大河原克行のNewsInsight 第329回 VR/XRは成長領域、HTC VIVEの日本戦略は? VIVE Focus新モデルを市場投入
HTC NIPPONは、XRヘッドセットVIVE Focusシリーズの新製品として、「VIVE Focus Vision」を発売した。個人向けのConsumer Editionの価格が16万9000円、2年間のVIVE Business保証&サービスを付属した法人向けのBusiness Editionが21万4000円、専用ディスプレイポートケーブルのVIVE Wired Streaming Kitが2万9000円。
XRヘッドセットVIVE Focusシリーズの新製品「VIVE Focus Vision」
いずれも2024年9月24日から予約を開始しており、出荷開始は10月18日。予約をすると、Consumer EditionではVIVE Wired Streaming Kitを無償提供。Business Editionでは、法人向け機能であるVIVE Business+を1年間無償で提供する。
VIVE Focus Visionは、これまで実績を持つVIVE Focus 3をベースに設計、開発したもので、クアルコムのSnapdragon XR2シリーズを採用。PCVR用DisplayPortモードを搭載することで、VIVE Focus VisionをPC本体のグラフィックカードに直接接続し、ロスレス映像を実現できるのが特徴だ。本来あるべき姿の映像を最高画質と最低遅延で実現。開発者が意図した通りの高品質なコンテンツを楽しむことができる。SteamVRゲームのコレクションを持っているPCVRゲーマーや、強力な没入体験を提供したいと考える企業には最適な機能になるとしている。
VIVE Focus Visionでは、2つの前面カラーカメラを活用して、立体パススルー機能を実現。赤外線フラッドライトの搭載により、ハンドトラッキング機能も向上した
また、2つの前面カラーカメラを活用して、立体パススルー機能(ステレオフルカラー)を搭載。深度センサーとの組み合わせで正確な奥行きを表現することが可能になっている。加えて、赤外線フラッドライトの搭載により、ハンドトラッキング機能を向上しているほか、VIVEセルフ・ポジショニング・トラッカーを身に着けて、モーション体験ができる。バーチャル空間上で自分らしさを持った動きが可能になる。
さらに、マルチユーザー設定により、VRアーケードのようなB2Cでの活用や、医療分野や防衛、金融、製造業などにおける従業員トレーニングなどにも活用しやすくなる。内蔵したアイトラッキングレンズ構造による自動IPD調整機能を搭載。ユーザーはヘッドセットを友人や家族、同僚と簡単に共有できる。レンズの瞳孔間距離を自動的に調整し、常時クリアなビジュアルを実現することも可能できる。これらの機能も、LBE(ロケーションベース体験)やトレーニングイベントなど、ユーザーの入れ替わりが頻繁な環境に適しているとした。
エンジニアリングのシチュエーション。立体パススルー機能と奥行き表現が活躍する
マルチユーザー設定により、VRアーケードのようなB2Cでの活用が可能に
例えばエクササイズなどで、トラッカーを身に着けてのモーション体験
大型ファンを採用するなど冷却システムを刷新し、快適な動作を可能にする一方、サブバッテリーを内蔵しているため、バッテリーを交換している最中でも最大20分間に渡り、デバイスを作動させることができるという。
HTC グローバルプロダクトマーケティングマネージャーの政田雄也氏は、「HTCは、PC接続型VRデバイスから、高性能XRデバイスまで様々な製品をラインアップしてきた。VRとXRの2つの世界を妥協なく、楽しむことを目指したのがVIVE Focus Visionである。没入感を妨げることなく、着け心地とバランスを実現し、高い安全性と耐久性も両立している。妥協しないPCVRであり、連続利用にもこだわったデザイン、全身をトラッキングする技術とMRへの対応が、VIVE Focus Visionの特徴である」と述べた。
HTC グローバルプロダクトマーケティングマネージャーの政田雄也氏
また、HTC グローバルセールス&マーケティング シニアバイスプレジデントのCharles Huang (チャールズ・ハン)氏は、「HTCは、Androidのスマホを世界で初めて発売するなど、スマホのパイオニアであるだけでなく、2016年に初のVRヘッドセットを発売し、誰もが、どこででも没入体験ができるようにした最初の企業でもある。VRの領域では180以上のアワードを受賞しているほか、国際宇宙ステーションに送られた初のVRヘッドセットも提供し、無重力空間でも利用できるように様々な工夫を凝らしている。今回のVIVE Focus Visionにより、PCVRのスタンドアロン端末を再定義し、その最適解を示したい」と位置づけ、「革新は、HTCのDNAであり、HTCは常に挑戦を続けてきた。人とテクノロジーをつなげることが私たちのビジョンであり、テクノロジーと製品の融合がシームレスな体験を可能にし、VIVE REALITYと呼ぶ世界を実現することができる」と述べた。
HTC グローバルセールス&マーケティング シニアバイスプレジデントのCharles Huang (チャールズ・ハン)氏
現在、日本におけるHTCの事業は、VRおよびXR端末事業、SIMフリー端末によるスマホ事業、5G基地局事業、法人向けクラウドソリューション「VIVE Business+」によるライセンス事業、バーチャルプロダクションによるトラッキング事業を展開している。
今後、VRおよびXR端末事業は成長領域のひとつに位置づけ、事業構成比を高めていくことになる。
日本のカントリーヘッドを務めるHTC NIPPON セールス&マーケティング責任者の小山直樹氏は、「XRは、産業分野における利用が拡大しており、HTCでは、この分野とともに、コンシューマ領域におけるヘビーユーザーやVTuberなどを対象にしたビジネスを展開していくことになる」と語る。
HTC NIPPON セールス&マーケティング責任者の小山直樹氏
日本におけるこれまでのVRおよびXR事業が、約8割がコンシューマ用途であったが、VIVE Focus Visionの投入により、法人向け比率を約5割にまで高めていく考えを示す。
つまり、VIVE Focus Visionの投入は、日本におけるHTCのXRビジネスを、新たなフェーズへと投入させるものになる。
とくに注力するのが、多くの人数での利用するシーンだ。
具体的には、学校での利用や、複数の社員が参加するトレーニングなどがある。LBEもそのひとつで、あらゆる場所をつないで同じエンターテイメントコンテントを体験したり、一緒にゲームを行ったりできる。そのため、数1000万円規模の箱モノ投資をすることなく、没入型の新たな体験が可能になる。
「VIVE Focus VisionとVIVE Business +によって、どこででも、バーチャル空間を利用したゲームセンターが開設できる。VTuberのXRライブも簡単に開催することが可能である。多くのビジネスが期待できる。なかでも、LBE分野は徹底して取り組んでいく」と意気込む。
また、堅牢性を生かして、工場設備の遠隔操作や、防衛産業および航空宇宙産業、警察や消防でのシミュレーション用途、トレーニング用途でも活用が期待できるとする。
HTC グローバルプロダクトマーケティングマネージャーの政田雄也氏も、「VIVE Business +を利用することにより、ビジネスシーンにおけるXR導入や運用が簡単になる。少人数のオペレーションや、専門知識がない利用者でもデバイスを使いこなすことができる。仮に、XRが必要とされるシーンが過酷な環境でも、安心して利用できるように進化している。ストラップやフックの素材を強化し、取り換えやクリーニングを行いやすくしている点も、ビジネスシーンでは有効である。高度なトラッキング機能で、シミュレーションや訓練、アミューズメントシステム、化学や医学を加速するトレーニングでの利用も可能だとみている。ビジネスにとって理想のプラットフォームであり、新たなXRとMRの未来を、ビジネスとゲーム活用で実現していきたい」と語った。
VIVE Focus Visionの法人向け展開では、キヤノンマーケティングジャパンとの連携も発表した。同社を通じた産業分野向けの提案のほか、2次店、3次店を通じた全国展開も進めることになる。
VIVE Focus Visionはオンとオフの両方で展開
一方、個人向けには、Amazonやヨドバシカメラ、ビックカメラといった正規取扱販売店を通じたオンライン販売を行う-ほか、2024年11月からは、販売代理店での店頭展示も開始する。ここでは、MSIのゲーミングPCと連携した展示のほか、他社のXR製品と隣接した展示も行う。「見て、触って、感じてもらい、ワクワクを体験してもらいたい」(HTC NIPPONの小山氏)とする。
さらに、「国内のVRおよびXR市場におけるポジションをしっかりと確立したい。唯一無二の優れたデバイスと、クラウドサービスを連携させる提案は、他社にはできない圧倒的な差別化になる。今後は、スマホ事業もしっかりと行っていく。個人市場向けのアクセサリーも充実させる。オンとオフの両方で展開していきたい」と続けた。
HTCは、日本におけるVRおよびXR事業の成長を加速させることができるのか。VIVE Focus Visionは、重要な戦略製品の投入だといえる。
いずれも2024年9月24日から予約を開始しており、出荷開始は10月18日。予約をすると、Consumer EditionではVIVE Wired Streaming Kitを無償提供。Business Editionでは、法人向け機能であるVIVE Business+を1年間無償で提供する。
VIVE Focus Visionは、これまで実績を持つVIVE Focus 3をベースに設計、開発したもので、クアルコムのSnapdragon XR2シリーズを採用。PCVR用DisplayPortモードを搭載することで、VIVE Focus VisionをPC本体のグラフィックカードに直接接続し、ロスレス映像を実現できるのが特徴だ。本来あるべき姿の映像を最高画質と最低遅延で実現。開発者が意図した通りの高品質なコンテンツを楽しむことができる。SteamVRゲームのコレクションを持っているPCVRゲーマーや、強力な没入体験を提供したいと考える企業には最適な機能になるとしている。
VIVE Focus Visionでは、2つの前面カラーカメラを活用して、立体パススルー機能を実現。赤外線フラッドライトの搭載により、ハンドトラッキング機能も向上した
また、2つの前面カラーカメラを活用して、立体パススルー機能(ステレオフルカラー)を搭載。深度センサーとの組み合わせで正確な奥行きを表現することが可能になっている。加えて、赤外線フラッドライトの搭載により、ハンドトラッキング機能を向上しているほか、VIVEセルフ・ポジショニング・トラッカーを身に着けて、モーション体験ができる。バーチャル空間上で自分らしさを持った動きが可能になる。
さらに、マルチユーザー設定により、VRアーケードのようなB2Cでの活用や、医療分野や防衛、金融、製造業などにおける従業員トレーニングなどにも活用しやすくなる。内蔵したアイトラッキングレンズ構造による自動IPD調整機能を搭載。ユーザーはヘッドセットを友人や家族、同僚と簡単に共有できる。レンズの瞳孔間距離を自動的に調整し、常時クリアなビジュアルを実現することも可能できる。これらの機能も、LBE(ロケーションベース体験)やトレーニングイベントなど、ユーザーの入れ替わりが頻繁な環境に適しているとした。
エンジニアリングのシチュエーション。立体パススルー機能と奥行き表現が活躍する
マルチユーザー設定により、VRアーケードのようなB2Cでの活用が可能に
例えばエクササイズなどで、トラッカーを身に着けてのモーション体験
大型ファンを採用するなど冷却システムを刷新し、快適な動作を可能にする一方、サブバッテリーを内蔵しているため、バッテリーを交換している最中でも最大20分間に渡り、デバイスを作動させることができるという。
HTC グローバルプロダクトマーケティングマネージャーの政田雄也氏は、「HTCは、PC接続型VRデバイスから、高性能XRデバイスまで様々な製品をラインアップしてきた。VRとXRの2つの世界を妥協なく、楽しむことを目指したのがVIVE Focus Visionである。没入感を妨げることなく、着け心地とバランスを実現し、高い安全性と耐久性も両立している。妥協しないPCVRであり、連続利用にもこだわったデザイン、全身をトラッキングする技術とMRへの対応が、VIVE Focus Visionの特徴である」と述べた。
HTC グローバルプロダクトマーケティングマネージャーの政田雄也氏
また、HTC グローバルセールス&マーケティング シニアバイスプレジデントのCharles Huang (チャールズ・ハン)氏は、「HTCは、Androidのスマホを世界で初めて発売するなど、スマホのパイオニアであるだけでなく、2016年に初のVRヘッドセットを発売し、誰もが、どこででも没入体験ができるようにした最初の企業でもある。VRの領域では180以上のアワードを受賞しているほか、国際宇宙ステーションに送られた初のVRヘッドセットも提供し、無重力空間でも利用できるように様々な工夫を凝らしている。今回のVIVE Focus Visionにより、PCVRのスタンドアロン端末を再定義し、その最適解を示したい」と位置づけ、「革新は、HTCのDNAであり、HTCは常に挑戦を続けてきた。人とテクノロジーをつなげることが私たちのビジョンであり、テクノロジーと製品の融合がシームレスな体験を可能にし、VIVE REALITYと呼ぶ世界を実現することができる」と述べた。
HTC グローバルセールス&マーケティング シニアバイスプレジデントのCharles Huang (チャールズ・ハン)氏
現在、日本におけるHTCの事業は、VRおよびXR端末事業、SIMフリー端末によるスマホ事業、5G基地局事業、法人向けクラウドソリューション「VIVE Business+」によるライセンス事業、バーチャルプロダクションによるトラッキング事業を展開している。
今後、VRおよびXR端末事業は成長領域のひとつに位置づけ、事業構成比を高めていくことになる。
日本のカントリーヘッドを務めるHTC NIPPON セールス&マーケティング責任者の小山直樹氏は、「XRは、産業分野における利用が拡大しており、HTCでは、この分野とともに、コンシューマ領域におけるヘビーユーザーやVTuberなどを対象にしたビジネスを展開していくことになる」と語る。
HTC NIPPON セールス&マーケティング責任者の小山直樹氏
日本におけるこれまでのVRおよびXR事業が、約8割がコンシューマ用途であったが、VIVE Focus Visionの投入により、法人向け比率を約5割にまで高めていく考えを示す。
つまり、VIVE Focus Visionの投入は、日本におけるHTCのXRビジネスを、新たなフェーズへと投入させるものになる。
とくに注力するのが、多くの人数での利用するシーンだ。
具体的には、学校での利用や、複数の社員が参加するトレーニングなどがある。LBEもそのひとつで、あらゆる場所をつないで同じエンターテイメントコンテントを体験したり、一緒にゲームを行ったりできる。そのため、数1000万円規模の箱モノ投資をすることなく、没入型の新たな体験が可能になる。
「VIVE Focus VisionとVIVE Business +によって、どこででも、バーチャル空間を利用したゲームセンターが開設できる。VTuberのXRライブも簡単に開催することが可能である。多くのビジネスが期待できる。なかでも、LBE分野は徹底して取り組んでいく」と意気込む。
また、堅牢性を生かして、工場設備の遠隔操作や、防衛産業および航空宇宙産業、警察や消防でのシミュレーション用途、トレーニング用途でも活用が期待できるとする。
HTC グローバルプロダクトマーケティングマネージャーの政田雄也氏も、「VIVE Business +を利用することにより、ビジネスシーンにおけるXR導入や運用が簡単になる。少人数のオペレーションや、専門知識がない利用者でもデバイスを使いこなすことができる。仮に、XRが必要とされるシーンが過酷な環境でも、安心して利用できるように進化している。ストラップやフックの素材を強化し、取り換えやクリーニングを行いやすくしている点も、ビジネスシーンでは有効である。高度なトラッキング機能で、シミュレーションや訓練、アミューズメントシステム、化学や医学を加速するトレーニングでの利用も可能だとみている。ビジネスにとって理想のプラットフォームであり、新たなXRとMRの未来を、ビジネスとゲーム活用で実現していきたい」と語った。
VIVE Focus Visionの法人向け展開では、キヤノンマーケティングジャパンとの連携も発表した。同社を通じた産業分野向けの提案のほか、2次店、3次店を通じた全国展開も進めることになる。
VIVE Focus Visionはオンとオフの両方で展開
一方、個人向けには、Amazonやヨドバシカメラ、ビックカメラといった正規取扱販売店を通じたオンライン販売を行う-ほか、2024年11月からは、販売代理店での店頭展示も開始する。ここでは、MSIのゲーミングPCと連携した展示のほか、他社のXR製品と隣接した展示も行う。「見て、触って、感じてもらい、ワクワクを体験してもらいたい」(HTC NIPPONの小山氏)とする。
さらに、「国内のVRおよびXR市場におけるポジションをしっかりと確立したい。唯一無二の優れたデバイスと、クラウドサービスを連携させる提案は、他社にはできない圧倒的な差別化になる。今後は、スマホ事業もしっかりと行っていく。個人市場向けのアクセサリーも充実させる。オンとオフの両方で展開していきたい」と続けた。
HTCは、日本におけるVRおよびXR事業の成長を加速させることができるのか。VIVE Focus Visionは、重要な戦略製品の投入だといえる。