石破茂新首相

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こよなく愛してきた世界

 10月1日、第102代首相に選出された石破茂氏(67)はよく知られるところでは、軍事、鉄道、アイドル、カレー・ラーメンといった趣味・嗜好を持つとされている。オタク的と評されることも多く、全体的に青少年的なテイストが強いのだが、「大人な横顔」も無いわけではないのだという。その独特のライフスタイルを見てみよう。

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「石破氏くらい多岐にわたってインタビュー取材を受けてきた現役の政治家もいないでしょうね。ミリタリー、鉄道、アイドル、カレー・ラーメン、読書……何をとっても造詣が深いと言うか思い入れが強く、立て板に水のように語る。政治情勢についても身内(自民党)か否かをあまり気にせず語るものだから、与党政治家なのに評論家のようで無責任だなどと言われたこともありましたね」

石破茂新首相

 と、政治部デスク。

 同僚議員らと酒を飲むよりも家で本を読むことを好む、というのも有名な話。ただ、実はふらりと大人の社交場に顔を見せることもあったという。

人気がなく面倒見が悪い

「石破さんは銀座のクラブによく顔を出されていましたね。有名な『M』とか『G』にもやって来ていましたよ。さすがにここ最近はあんまり聞かないですけどね」

 と、銀座のクラブの関係者。石破氏は慶応大卒業後、三井銀行に入行。その頃から接待で銀座のクラブを訪れていたことは過去に自ら触れている。

「特徴的なのは、石破さんは銀座に1人でやって来ることが多かったようです。講演か何かが終わったのか現金を握りしめていて、その分だけ飲みにきたみたいな話を聞いたこともありますね。私もちらっとカウンターを見たら、石破さんがポツンと座っていて驚いた記憶があります。自民党が下野していた頃なのでもう10年以上も前のことですけどね。客だから当然と言えば当然でしょうが、馴染みのホステスさんたちは“石破さんに首相をやってもらいたい”と言っていましたね。ずいぶん時間がかかりましたが、彼女らも喜んでいるのではないでしょうか」(同)

立ち上げた派閥との関連性

 石破氏は永田町では人気がなく面倒見が悪いとされてきた。「銀座に1人でやって来る」という行動はどこかそれにつながるところがある。良く言えば、カネをばらまいて接待するようなことを一貫してやってこなかったとも言えるのだが、このあたりの独特の行動パターンが党内での基盤の弱さにつながっているという指摘はかねてからあった。

 それでもなおある時期までは「派閥」のトップをつとめていたのは不思議といえば不思議な話ではある。もっとも、こちらも通常の派閥とはかなり異なる、独特の性質を持っていたようだ。

 脱派閥を掲げていた石破氏がその態度をひるがえし領袖として2015年に旗揚げしたのが「水月会」。メンバーは当初20名。よく言えば少数精鋭、よい言い方でないとしたら紛れもなく弱小派閥だった。ただし、石破氏自身は水月会については、いわゆる旧来型の派閥とは異なるという認識を語っている。石破氏の著書『政策至上主義』にはこうある。

カネやポストが欲しけりゃ

「水月会とはどのような集団なのか、端的に示すエピソードがあります。
 第二次安倍政権で内閣改造が行われたあと、何人かのメンバーが記者から、『水月会にいるとポストがもらえないんじゃないですか』という些(いささ)か意地悪な質問をぶつけられたことがあったそうです。すると、口々にみんな、こう返したそうです。
『カネやポストが欲しけりゃ、水月会なんかには居ないよ』
 私はこれを聞いたときに、とてもうれしく思ったものです」

 こうしたスタンスからは趣味・嗜好にどこか通じる青臭さが感じられる。このあたりが彼の国民人気に一役買った面はあるだろう。が、それでグループが一致団結し続けられるほど政治の世界は甘くない。その後、石破氏が総裁選で敗北を重ねる中で派閥から距離を置くメンバーがポツポツと出始める。

 時の宰相である安倍晋三氏は選挙に連戦連勝し、長期政権を築いていた。安倍氏とは政治信条など様々な点で壁のある石破氏のもとにいてはポストを望めない。総裁選で4度目の敗北となった2020年9月、石破氏は会長を辞任。21年には派閥の存続を断念し、派閥から議員グループに衣替えを選択した。

ふんどしを締め直す

「党内に基盤がほぼなくなり、今回は推薦人集めにさえ苦労していました。が、派閥が解消されたことと、“今回の挑戦で最後、本人はとにかく本気だ”ということで、石破氏から気持ちが離れつつあったかつての同志たちは、ふんどしを締め直すような気持ちで総裁選に関わるようになったと聞きました。それでも石破氏の勝利を予想した人は身内ですらかなり少数派だったのではないでしょうか」

 と、政治部デスク。もっとも、今回の勝利がこれまでの「カネやポストを配らない」といった理想主義的なスタンスの産物と見る向きは少ないようだ。

「石破氏が最終的に勝利した要因を挙げればキリがないですが、まあ一言で言えば運が良かった、タイミングが味方をしたということになるでしょうか。これまではさておき、今回は事前にポスト配分の話は当然出ていたでしょうし、結局は派閥の力学によって転がり込んできた勝利ですからね」(同)

 5度目の挑戦で勝者となった石破氏は、首相となったことで変貌するのか。それとも自身のスタイルを貫けるのか。

デイリー新潮編集部