「雑談」によって、チームの生産性を大きく上げる人がいます。どんな内容の雑談をしているのでしょうか?(写真:jessie/PIXTA)

「雑談で相手の距離を縮めたい」「チームをいい雰囲気にするため、いろんな雑談を振っている」。

コミュニケーションを密に取ることで、生産性をあげようとする管理職は多いと思います。しかし、実は雑談には「生産性を上げる雑談」と「何の意味もない雑談」があるのです。

社内のコミュニケーション力を上げる独自のノウハウ「コメディケーション」を260社、2万6000人以上に提供している、元お笑い芸人コンサルである中北朋宏氏。

『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』では、中北氏がこれまでの経験やお笑い芸人として培った技術を駆使した「人を動かすコミュニケーション術」を網羅。

以下では、その中北氏が「生産性を上げる雑談、下げる雑談」について解説します。

チームの生産性が上がる雑談、下がる雑談

管理職になり、部下と関係性を深めようと「雑談」を意識してしている、という人を見かけます。


「毎日、天気の話や、最近のニュースなど話しやすい話題で雑談をしている」

そんな涙ぐましい努力をしている方々にとって、悪い知らせです。

普通の雑談で部下との関係を深めることはできません

確かに、ある会社のデータでは、部下の成長度合いと月間のコミュニケーションの時間に相関関係があるとされています。

部下が「非常に成長している」と実感をしている人の約半数が、部下とのコミュニケーション時間を「月間6時間以上」とっていると回答しています。

部下の成長のためには、コミュニケーションを高頻度でとる必要がありますが、ここで勘違いしてしまう人がいます。

雑談なら「どんな内容でもいい」と天気や昨日見たニュースなどの「軽い雑談」ばかりしてしまう人です。

極端な話、365日天気の話をしても、部下を成長させるのは難しく、良いことといえば「天気に詳しい上司」と思われるくらいです。

もちろん、「話しやすい」など心理的安全性を高めることに貢献することにはなるでしょうが、関係性を深め、チームとして生産性を上げる、となるには話題が弱いです。

一方で「雑談」によって、チームの生産性を大きく上げる人もいます。

では、うまくいっているチームを率いる管理職は、どんな内容の雑談をしているのでしょうか……。

いいチームは「真面目な雑談」をする

企業研修を通して数多くの管理職の方々や、その直属の部下の話を聞いてきた中で、メンバーが一致団結し、仲間として自律的に動いているチームには、ある共通点がありました。

それは、日常的に話されている会話の内容です。

具体的には、たわいない雑談ではなく「真面目な雑談」を日常的に行っているということです。

では、「真面目な雑談」とはなにかというと、「このチームのビジョン」「このチームや会社を具体的にどうしたいか」「部下の未来」「管理職自身の未来について」など、会社や互いの未来についての話が日常的に話されていました。

いいチームでよくされている話題
・「このチームのビジョン」 
・「このチームや会社を具体的にどうしたいか」
・「部下の未来」 
・「管理職自身の未来」
・「今後やりたいこと」 
・「今後の課題」

どれくらい日常的かというと「ランチ」「会議のアイスブレイク」「朝活」など、1日の中で繰り返し話題にだされます。

一方、「真面目な雑談」を話すことに、恥ずかしさなど心理的ブレーキが生じている管理職の方。

このような管理職の方のチームは、部下との信頼関係が不足している傾向があり、「互いのことを深くまで知らない」「部下から『管理職に憧れない』」「部下から『この会社での成長は見込めない』」などの言葉が多く聞こえ、最悪のケースは離職につながっているチームもありました。

このように普段の話す内容が、チームの団結力、生産性に大きくつながります

「真面目な雑談が日常的にされているチーム」と、「たわいない雑談だけが話されているチーム」を比較した場合、チームとしての結束感も大きく違い、生産性や結果も大きく違ってくる、ということも納得いただけるかと思います。

自分の未来を管理職こそ考える

ただ、ここまでお読みいただき「真面目な雑談をしたくても、話す内容がない……」という方もいるかと思います。

お気づきの通り、真面目な雑談を日常的にするためには、管理職であるあなた自身が、「どんなキャリアを歩みたいのか」「このチームをどうしたいのか」「会社をどうしたいのか」など、未来について考える機会を設けることが必須です。

当然ではありますが、未来の話を語らず、ただ毎日に忙殺されているだけの管理職に「一緒に働きたい」「この人から学びたい」と思う若手はいません。

また、なかなか「真面目な話をするタイミングがない」と思う方もいるかもしれません。

特に「会社のビジョン」や「目標設定」といったテーマは、重くなりがちです。

これを軽やかに、かつ効果的に伝えるための方法を考えてみましょう。

「真面目な雑談」を自然に、重くなりすぎずに伝える方法を3つ紹介します。

どれも「そんなことわかってる」と思われる方もいるかもしれませんが、ちゃんとできていない人が実は多いです。

コミュニケーションの基本と思って、しっかり確認してみてください。

「真面目な雑談」を自然に行う方法3選

1. オープニングで軽い雑談をしてから、重い雑談に移行する

真面目な雑談に入る前に、まずは軽い雑談で会話を始めます

例えば、週末の過ごし方や最近見た映画の話など、気軽な雑談から真面目な雑談に移ると、自然な印象になります。

例えば「昨日テレビで見た●●という芸人。破天荒そうで、意外と目標設定とか真面目にしてるんだって。しっかりしてるよね」と、この後、部下や管理職の目標設定の話を振ることができます。

2. ビジョンや目標を大げさに表現する

会社の「ビジョン」「目標」を話す際には、ポジティブな未来や期待感を、大げさに強調することで、ユーモアのある話題として捉えてもらえます

例えば、「このプロジェクトを成功させれば、ビルが建つなんてもんじゃない、城が建つ!」といったポジティブな未来を描かせると、「何か適当で面白いことを言っている」と重くならず効果的です。

3. 笑顔で話す。カジュアルな場所で話す

当たり前の話かもしれませんが、真顔で「真面目な雑談」をすると、重さが際立ちます。

また格式ばった会議室でするよりも、ランチタイムや、カフェなどリラックスできる環境で話しましょう。

笑顔を意識的にできている人は意外なほど少ないです。

ためしに今、スマホで自分の顔を見てください。驚くほど、真顔で怖い顔をしていると思います。

話し方を練習するよりも、笑顔の練習をしましょう

そうすれば、自然と「真面目な雑談」も、相手に柔らかい印象で伝えられるようになります。

ぜひ、一度チームで「真面目な雑談」を試してみて、その絶大な効果を確かめてみてください。

(中北 朋宏 : 俺 代表取締役社長)