1999年『SOULS』での衝撃デビューから25年。オールタイム・リエディット・ベストアルバム『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』を完成させたbirdへのインタビューが実現した。

birdの音楽を初めて知る人たちにも軽やかに聴いてほしい──そんな想いからショートver.にリエディットされた名曲20曲に加え、25年の時を経て再び大沢伸一と制作/新録した「SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.」も収録された本作についてはもちろん、birdの今日に至るまでの音楽人生やどんな状況下でも歌い続ける秘訣(すべての歌い手必見!)、この先にリリース予定のコラボレーション曲も収録されたオリジナルアルバムについて、楽しく話題満載のインタビューとなった。

ーデビュー25周年おめでとうございます! 四半世紀にわたって音楽活動を続けてこれたこと自体には、どんな感慨を持たれていますか?

bird:我ながら凄いなと思います(笑)。デビューした当時は「目指せ、10年」ぐらいの感じだったんですけど、そこまでやれるかどうかも分からなかったから、まわりの方から「四半世紀もやってきたんだね」って言われると、ズシっと重みを感じます。

ー今回の『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』を制作するにあたり、25年分の自身の楽曲を振り返ったと思うのですが、birdはどんなアーティストだなとご自身では思いますか?

bird:25周年記念ベストということで、その制作に向けて過去のミュージックビデオを辿っていく機会があったんですけど、改めて「いろんなタイプの楽曲を歌ってきたんだな」と感じましたね。25年の中でいろいろチャレンジする機会も多くもらえたし、それは歌い手として幸せなことだったなと思います。

ーいろんなタイプの楽曲にチャレンジする。それを続けてきた背景にはどんな想いがあったんでしょう?

bird:私にとって歌はいちばんのコミュニケーションツールで、何かをお話したり書いたりするよりも、誰かとドーン!と繋がることができる近道だったんですよね。だから「こんな音楽を創りたいな」とか「誰かと一緒にこんな曲を創りたいな」と思うようになっていったんだと思います。「今、これは流行っているから歌いたい」というよりかは、音楽を続けてきた中で様々な出逢いがあって「今、この人と面白いことができたら」という想いから生まれた音楽がたくさんあって、その流れがどんどん繋がっていった結果「いろんなタイプの楽曲を歌ってきたんだな」と自分でも思える25周年に至ったんだと思います。

ー歌があったからたくさんの人と出逢えて、いろんな音楽を生むことが出来たと。では、歌うというコミュニケーションスキルを持ち合わせていなかったら、どんな人になっていたと思いますか?

bird:すごく狭いコミュニティの中で生きていたと思います(笑)。性格的にどちらかと言うと人見知りなので、誰かといきなりどーん!と距離を縮められなくて。心の皮を破るまでに時間がかかるほうなんですよ。でも、歌はその心の皮をビリビリビリ!って破くことができる。例えば、ライブに来てくれる人たちの中には、はじめましての人も多いじゃないですか。だけど、歌いだしてしまえば、いきなりその人と手を繋ぐこともできるし、ハグすることもできたりする。普段だったらそんなこと出来ないし、間違ってしちゃったとしても「あ、すみません!」ってなるんですけど、そこに歌があるだけで一瞬で仲良くなれてしまう。歌にはそういう背中を押してくれるすごく強い力があるんですよ。だから、もし私が歌っていなかったら、狭い世界の中でずっとモジモジしていたと思いますね(笑)。

ー今から25年前。大沢伸一プロデュースのもと「SOULS」でデビューしたわけですが、当時はどんな心境で活動されていたんでしょう?

bird:大沢伸一さんと出逢って環境が変わって、日本語で歌詞を書くということも「SOULS」が初めてでしたし、レコーディングも初めてでしたし、クラブミュージックに触れたのもそのときが初めてだったし、とにかく何もかもが初めてのことでいっぱいいっぱいだったと思います。そのひとつひとつを打ち返していくのにとにかく必死でした。

ークラブミュージックに触れたのも初めてだったということは、それまでは異なる音楽属性の人だったんですか?

bird:そうですね。音楽自体は大学時代に始めていて、軽音楽部でバンド活動していたんですよ。その流れでずっと音楽をやっていた中で大沢さんと出逢って、そこで「クラブという場所があるんだ?」と知る感じだったんです(笑)。だから「クラブに行ってみたほうがいい」と言われて、大阪のクラブに遊びに行ったんですけど、楽しみ方が分からなくて。DJの人がいて、そこでみんなワァーって踊っていて、その光景に戸惑いつつもドキドキしながら「ライブとは違うな」みたいな。そんな中で作品を創っていって、その曲を大沢さんがクラブでかけてくれて、自分の曲でみんなが踊っている光景を見て不思議な気持ちになって。そういう新しいものをスポンジみたいな感じでどんどん吸収していました。

ーちなみに、大学時代はどんな音楽をやっていたんですか?

bird:軽音楽部に勧誘されて入って、何をやったらいいか分からない状態からスタートして、初心者の人も経験者の人もいる中でとりあえずバンドを組んだんですけど、そのメンバーのひとりは米米CLUBが大好きだったんですよ。で、初めてそのバンドで「Shake Hip!」を歌ったんです。そこから先輩にソウルミュージックだったり、ジャズだったり、ロックだったり、いろんな音楽を聴かせてもらっていた中で「私はソウルミュージックが好きだな」と思って。アレサ・フランクリンを初めて聴かせてもらったときに「うわぁ!」って圧倒的な声のパワーに打ちのめされて、「私もこういう音楽をやってみたい! アレサバンドを組みたい!」って思うんです。それで友達とかにいっぱい声をかけて、アレサのコピーバンドを組んで。その活動の中でジャニス・ジョップリンとかいろんな人の曲もコピーするようになって、毎日楽しく歌っていましたね。

ーアレサやジャニスに魅せられて歌う喜びを知っていったんですね。

bird:大学4年生になったときに、まわりの友達は就職活動をしていたんですど、私は「音楽を続けたいな。どこまで行けるか分からないけど、頑張ってみたい」と思っていて。それで「音楽と言えばニューヨークだろう!」と勝手に思い込んで(笑)。当時はインターネットもないし、今みたいに情報が溢れていないので、とりあえずニューヨークに行く為のお金をバイトで貯めて、別に向こうの誰かと約束をしていたわけでもないんですけど、渡米しました。で、午前中だけは語学学校に通って、午後は現地の『Time Out』という雑誌を見ながら「今日ここでライブやってるな」と調べてライブを観に行ったり、ワークショップに参加したり、ミュージカルを観に行ったり。あとは、飛び入りでジャズとか歌えるお店があったので、そこで歌ってみたりしていました。

ー現地のお客さんの前で歌っていたと。行動力が半端ない。

bird:ただ、そんな中で気付くんですよね。それまでは誰かのコピーしか歌っていなかったんですけど、音楽で生きていく為にはオリジナルソングが必要だと。日本語で、自分の言葉で歌わなきゃいけないなと強く思って。それで日本に帰ってきてからも、関西エリアでジャズとか聴かせる飲食店でバイトしながら歌っていたんですけど、それと同時進行で初めて曲づくりに挑戦するようになって。とりあえず鼻歌でメロディーを考えて、軽音楽部の友達にコードを付けてもらったりして、歌詞も必要だから慣れていないなりに作詞もして、その曲をライブで演奏するようになったんです。その時期に大沢伸一さんと出逢ったんですよ。

ー運命の出逢いですね。

bird:向こうから声をかけてくれて「普段はどんな音楽が好きなの?」と聞かれて、私は大沢さんがどんな人か知らずに「私はバンドばかりやっていて。70年代のソウルミュージックが大好きで! アレサとかマリーナ・ショウとかいろいろ好きなんですよ!」みたいな感じで話していたら「今流行ってて格好良いソウルミュージックもあるんだよ」ってエリカ・バドゥとかディアンジェロとかの曲を聴かせてくれて。それで「めちゃくちゃ格好良い!」と思って、そこから今の時代の音楽も聴くようになったんですよね。その出逢いがきっかけで「じゃあ、なんか一緒にやってみよう」という話になったときに「日本語で歌いたいんですよ」と伝えたら、大沢さんも「日本語の曲をプロデュースしたい」と仰っていて。それで一緒に曲を創っていくことになったんですよね。

ーそして「SOULS」を筆頭に『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』にも収録されている名曲たちが生まれていくんですね。ちなみに、最初に出逢った頃の大沢さんにはどんな印象を持たれていますか?

bird:最初はどんな人なのか分からなかったので、ちょっと怖かったです(笑)。でも、話していくうちに同じ関西の人だったから「しゃべりやすいな」と思って、どんどん距離が近づいていきました。

ー今回、その大沢さんと「SOULS」の新バージョン「SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.」を制作されたんですよね。

bird:大沢伸一さんとまた一緒に「SOULS」という曲をレコーディングする。まず「25年続けていたら、こんなに素敵な機会がやってくるんだ! 嬉しいな!」と思いました。25年前の自分はこんな未来を考えてもいなかっただろうし、音楽活動を続けていないと起きなかったことじゃないですか。で、新しいアレンジで、今の私の声で歌った「SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.」が生まれたんですけど、新しい部分と懐かしい部分が混ざっていて、これを形に出来てすごく良かったなと思います。今回のベストは、1曲目がオリジナルの「SOULS(Main)」で、最後の曲が「SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.」になっているんですけど、このふたつを同じアルバムに収録することもなかなか出来ることじゃないと思うので、本当に嬉しいです。

ー25年前と今の「SOULS」に収められた自分の歌声。聴き比べたときにどんな印象を持たれましたか?

bird:25年前はとにかく全部を一生懸命やる感じだったので、今も一生懸命やってますけど、すべてが新しい環境の中で……本当にまっしぐらだったんですよね。なので、今聴くとそのときの感覚を思い出します。新しい「SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.」も歌っている気持ちはいっしょなんですけど、レコーディングとか長く積み重ねてきたものが反映されているとは思いますね。ただ、歌に対する向かい方は何も変わっていないんだなって。それは今回改めて感じました。あと「SOULS」は、私にとって初めて日本語の歌に挑戦した曲で、大沢さんから「これまでの歌い方をフラットに戻して、そこから取り掛かろう」とアドバイスしてもらって完成させた曲でもあるんですけど、それは今振り返るとすごく良かったなと思うんです。今でも新しいことをやるときは、過去のやり方を引っ張らず、いったん更地に戻してそこからまた新しいモノを吸収するようにしているんですよ。

ー創作者としての在り方を教えてくれた曲でもあるんですね。

bird:そうですね。今だったら、フラットにしても、これまでの経験で得てきた技法とかはいったん仕舞うだけで、またいつでも活用することもできますし。この考え方はいつまでも持っていていいものだなと思っています。

ーそんな「SOULS」から25年。歌うことから離れたい、休みたいと思ったことってなかったんでしょうか?

bird:もちろんあります。歌うことって物凄くエネルギーを使うので。そこに立ち向かえるところまで自分の心も体も持っていなかなきゃいけないんですよね。デビューしてしばらくは、すごく短いスパンで制作やツアーをやっていかなきゃいけなくて。もういっぱいいっぱいだったんですよ。1stアルバム『bird』のリリースとそのツアーが終わったとき、1回ちょっと旅に出ちゃったぐらい。そこで自分をフラットにして。そしたらあるとき「また歌いたいな」と強く思ったんですよね。それで戻ってきて開催したライブとかすごく面白かったですし。そういう行ったり来たりを繰り返してきて今があるのかなって。ただ、年齢を重ねていくと、いつでも良い状態ではいられなくなってくるから「どうすれば、どう持っていけば、また歌いたい気持ちになれるのか」って考えたりするんですけど、結局は歌が救ってくれるんですよね。歌ってしまえば「歌ってたのしい!」みたいなモードになるんですよ(笑)。

ーギアが上がるまでいろいろ考えて動けなくなったりもするけど、歌ってしまえばすべてが動き出すっていう(笑)。

bird:そうなんですよね! 「今日はダメかな」「気持ちがちょっと上がらないかもしれない」とか思っても、歌っているうちに「あれ、良い感じじゃない?」ってなって、結局「歌ってたのしい!」になる。ということは、やっぱり私にとっての軸は歌うことなんですよね。だから、とにかく歌えばいいんですよ(笑)。

ーすべての歌い手に読んでほしいインタビューになりました(笑)。今回のアルバム『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』は、過去の名曲たちをショートver.にリエディットしていますよね。こうした形のベスト盤を制作しようと思った理由を聞かせてもらえますか?

bird:90年代後半にリリースしていた曲って本当に長いんですよ。そういう時代だったからだと思うんですけど、でも今は3分台とかコンパクトな曲が多いじゃないですか。私のいちばん新しいオリジナルアルバム『波形』の収録曲も3分、4分ぐらいの曲になっていて。で、今回のベストは初めてbirdの曲を知る人たちにもいっぱい聴いてもらいたいし、軽やかに聴いて楽しんでもらえたらいいなと思ったんですよね。だからどの曲も短めにリエディットしたんですけど、そしたら私が聴いても新鮮に聴こえるアルバムになったんですよ! だから、私の曲をこれまで聴いてきてくれた人たちにとっても楽しめるアルバムだと思うんですよね。で、初めて聴く人たちは、これで興味を持ったらフルサイズの音源も聴いて頂けたらいいと思うし。そういう想いからリエディットしたバージョンを20曲も収録させてもらいました(※21曲目の新録「SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.」はベスト盤の趣旨に合わせての3分37秒尺のフルサイズ)。

ー「軽やかに聴いて楽しんでもらいたい」このbirdさんの発想自体が軽やかですよね。

bird:私も1曲1曲がフルサイズで成立しているのは重々分かっているんですけど、まずは知ってほしいし、聴いてもらいたいじゃないですか。それで好きになったらフルサイズの音源を聴いて「こんな展開が待っていたのか」みたいな感じで楽しんでもらえるだろうし。ライブで歌う曲も必ずしもフルサイズでやっているわけじゃなくて、結構短くしている曲もたくさんあるんですよ。それでも成立しているということは、それをアルバムでやってみても面白いのかなと思ったんですよね。音楽の聴き方も多様化していますし、こういうアルバムがあってもいいのかなって。もちろん極端なカットはしていませんし(笑)、自然な流れで聴けるようにリエディットしているので、まずは聴いてみてほしいですね。

ー25周年以降はどんな音楽活動をしていきたいと思っていますか?

bird:音楽の持つ魔法みたいな力。それでまだ出逢っていない人たちとも繋がれたらいいなと思っていて。このベスト盤で初めて出逢う人もいらっしゃるだろうし、その流れで今新しいオリジナルアルバムを制作しているんですよね。ほぼ完成しているんですけど、それもたくさんの方に聴いてもらいたくて。今まであんまりしてこなかったコラボレーション曲も数曲収録しているんですよ。誰かのアルバムに呼んで頂くパターンはいっぱいあったんですけど、自分のアルバムに来てもらうことってあんまりなくて。それを久しぶりにやってみたいなと思ったんですよね。まだ詳しいことは言えないんですが、世代を超えたコラボレーションを楽しんでもらえると思うので、そちらにもぜひ注目してほしいです!

<リリース情報>



bird
デビュー25周年記念ベスト盤『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』
発売中
定価:3,500円(税込)
https://bird-25th.lnk.to/best
=収録曲=
1. SOULS (Main) 【2024 re-edit】
2. BEATS (Original) 【2024 re-edit】
3. マインドトラベル【2024 re-edit】
4. マーメイド3000 【2024 re-edit】
5. 桜 【2024 re-edit】
6. flow 【2024 re-edit】
7. フラッシュ 【2024 re-edit】
8. ふくらみ 【2024 re-edit】
9. ハイビスカス 【2024 re-edit】
10. 夕暮れの少年 【2024 re-edit】
11. ファーストブレス (Original Ver.) 【2024 re-edit】
12. SPARKLES 【2024 re-edit】
13. パレード 【2024 re-edit】
14. Flowers 【2024 re-edit】
15. RUN 【2024 re-edit】
16. 明日の兆し 【2024 re-edit】
17. タイドグラフ 【2024 re-edit】
18. ミラージュ 【2024 re-edit】
19. 記憶のソリテュード 【2024 re-edit】
20. LIFE feat. bird / MONDO GROSSO 【2024 re-edit】
21. SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.  ※新録

<ライブ情報>

bird ”25th Anniversary Best 2024” Live !
2024年9月18日(水)ビルボードライブ大阪(1日2回公演)
1st Stage Open 16:30 Start 17:30 / 2nd Stage Open 19:30 Start 20:30
2024年9月27日(金)ビルボードライブ東京(1日2回公演)
1st Stage Open 17:00 Start 18:00 / 2nd Stage Open 20:00 Start 21:00
●メンバー
bird(Vo)
GENTA(Dr)
澤田浩史(B)
樋口直彦(G)
渡辺貴浩(Key)
Hanah Spring(Bgv)
ビルボードライブオフィシャルサイト https://www.billboard-live.com/

birdオフィシャルサイト https://www.bird-watch.net/
birdデビュー25周年特設サイト  https://www.110107.com/bird25th