愛する夫が風俗に行っていたら…離婚できるのか?

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 性的なサービスを行う「風俗」。もし、愛する夫が風俗に通っていたことを知った妻が、夫に愛想を尽かし離婚を申し立てることはできるのでしょうか……。そこで、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に、過去に事例もあったのか含め、疑問を聞いてみました。

1度きりの場合、「離婚できない可能性が高い」

Q.ずばり、夫が「風俗」へ行っていたのを知った妻が離婚を申し立てることはできるのでしょうか。

佐藤さん「離婚を申し立てることは可能です。どんな理由であれ、離婚の申し立て自体は可能であり、夫もそれに同意すれば、離婚できます。

夫が離婚に応じないと主張しており、当事者同士の話し合いで離婚できない場合、裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。そこで必要になるのが、法定離婚事由です(民法770条1項各号)。

風俗通いは、5つある法定離婚事由のうち、『不貞行為』(民法770条1項1号)にあたる可能性があります。不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこととであり(最高裁1973年11月15日判決)、風俗店のサービス内容によっては不貞行為に該当するでしょう。

不貞行為とはいえない場合であっても、夫が風俗店に通うことでけんかが増え、相手を信用できなくなり、夫婦関係が悪化したり、家庭の経済状況が苦しくなったり、別居に至るなど、さまざまな事情が重なり、婚姻関係が破綻し修復の見込みがないと認められるケースもあります。そのようなケースでは、『その他婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)に該当し、離婚が認められる可能性があります」

Q.もし、風俗の常連となっていることがわかった場合、離婚できたりするのでしょうか。

佐藤さん「継続的に風俗店を利用していることが証拠上明らかとなった場合、風俗店のサービス内容にもよりますが、離婚できる可能性が高まるでしょう。

一方、風俗店の利用が1度きりであり、その他、婚姻関係に大きな問題がない事案では、婚姻関係の破綻が認められず、離婚できない可能性が高いです。風俗店の利用が数回程度あったとしても、妻に風俗通いが発覚した当初から謝罪し、今後利用しない旨を約束するなどしていれば、離婚事由にあたるまでの不貞行為とは評価できないとして、離婚を認めなかった裁判例もあります。

Q.改めて、離婚が成立するケースを教えてください。

佐藤さん「夫婦の話し合いにより、お互いが納得して離婚する場合には、どんな理由であっても離婚できます。

離婚について話し合いが成立せず、裁判所に離婚を認めてもらうためには、『法定離婚事由』が必要になります。法定離婚事由には、(1)不貞行為、(2)悪意の遺棄、(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないこと、(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと、(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があることの5つがあり(民法770条1項)、いずれかが認められる必要があります。

なお、離婚の原因を作った側からの離婚請求は、原則として認められません。例えば、不貞行為をした側が『自分は配偶者以外の異性と性関係を持ったから、離婚を認めてほしい』と裁判所に訴えたとしても、自己都合による身勝手な言い分であるため、原則として認められないことになります」

Q.過去にそういった事例はあったのでしょうか。

佐藤さん「夫が風俗店などに入り浸り、貯金を勝手に使い込み、一方的に家を出て所在不明となり、妻の生活を困窮させた事案において、裁判所は婚姻関係の破綻を認め、妻からの離婚請求を認めています。この事案は、悪質性が高く、夫に対し500万円という高額の慰謝料の支払いが命じられました。(東京地裁2004年6月17日判決)」