政策改革・イノベーション研究所、「たばこと地方自治」で問題提起 「エビデンスベース」の議論を求める
政策改革・イノベーション研究所(IIPR)は、第3回目となる「政策改革・イノベーションシンポジウム」を24年10月1日に開催した。同研究所代表理事・蔵研也氏は、東京都議会議員・藤井あきら氏と横浜市会議員・遊佐大輔氏を招き、たばこと地方自治の新しい関係について議論を深めた。
IIPRは2024年設立。科学技術や社会技術の革新を促し、目まぐるしく変化する社会の中での税制などの制度の在り方について調査・研究を実施している。これまでのシンポジウムでは、衆議院議員・中山展宏氏(第1回)と衆議院議員・田中和徳氏(第2回)と蔵氏が対談してきた。
東京都、横浜市のたばこ対策は?
今回のシンポジウムは、横浜市のたばこ税に関する遊佐氏の説明から始まった。「横浜市の全体予算が約3兆円の中で、たばこ税の税収は約230億円もあります。神奈川県が受動喫煙防止の政策を進める一方、区市町村にたばこ税の多くが入るんです」と指摘する。
「大事なのは、たばこ税による大きな税収があることです。そのため、加熱式たばこによる健康被害はどこまで起こるのかなどのエビデンスに基づいた議論を突き詰めていく必要があると思います」
藤井氏も、東京都のたばこ対策に「厳しいルールを設定している」と説明した。今後、紙巻きたばこだけではなく加熱式たばこに関する制限も少しずつ進むだろうと話す一方、「加熱式に関するエビデンスはまだはっきりしていないため、例えば居酒屋などで『加熱式ならば吸える』という対応を取っている」。
蔵氏は、路上禁煙地区での喫煙や吸い殻のポイ捨てに対する過料を問題視した。「『過料』という言葉を『罰金』と言い換えれば、本質的には刑罰と同じです。こうした行政罰は人権侵害で、我々の自由な社会を担保するために、言葉の言い換えで警察国家のようなものを作っていくことは危ないと思う」と警鐘を鳴らす。
蔵氏の発言を受け、遊佐氏は「地方議員を経験すると『たばこは百害あって一利なし』とは言えない。大きな税収があるためです。紙巻きは時代の要請があるから、多少肩身が狭くても仕方がない。けれども、加熱式については、まだ議論が整っていない段階で一緒に値上げしています。ちょっと待てよというのがあってもいいのではないか」と話す。
蔵氏も同様に指摘し、「紙巻きに対する加熱式の健康被害をエビデンスに基づいて議論する必要があります。国家が『これはいいもの』『これは悪いもの』だと一般論で権力的に押し付ける社会というのは、全体主義に近づいてるんじゃないか」との見解を示した。
「エビデンスベースは本当に大事なこと」
日本の地方自治体では、法律が規制する事項よりも厳しい基準を定める上乗せ条例や、規制対象を広げる横出し条例が認められている。これに対し、蔵氏は「基本的に減らすことは許されていない」と指摘する。
藤井氏は、「まさに東京都の受動喫煙防止条例は、国の健康増進法で定められている持続性防止のルールをより厳しくしたものです。紙巻きの受動喫煙に関するエビデンスは出ていると思うのですが、加熱式の健康被害をどう考えるかというのは非常に重要で、しっかりとした議論をする必要がある」と提言。
蔵氏も、「エビデンスベースは本当に大事なことで、感情的に『こういうのはやめよう』『こういうのはやめさせろ』という話になると泥試合になるので、フェアなルールで議論してほしい」と同意した。