高齢者の足は危険と隣り合わせ! 免許返納後のモビリティとして存在感の高まる「シニアカー」が抱える問題とは
この記事をまとめると
■シニアカーと呼ばれる電動車いすは身体が不自由な人などを対象にした医療機器の一種
■高齢ドライバーの免許返納を後押しする動きによりシニアカーが注目されている
■シニアカーによる事故も多くシニアカーの利用者からは抜本的な街の改革が望まれている
医療機器として開発された「シニアカー」
一般的に「シニアカー」と呼ばれる乗りものは、シニア(高齢者)が使うことが多いため、そう呼ばれる。市街地の商店街や、地方の農村部などで走行している様子を見る機会も多いことだろう。車両の分類としては電動車いす。それにハンドルがついたモデルについては、ハンドル型電動車いすになる。
本稿では、シニアカーという名称を使い、この先の話を進めることとする。
そもそもシニアカーは医療機器であり、身体が不自由な人、または高齢になって長時間歩行することが体力的に難しい人を対象に開発されたものだ。
製造している企業は、大手ではスズキ(商品名:セニアカー)が長年に渡り事業を展開しており、また小規模の事業者が自社製造したり台湾や中国などから完成品を輸入販売するケースもある。
さらに、ベンチャーではWHILL(ウィル)が独自企画したモデルを自動車販売店などを通じて提供している。
すでにシニアカーによる死亡事故も起こっている
近年、国や地方自治体が高齢ドライバーの免許返納をあと押しする動きを見せていることもあり、高齢者のシニアカーに対する関心も少しずつ上がってきた印象がある。
道路交通法では、シニアカーは歩行者扱いとなるため運転免許証が必要ない。
また、地方部では人口減少などの影響でガソリンや灯油の需要が減少し、ガソリンスタンドの経営存続が難しいとして事業の閉鎖が相次いでいる。そこで、ガソリンに依存しない移動方法として、地方のメディアなどでは、自宅で簡単に充電できるシニアカーの存在をクリーズアップする場合も少なくない。
少子高齢化の社会において、シニアカーに対する世間の期待が高まっているのだ。
一方で懸念もある。ユーザーがシニアカーの安全性に対してどう意識するかだ。
消費者庁や国・地方自治体には、シニアカーで走行中に運転者が転んで怪我をしたり、また最悪のケースでは死亡に至ったケースが報告されている。
田んぼのあぜ道や踏切で、また歩道と車道の段差などで車輪が引っかかったり転倒してしまう人がいる。
また、歩行者扱いのため、通行するのは右側通行が基本。そうなると、歩道がなく、路側帯が狭いところでは、左側通行の自動車、バイク、自転車と向き合うかたちでシニアカーは走行するという危険な状態となる。
シニアカーのメーカーでは、販売店を通じて安全運転教室などを定期的に開催し、シニアカーの正しい使い方を指導して、安全性を高めようと日々努力しているが、街の構造上、どうしても危険なシチュエーションに遭遇するリスクがある。
理想的には、シニアカーの需要が高まっている地域では、抜本的な街の改革が望まれるが、現実としては行政側の予算が不十分であったり、ほかの住民の了解を得ることが難しい場合も多い。
変わりゆく日本社会において、地域社会におけるシニアカーのあり方が問われている。