835psのV12ツインターボ搭載! 新型アストンマーティン・ヴァンキッシュ登場
新たな12気筒フラッグシップモデル
アストンマーティンは9月3日、12気筒エンジンをフロントに搭載しカーボンファイバー製ボディワークを備える2シーターGTを発表した。今回デビューしたのは3代目となる「アストンマーティン・ヴァンキッシュ」で、スーパーカーのパフォーマンスと最新のウルトララグジュアリーさを兼ね備えたモデルとして開発された。
初代となる「V12ヴァンキッシュ」は2000年に発表され、2004年に「V12ヴァンキッシュS」に進化し2007年まで生産された。2代目は2012年に登場し車名からV12が消える。2016年に「ヴァンキッシュS」が追加され、2018年で生産が終了した。
2018年で途絶えていたヴァンキッシュの車名が久しぶりに復活。 アストンマーティン
これまで12気筒フロントエンジンGTのフラッグシップモデルだった限定車の「DBS 770アルティメット」は、最高出力770psで最高速度340km/hをマークしていた。しかし新型ヴァンキッシュではさらにパフォーマンスを突き詰め、最高出力は835ps で345km/hとさらなる高みに到達していることに注目したい。
V12エンジンは835psを発揮
ヴァンキッシュのノーズに収まるのは、クラス最強となる835psを発揮する5.2リッターV12ツインターボエンジンだ。仮想敵は存在しないと謳うが、最高出力、最高速度ともにフェラーリ12チリンドリを上回っている。
新型V12エンジンは、強化されたシリンダーブロックと新設計のシリンダーヘッドとカムシャフト、インテーク/エグゾ−ストマニフォールドとコンロッドを採用。さらには大型インジェクターを組み込むためにスパークプラグを移設するなど、実質的に新設計といえる内容だ。
835psを発揮する5.2リッターV12ツインターボエンジン。 上野和秀
ツインターボチャージャーには「ブーストリザーブ機能」が追加された。これはパーシャルスロットル時でも必要なブースト圧より高めておき、ドライバーがフルパワーを要求した時に、蓄積されたブースト圧を開放し即時のレスポンスを実現するというもの。
エンジンはフロントミッドシップで搭載され、Aピラー前のホイールベースを80mm延長し、前後軸間の重量物を中央に配置することにより、前後重量配分は51:49を実現。
この新型ヴァンキッシュに搭載されるエンジンは、熟練のエンジニアにより手作業で組み立てるため、年間1000台以下の限定生産モデルとなる。
ZF製8速オートマティックトランスミッションが採用され、ここにE-diffと称するエレクトロニック・リアLSDを組み合わせる。E-diffはDB12とヴァンテージから導入されたESP(横滑り防止装置)と連携し、ドライバーに対する運転支援と最大限の安定性を確保する。
注目したいのはアストンマーティン・アラコム・フォーミュラ1チームのテクニカルパートナーを務めるバルボリンが、ヴァンキッシュのために開発したエンジンオイルが高性能を支えることだ。このエンジンオイルは熱放出率が50%高く、最適な油温に保たれることにより適正な油圧が維持される。
剛性を高めたシャシー
シャシーはアストンマーティン独自のアルミニウム製押し出し材を接着して構成される。剛性を強化する部材を追加したことにより、前フラッグシップモデルのDBS 770アルティメットに較べ横剛性を75%向上させた。このほかフロントサスペンションタワー間にクロスブレースが採用し、ねじれ剛性と横剛性を高めている。
サスペンションは近代アストンマーティンの定番といえるフロントがダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンクを採用する。専用のキャリブレーションが施されたビルシュタイン製DTXダンパーは、ドライブモードごとにセッティングを変えることができる。
メディア向けに都内で公開された新型アストンマーティン・ヴァンキッシュ。 上野和秀
フラッグシップモデルだけにカーボンセラミックブレーキが標準装備され、スチールローターに較べ27kgのバネ下重量の削減に貢献している。
アロイホイールは21インチの鍛造製。タイヤは専用設計のピレリP-Zeroで、ヴァンキッシュのために開発された専用品が組まれる。こちらには室内の騒音を半減できるピレリ・ノイズ・キャンセリング・システム(PNCS)を備える。
気品を感じさせるデザイン
スタイリングは近年のアストンマーティン2ドアクーペの流れを汲むもので、より洗練されたデザインでまとめられている。この種のモデルにある威圧的な造形は見られず、アストンマーティンの伝統と気品を感じさせる。
ボディサイズは全長4850mm、全幅1980mm、全高1290mmで、DBS 770アルティメットに較べ全長が135mm、全幅が10mm、全高は5mm大きくなった。またDBSでは2+2だったが、新型ヴァンキッシュでは2シーターと割り切られている。
近年のアストンマーティン2ドアクーペの流れを汲むデザイン。 上野和秀
フロントバンパー、フェンダー、グリルのデザインを一新。なかでもグリルは開口部がDBS 770アルティメット比で13%拡大され、エンジンの冷却性能を高めた。
独自の装備としては、光透過率6%のティンテッドガラスによるパノラミック・ラスルーフが標準で備わることに注目したい。今回展示されたヴァンキッシュは、オプションのカーボンルーフ仕様だった。
テールライトはヴァルキリーに始まるLEDライトブレードを片側7個ずつ配置。モダーンなデザインで新型ヴァンキッシュであることを主張する。またフロントのデイライトは、DB12やヴァンテージと同様にLEDライトブレードを使用する。
リアエンドのデザインも特徴的だ。トランクリッドの上端はダックテールとされ、「シールド」と名付けられた、浮くように取り付けられたガーニッシュパネルがテールライト間に位置し、カーボン地色かペイント仕上げを選べる。
人にやさしいインテリア
インテリアは「クラフトマンシップ」と「精度」をテーマに開発された。各種素材を組み合わせ、ラグジュアリー感と上質感を高めたモダンでクリーンなデザインだ。
ドライバーの正面にはフルデジタルの 10.25 インチ TFT ドライバーディスプレイが配され、センターコンソールにはインフォテインメント、ナビ、空調、さまざまな設定が行える10.25インチのタッチスクリーンが位置する。
インテリアはクラフトマンシップと精度がテーマ。 上野和秀
エアコンの温度調整や、オーディオのボリュームは、アストンマーティンが謳うデジタルとアナログを融合した造りとなっている。これらは物理スイッチで行い、乗る者の操作性を優先した優しいクルマ創りが感じられる。
新型ヴァンキッシュは既にオーダーを受け付けており、最初のデリバリーは 2024 年第 4 四半期を予定していると発表された。
SPEC:ASTON MARTIN VANQUISH
アストンマーティン・ヴァンキッシュ
全長×全幅×全高:4850×1980×1290mm
駆動方式:RWD
車両重量:1774kg
パワートレイン:V型12気筒DOHC4バルブ 5204cc
+ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:835ps/6500rpm
最大トルク:101.9kg-m/2500-5000rpm
最高速度:345km/h
ギアボックス:8速オートマティック
タイヤサイズ(F/R):275/35ZR21 / 325/30ZR21
燃料タンク容量:82リッター
タイヤは専用設計のピレリP-Zeroで、ヴァンキッシュのために開発された専用品。 上野和秀