一定時間以内の応答を保証する「Real Time Linux」が正式にカーネルに組み込まれる
Linuxの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏が、2024年9月20日にReal Time Linuxとして知られる「PREEMPT_RT」を正式にLinuxカーネルへと組み込みました。
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Real-time Linux is officially part of the kernel after decades of debate | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2024/09/real-time-linux-is-officially-part-of-the-kernel-after-decades-of-debate/
Real Time Linuxは産業用制御システム、医療機器、航空宇宙機器など「時刻」に敏感なシステムにLinuxを使用する際に、一定時間以内にイベントに応答することを保証する仕組み。PREEMPT_RTはカーネルを変更してリアルタイム性をLinuxに組み込むパッチセットで、2005年に誕生しました。
トーバルズ氏は2006年に「Linuxでレーザーを制御するなんて正気じゃない」と述べつつ、「でも、Linuxで産業用溶接レーザーを制御したいならPREEMPT_RTを使うことに何の問題もない」と自らのスタンスを表明。PREEMPT_RTはLinuxのカーネルの一部ではありませんでしたが、長年にわたりさまざまな分野で使用されてきました。
そのため、正式にLinuxのカーネルにPREEMPT_RTが組み込まれても即座に何かが変化するわけではありませんが、公式にカーネルに組み込まれたことでPREEMPT_RTを使用するシステムの依存関係が減り、保守がより容易になるとのこと。
なお、エンジニアが集うニュースサイト「Hacker News」ではリアルタイム性の威力を一発で示す方法としてCyclictestユーティリティのビルドの例が投稿されています。投稿によると、ビルド中に各CPUコアの割り込みレイテンシを計測したところ、通常のLinuxであれば最悪の場合2桁ミリ秒まで到達する可能性があるのに対し、Real Time Linuxでは最悪の場合でも1桁マイクロ秒で応答できるとのことです。