くじがものすごいお金になるような、あるいは棚からぼた餅が降ってくるような体験が、優れた演出とセットになっているわけだ。
くれぐれも時間を溶かしすぎないように
特定の条件でプレイするチャレンジモードも存在する。なお、タイトル画面の言語設定(右下のボタン)から日本語化することも可能だ(画像:Steamより)
このようなゲームの性質から、『Balatro』はスマホが最も向いている作品になっている。操作がシンプルなのでスマホでも問題ないし、おまけに振動機能をうまく活用してトランプに触れるかのような感覚も再現できているのだから。
とはいえ、手軽であるがゆえにハマりすぎには注意したい。あくまでジョークではあるが、本作の存在が「世界の生産性を下げる」などと言われており、実際しばらくは熱中しうるほどの魅力を持つのだから。
幸いなことに本作は買い切り型であり、運によってサイフの中身を揺さぶられることはない。「労せず幸運に出会ったとき、人間はこんなにも衝撃を受けるのか」と安全に理解できる作品だ。自分の時間と向き合って遊べるのであれば、極めて健全なゲームといえる。
(渡邉 卓也 : ゲームライター)