2011年9月、沖縄・石垣島でリゾートバイトをしていた当時22歳の山粼貴代加さんは、その日の夕方、アルバイト先の友達3人とシュノーケリングをしていた。

水面に顔を出すと、かなり沖へ流されていたことがわかった。岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする離岸流が発生し、浜辺は遥か遠くに。早く戻ろうと泳ぐが、貴代加さんは冷静さを失い溺れてしまう。その時、友人が発泡スチロールを渡してくれた。直前の台風が去っていて海にゴミが散乱、そこに大量の発泡スチロールがあったのだ。

しかし、どんなに泳いでも離岸流の影響で全く進まない。必死に助けを求めるもビーチにはすでに人がいなかった。

発泡スチロールのおかげで浮いてはいられるが、うねりですぐにバラバラになってしまう。そこで流されないように全員で腕を組んだ。

漂流してから2時間半、日没。陽が沈んだ海は寒くこの日の水温は約28度しかなかった。ビキニだった彼女たちの体温は急速に奪われていく。さらに発泡スチロールが腕に何度もこすれ、腕の皮が剥け始めた。そんな中何度か浜辺に光が見え必死に叫ぶも、声は波にかき消され全く届かない。

漂流すること10時間。午前2時ごろ、貴代加さんを疲れが限界に達してか、強烈な睡魔が襲った。限界を感じていたが、彼女たちは生きるために熱唱を始めた。そして、やっと朝を迎えた。

肉体、精神ともに限界に達しようとしていたその時、ビーチに人影が見えた。そこで手に取ったのはゴミとして流れていた蛍光灯。それを全力で振り、力の限り叫んだ。

すると浜を歩いていた夫婦が気づいてくれた。こうして、漂流が始まってから16時間後に救出された貴代加さんたちは激しく衰弱しており、脱水症状や低体温症を発症し入院することになったがこの奇跡の生還は新聞にも大きく取り上げられた。

現在の彼女を番組スタッフが訪ね「一番助かってよかったと思った瞬間は?」と聞くと、「今の人と結婚できたことかな」と答えてくれた。実は今年6月に結婚し、海をバックにウェディングフォトを撮影したという。