「中国は千年の宿敵」金正恩の”憎悪”が再発した理由は
韓国紙・中央日報は20日、北朝鮮の金正恩総書記が中国のことを「宿敵」と呼んでいることがわかったと報じた。両国関係はこのところ、冷却化が観測されているが、それが国家の最高レベルにまで及んでいる可能性がある。
中央日報は、次のように伝えている。
複数の北朝鮮事情に詳しい消息筋は19日、中央日報に「最近、金正恩が自分たちに圧力を強化する中国に対して『宿敵』という発言をしたと聞いている」と話した。 これに先立ち、金正恩は今年7月、中国駐在外交官らに「中国の顔色をうかがうな」という指示を出したが、これと似た脈絡に見えるということだ。
同紙はさらに、中国に駐在する北朝鮮の外交官らが、7月31日に開かれた中国の建軍97周年レセプションに参加せず、また9月9日の北朝鮮の建国記念行事に、中国の王亜軍大使が「休暇」を理由に参加しなかった状況も伝えた。
この報道を待つまでもなく、中朝関係の冷却化は様々な面で観測されている。例えば共同通信は8月25日、複数の外交筋の情報として、中国が北朝鮮との国境近くに無線局の新設を計画していることを受けて、北朝鮮が国際機関に「規則違反」を申し立てていると報じた。「中朝間の意見対立が表面化するのは異例」とも伝えた。
そもそも、北朝鮮が中国を「宿敵」と呼ぶのは、これが初めてではない。2017年末に北朝鮮国内で行われた政治講演では、講師が「日本は百年の宿敵、中国は千年の宿敵」という表現を使って中国への警戒心を高めるよう聴衆に求め、会場のどよめきを誘ったとされる。
この当時、北朝鮮と中国の関係は最悪の状態にあった。国連安全保障理事会では北朝鮮に対して制裁を科す決議が、2006年から2017年にかけての11年間で11本が採択されている。安保理決議は、米英中露仏の常任理事国5カ国のうちひとつでも「拒否権」を行使すれば、採択されない。つまり、北朝鮮の友好国である中国(そしてロシア)も、賛成していたということだ。
また、11本の決議のうち8本は、金正恩氏の執権後に採択されたものだ。これはつまり、中国が「目に余る」と見る行動を、金正恩氏が集中的に取ってきたということだ。また、同氏は2013年12月、中国とのパイプ役だった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長を処刑し、彼に連なる人脈を粛清した。
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その後、米中関係の悪化もあり、金正恩氏が習近平国家主席に取り入る形で関係が修復されるのだが、再度の冷却化は今年に入って観測されている。しかも、今年は中朝の国交樹立75周年に当たり、両国は「親善一色」でもおかしくないのにかかわらずだ。
両国の関係冷却化には、北朝鮮とロシアの急接近が何らかの形で影響しているものと見られるが、直接的な原因は定かでない。今後の動向が注目される。