年を取ったら、薄化粧程度でもいいから身なりに気をつかうといいという(写真:Ushico/PIXTA)

職業柄、化粧をしなければいけないこともあるので洗顔などの手入れは入念にするようになった、と語る中尾ミエさんは、「目ひとつとっても、物を見るのにどうでもいいやと疎かにしていると、瞼が下がってくる」と感じるそうです。

そんな中尾さんと、精神科医の和田秀樹氏の対話から浮かび上がる、「いくつになっても身なりに気をつかい、オシャレをすること」の大切さとは。

※本稿は、中尾さんと和田氏の共著『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

朝起きたら必ずお化粧する

中尾 最近心がけていることというわけではないけれども、いちおう、朝起きたら、ちゃんと化粧をするように心がけています。化粧というほどしっかりしたものではないけれども、自分が見てもある程度、みっともなくないようにしていたいと、この頃、思うようになりました。

自分で客観的に見ても、年を取ってきたなと思うことがあるわけです。朝起きて、顔を洗ったときに鏡を見たりしたときにひしひしと感じますよね。自分でもそう思うのだから、他人もそれを見せられたら、あまりいい気分じゃないだろうと。だから、最低限の化粧をちゃんとして身だしなみを整えておくという意識が必要だなと考えるようになりました。

和田 女性に限らず、私たち男性だって、鏡を見るといやになることはたくさんありますよ。自己イメージがいちおうありますしね。私はテレビなんかには滅多に出ませんけれども、こうやってお話ししていても、「老けたおっさんだな」と思われないようにはしていたいなと思います。

中尾 そういう意識をなくしてはいけないなと、最近、とみに思うようになりました。職業柄、化粧はしなきゃいけないのもあるから、洗顔などの手入れは入念にするようにしています。

それは酔っ払って帰ろうが、疲れていようが、とりあえず、ひと通りのことはします。だから寝るまでにそれなりの時間がかかりますけども、朝起きたときに、ちゃんとやることをやったんだと思えるようにしたいから。

和田 立派ですね。

中尾 自分で、「偉い、偉い」と言っています。自分の変化を見るのがとても楽しい。顔も手入れ次第でそれなりに変わるわけですよね。意識することが大事だと本当に思います。

目ひとつとっても、物を見るのにどうでもいいやと疎かにしていると、瞼が下がってくる。だから、ちゃんと目を見開いて、物をしっかり見るように心がけていると、やっぱり変わってきます。

だから、私は整形だなんだということは考えません。自力で変わっていくのが楽しみですね。時々エステに行くくらいです。

和田 腕のいいメイクに当たると、女性はすごく変われますからね。

年を取ったからこそ派手な服を着る

和田 私は50歳くらいから一時期の間、ずっとボトックスを入れていました。弛んだシワを伸ばしたりするだけで、顔がちょっと変わると気分も上がるんですよね。ですから、外見も大事だなと思うようになりました。白髪も一部分だけが白くなっていて格好悪いから染めに行きます。それをやると、やっぱり気分が上がる(笑)。男性でもそうなんだから、女性もメイクをしたり、お手入れしたりして外見が変わると気分も上がりますよね。

中尾 本当に薄化粧程度でもいいから、身なりに気をつかうといいですよ。60歳になったからといって、変に老け込んでオシャレなんか必要ないなんて思わないで、自分の気持ちを上げるためにも必要なことだと思います。

着るものもね、年を取ったらどんどん派手にすればいい。たとえば、昔はお葬式にマニキュアをしていったら、いろいろと小言を言われたりもしました。時代や風潮の変化でお葬式のやり方も変わっていきます。

喪服にしてもなぜ、黒でないといけないのでしょう。マニキュアをしているからといっても、失礼でもなんでもないでしょう。

和田 日本って本当はそんなに宗教にうるさくないから、好きに変えられるはずなんですけれどもね。

中尾 それなのに、喪服の「マナー」は古い常識のままです。グレーはいいけれど紺はダメとか。

和田 中国も昔は人民服をみんな着ていたけれども、今はみんなそれぞれの服装でおしゃれですよね。北朝鮮の人がみんな同じ服を着ていると不気味に見えるのと同じで、日本も北朝鮮に次いで、同じ服ばかり着たがる国なんじゃないかと思うことがある。それを変えていかなきゃいけないですね。

『anan』や『non-no』のような女性ファッション雑誌の創刊が昭和40年代くらいですから、それらをリアルタイムに読んでいた人は今、もう70代くらいですよね。戦後の貧しい時代とは違って、若い頃からおしゃれ経験のある世代が高齢化してきているから、そういった世代はお年寄りになってもファッションに関心がある。

50代以上の女性をターゲットにした雑誌『ハルメク』が国内で1番の売り上げがあるそうだから、年を取ってもおしゃれに気をつかえる人が増えている。それはアンチエイジングにもとても効果があるように思いますよ。ココ・シャネルにしても、年を取ってから復活したわけだし、いつまでもおしゃれでいようという感覚はとても大事です。

60代になったからこそ、好き勝手にやる

中尾 50代をターゲットにするだなんて、昔だったらありえなかった。ましてや、私なんかもこの年齢で今もいろんな媒体で取り上げてくれる。少し前だったら、もうお役御免でしょう。

和田 私が中学生くらいの頃でしょうか、映画館に『砂の器』を観に行ったことがあります。そのとき、ボロボロの老人役をしていたのが、加藤嘉さんでしたが、当時はまだ61か62歳くらいでしょう。今の私よりも若い。昔は本当に"年寄り"が年寄り然としていた。

言い換えれば、年寄り臭くさせられていたとも言える。年寄りが若作りすると、「年寄りの冷や水」なんて非難されたわけですから。そう考えると、今はいい時代だと思います。

中尾 いい時代ですよね。だから、今がいいチャンスなんだから理不尽なことはどんどんと変えていけばいい。60代になったからこそ遠慮せずに、好き勝手にやるくらいがちょうどいいと思います。

食事にしたって、中国や台湾みたいに屋台で食事をするのもにぎやかになっていいですよね。

和田 ええ、中国や台湾は外食率がとても高いんです。現実問題、外食が当たり前の国のほうが女性も働きやすい。意外と知られていないことですけれども。

中尾 こうやって働く人たちが集まれるところが近くにあるといいですね。

和田 日本人の悪いところで、お家のご飯のほうが外食より健康にいいと考えている。食事はね、年を取れば取るほどたくさんの種類の食べ物を摂ったほうがいいなと私は考えています。栄養素が足りないと何かしらの障害が出ることがありますから。

たとえば、亜鉛が欠乏すると味覚障害を起こすことはよく知られていますね。若い人だと亜鉛が足りなくても障害を起こすまでにはいかないのですが、年を取ってからは亜鉛が足りなくなるとかなりの確率で味覚障害になります。だから亜鉛を多く含んでいるカキとかニンニクを食べないといけない。

けれども、お家ご飯だとなかなかそういう食材を使わなかったりするから不足しがちなんです。そういうときは外食がいい。

現代では「バランス食」になっているラーメン

和田 これはよくいろんなところで話しているのですが、ラーメンも健康にいいんです。みんな身体に悪いと思い込んでいるだけでそうではありません。昔と違って、今のラーメンのスープは無化調(化学調味料を使わない)が主流で、10〜15種類くらいの食材を入れて煮込んであるわけですよね。それでトッピングに野菜とメンマ、チャーシューがついて、野菜もタンパク質も摂れるし、当然、麺で炭水化物も摂れる。それだけでけっこうなバランス食になっていると思いますよ。

1日30種類のものを食べましょうと私たち医師は推奨していますけれども、幕の内弁当を食べるだけで15種類は摂れるんですよね。ですから、お家ご飯が健康にいいように一見みえるけれども、粗食だとどうしても種類が摂れないんです。

昔は貧しいから品数の少ないものを食べていた。けれども年を取るとなぜか、そういう貧しい食に戻ってしまう人が多い。

中尾 いろんな要因がありますよね。経済的なこともあるでしょうし、面倒臭いということもあるでしょう。

和田 韓国や台湾に行くと、小皿で20皿くらいいろんな料理が出てきますよね。普段から高齢者を診察している医者からすると、あれはとてもいいですよ。大勢で食べに行ければ、コストを安く抑えることだってできるし、そのぶん、品数を増やせますしね。

60代以降は筋肉を落としてはダメ

和田 高齢者の健康についてお話しすると、やはり60代以降は筋肉を落としてはダメですね。年を取ってから筋肉が落ちると足腰が弱り、歩けなくなる原因になります。前にお話ししたように、男性の場合は男性ホルモンが減ってくると筋肉が落ちてしまうから、筋肉を維持することが大事です。


男性も女性も肉体維持のためには、年を取れば取るほど、肉を食べるといいと思います。良質のタンパク質を摂取すること。そのとき問題になるのが、脂肪ですね。アメリカ人は脂肪の摂りすぎが問題で、心筋梗塞が多いのですが、逆に日本人は脂肪を摂らなさすぎる。いわゆる健康的なピチピチとした肌や胸、お尻というのは、全部脂肪ですから。脂肪を摂りすぎるのもいけないけれども、目の敵にしすぎてもいけない。

中尾 昔の常識は今日の非常識になってきていますね。食べ物に関しても、私たちの年代はとくにそうだけれども、いろいろ勘違いしている部分が多い。今の脂肪の話にしてもそうです。第一、食用の油にしても、今は昔と違って、品質もいいですものね。

和田 ええ、良質なものが増えました。あとは身体に良い油というものも確実にあります。DHAなどが含まれる魚の油とか、オリーブオイルなんかがそうですね。いずれにしろ、油・脂肪が足りなくなると、一気に老け込んでしまいますから。極端な話、週に2、3回トンカツを食べても身体に悪いわけではないと思いますよ。

中尾 私もサラダにオリーブオイルをかけたりはしますけれども、体型の維持もあって、少し油ものは控えるようにしています。でもそれよりも身体を動かしていれば問題ないですよね。

(中尾 ミエ : 歌手、女優)
(和田 秀樹 : 精神科医)