七回、本塁打を放ったベッツを出迎える大谷(ロサンゼルス・ドジャース提供)

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 「ドジャース4−10カブス」(9日、ロサンゼルス)

 ドジャースの大谷翔平選手が4点を追う五回に「(記録は)勝つための手段」と語っていた思いを体現するシーンがあった。

 1死一塁から高めのカーブを捉えて中前打で出塁した大谷。一、三塁と好機を広げ、カブスのヘンドリクスは一塁へ2球、牽制球を投じ、これ以上の牽制は許されない状況となった。走者としてはスタートを切りやすい場面。そしてカウント2−1からの4球目、完璧なタイミングでスチールを狙った。

 打者・ベッツは浮いた変化球を捉え、打球は二遊間を破った。ラン&ヒットの形となり、大谷は一気に三塁へ。1点を返し、再び一、三塁の形を作った直後、大谷の思いがにじみ出た。

 一塁に到達したベッツに向かって三塁ベース上から何度も何度も拍手を送った大谷。そして力強くうなずいた。スタートのタイミングを考えれば限りなくセーフに近く、48盗塁目は確実だったかもしれない。それよりも反撃の1点を奪い、なおも一、三塁と追加点のチャンスを作ったベッツの一打が大きい−。大谷の拍手とうなずきが、その事実を証明していた。

 40本塁打−40盗塁を達成した際、大谷は「何本ぐらいかなっていうのはもちろん知っていたけど、それが目的にはならない。しっかりと勝つための手段として、盗塁もそうだし、やりたいなと思っているので。盗塁に関してはやっぱり失敗しないことを第一に考えながらやりたいなと思っている」と語っていた。個人の記録よりも勝利が優先。チームが勝つための手段であるべきという信念を語っていた。

 だからこそ48個目の盗塁よりも、ベッツのタイムリーで生まれた1点が大きかった。その思いを示す大谷の行動だった。チームは大敗して連勝はストップしたが、1−2番の最強ラインを改めて示した一戦。地区優勝、そしてプレーオフを勝ち抜いてのワールドシリーズ制覇へ、大谷&ベッツの存在感は絶大だ。