火星の直径は地球の半分程度、質量は地球の10分の1程度しかなく、小さな惑星です(写真:Eliff/PIXTA)

いつもそこにあって、しかし遠い存在の火星。世界中の研究機関や企業が移住に向けて研究を重ねていますが、「赤色の理由は、赤さび(酸化鉄)を含んだ土や岩で覆われているから」など、知らないことも多いのではないでしょうか?

宇宙 すずちゃんねるさんの『眠れない夜に読みたくなる宇宙の話80』よりお届けします。

現在、人類は気候変動や小惑星の衝突、人口爆発などたくさんの問題を抱えていて、いずれ地球に住むことができなくなるかもしれません。

かつて火星には海があった―人類の移住先候補にかつて生命はいたのか

そこで、世界中の研究機関や企業が、「火星」移住に向けてさまざまなチャレンジを行っています。もしかすると、私たちの第二の故郷になるかもしれない火星ですが、いったいどのような場所なのでしょうか。


火星(写真:NASA/JPL/MSSS)

火星は、太陽を中心として地球の外側をまわっています。その直径は地球の半分程度、質量は地球の10分の1程度しかなく、小さな惑星です。火星といえば赤色のイメージがあるかと思いますが、その理由は赤さび(酸化鉄)を含んだ土や岩で覆われているからです。

また大気が薄く、ダストが多く漂っています。このダストの大きさが赤色を散乱する効率が高いため、赤色の光が散乱されやすく空が赤っぽく見えます。

その一方で、夕方になると一転、赤色だった空は青色へと変化します。これは夕方になると赤色の散乱が増えすぎて見えなくなり、逆にほどよく散乱する青色の光が残るようになるからです。そのため火星の夕暮れには、青っぽい空が広がるのです。地球の空の変化と逆です。

これまでにいくつもの探査機が着陸し、景色や地形なども明らかになってきている火星。いつか、月か火星かで移住先を悩む、なんて日がくるかもしれません。


火星の青い夕焼け(クレジット:NASA/JPL/MSSS)

かつて海があった火星

火星と地球は似ているところがあります。

まず、火星の自転軸は25度ほど傾いていて、地球と同じように四季があります。 ただし、四季といっても、火星の冬は平均マイナス90度、夏は0度という極寒の世界です。

火星の北極と南極には白い「極冠」と呼ばれる場所があり、極冠は主に二酸化炭素が凍って固体となったドライアイスからできています。春から夏に向かうにつれて北極の極冠は小さくなり、南極のほうが大きくなります。また秋になると北極に黄色い砂嵐が発生して、しばしば火星全体を包み込み、冬の間には消滅していく姿も見られます。

火星と地球の類似点はほかにもあります。

火星の地形や標高を細かく調べたところ、水が流れてできたと考えられる場所や、水の底でできたと考えられる岩石が発見されたのです。つまり、かつての火星の北半球には地表を覆う海があったと考えられています。

もしかすると、火星には何らかの生命が存在していたかもしれません。しかし、海の一部は30億年前までに氷となって地下に取り込まれてしまい、そのほかは宇宙空間に飛散してしまったと考えられています。

人類移住の候補先として研究が進められている火星。地下には氷があったり、冬には雪が降ったりすることもあると考えられています。さらには過去に生命も生まれていたかもしれないなんて、ワクワクがとまりません。


火星の極冠(写真:NASA/JPL/MSSS)

無数の小惑星

2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星「イトカワ」に着陸してサンプルを取得し、2010年に地球に無事帰還しました。さらに、2019年には「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」のサンプルの採取に成功。このサンプルは、太陽系が生まれた当時、どのような現象が起きていたのかを詳しく教えてくれる手掛かりになるそうです。


さて、「小惑星」とはいったい、どのようなものなのでしょうか。小惑星とは英語で「アステロイド(asteroid)」と言い、「星に似たもの」という意味です。これは発見された当時、小惑星が恒星のように見えていたことに由来します。ほとんどの小惑星の形は、地球のような丸い形ではなく、いびつな形をしています。

1801年、イタリア人のピアッツィによって、最初に発見された小惑星が、「ケレス(Ceres)」といわれる小惑星です。その後、観測技術が進歩したことで、現在は100万個を超える小惑星が見つかっています。

小惑星の多くは、火星と木星の間にある「アステロイドベルト(小惑星帯)」に存在します。なぜこの領域に多く存在するのかは、いまだに解明されていません。

小惑星の中には、この小惑星帯からはずれ、地球に近い場所に存在するものもあります。「イトカワ」や「リュウグウ」もそのうちの一つです。このような小惑星たちは探査しやすい面もありますが、その反面、将来地球に衝突する危険も秘めています。実際、2013年には小惑星が地球に衝突し、ロシア中部の都市で巨大な火の玉が突如現れ、衝撃が人々を襲ったのです。

小惑星といえば、映画で描かれることも多く、誰もが一度は「もし地球に衝突したら」と想像したことがあるかと思います。こういった衝突を防ぐために、多数の宇宙科学者たちによって、小惑星の軌道計算で危険な小惑星の早期発見を試みたり、回避方法を探したりする研究が続けられています。

(宇宙 すずちゃんねる : 宇宙科学YouTubeチャンネル)