「もしかして...」きっかけは夜遅いコンビニで『高齢男性1人でATM操作する姿』抱いた"違和感"で意を決し特殊詐欺被害防いだ男性の一部始終
仕事帰りにふらっと立ち寄ったコンビニで見つけた高齢男性に感じた異変…その違和感が特殊詐欺被害を間一髪で防ぎました。その一部始終とは。「コンビニでも寄って帰るか」。大阪市城東区に住む会社員・稲見武志さん(52)が、仕事帰りに近所のコンビニに立ち寄ったのは7月23日午後9時すぎのことだった。雑誌コーナーに並んだ本を眺めていると、大きな声で電話しながら入店する80代の男性が目に入った。携帯電話を片手に、そのままATMの操作を始めた男性。操作方法をしきりに電話の相手に確認する様子が見て取れる。夜遅い時間に高齢の男性が1人でATMで操作…。稲見さんは強い“違和感”を抱いた。「もしかして、詐欺にあっているのでは」。しかし、自分はただの一般人、仕事帰りにたまたま寄っただけのコンビニだ。店員を探すも、店内には1人しかおらず、“ワンオペ”でレジ対応に追われていて相談することもできなさそうだ。稲見さんは覚悟を決めた。「おじいさん、騙されてませんか?電話の相手は知ってる人ですか?」。男性は「大丈夫」と繰り返したが、ATMの画面をのぞき込むと見えたのは「49万円」の表示。あとひとつでもボタンを押せば、入金が完了してしまう。稲見さんは無我夢中で取引停止のボタンを押した。その後、警察に110番通報し発覚したのは、男性が「城東区役所職員」を騙る還付金詐欺に遭いかけていたという事実だった。9月2日、大阪府警城東署は、特殊詐欺被害の未然防止に大きく貢献したとして、稲見さんに感謝状を贈呈した。実は城東区、近年、特殊詐欺被害の“ホットスポット”となっているのだ。去年、城東区内で発生した特殊詐欺の被害件数は大阪市内で“ワースト”となる73件(被害総額:約7900万円)で、今年も7月末時点ですでに42件、被害総額は約1億円と、市内でもワーストとなっている。また、今回注目すべきは「犯行時間」だ。捜査関係者によれば、日中ではなく、ATMに対応する行員や店員が少なくなる夜間を狙う特殊詐欺が増加しているという。そこで、大阪府警城東署も対策に乗り出している。交番勤務の警察官が管内のコンビニを割り振って担当。警察官は担当となったコンビニを可能な限り巡回し、「おかしいと思ったら、すぐに110番を」などと店員に注意を促している。さらに、高齢者が集まる地域の集会に警察官がゲリラ的に参加し、特殊詐欺への警戒を呼びかけている。稲見さんは、今回の経験についてこう話す。「黙って見て見ぬ振りもできたが、おじいさんが騙されることは許せなかった。微力ながら社会の役に立てて良かった。注意深く周囲を観察することが大事」。城東区の市内ワースト脱却に向け、住民一人一人の特殊詐欺への強い意識が求められている。