フィナステリド(プロペシア)の副作用は?効果や禁忌などの基本情報も解説

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みなさんは日本人男性の40代で約3人に1人が男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia:AGA)であることをご存知でしょうか。

AGAの治療薬フィナステリドは有効性があるとされ、服用している方も多いと思います。

効果が期待できる一方で、不適切な使用で健康被害を生じるおそれがあることをご存知の方は少ないかもしれません。

厚労省は一般使用者に向けて、医師の処方によりフィナステリド(プロペシア)を正しく服用するよう注意喚起を行っています。

また2023年にはプロペシア錠の説明書(医療用医薬品添付文書)において、「重要な基本的注意」の項に自殺関連事象に関する注意事項が追記されました。

そこでこの記事ではフィナステリド(プロペシア)を正しく服用するために、副作用・効果・禁忌などの基本情報に加え使用上の注意について詳しく解説します。

AGA治療中や治療を検討している方はぜひ参考にしてください。

監修

フィナステリド(プロペシア)の副作用


フィナステリドはもともと前立腺治療薬(商品名:プロスカー)として開発されました。思いもよらぬ別の作用として毛が生えることがわかり、その後男性型脱毛症(AGA)の治療薬として承認されたという歴史があります。
日本皮膚科学会の診療ガイドラインでは、フィナステリドの内服は男性型脱毛症(AGA)に対して推奨度A(行うよう強く勧める)です。フィナステリドは有効な薬ですが、期待される効果以外の望ましくない作用(副作用)があります。主なものは以下のとおりです。

肝機能障害

蕁麻疹

リビドー減退

勃起機能不全

そう痒症

血管浮腫

めまい

抑うつ症状

それぞれについて解説します。

肝機能障害

フィナステリドの重大な副作用として肝機能障害があります。発現頻度は不明とされていますが、本剤は主に肝臓で代謝されるので、肝機能障害のある患者さんは特に注意が必要です。
症状としては、疲れやすい・体がだるい・力が入らない・吐き気・食欲不振などがあります。体調に異常を感じたら医師に相談し、投与中止などの適切な処置が必要です。

蕁麻疹

発現頻度は不明とされていますが、服用して発疹・発赤など肌に異常が生じたら医師に相談しましょう。

リビドー減退

プロペシアのインタビューフォームによると、リビドー(性欲)減退の発現頻度は1.1%とあります。リビドー減退にはさまざまな要因が関係しているので自己判断で服用を中止するのではなく、医師に相談することが重要です。

勃起機能不全

インタビューフォームでは勃起機能不全の発現頻度は0.7%です。症状があらわれた場合は自己判断で服用を中止せずに、まずは医師に相談しましょう。

そう痒症

そう痒症は発疹がないにも関わらず痒みを感じる症状です。肝障害など基礎疾患に伴うことが多いですが、原因不明の痒みを感じたら医師に相談しましょう。

血管浮腫

発現頻度は不明ですが、口唇・舌・咽喉・顔面に症状があらわれます。具体的には口唇・舌・咽喉・顔面が急に腫れる・喉がつまる感じ・声が出にくいなどです。症状があらわれたら速やかに医師に相談することをおすすめします。

発疹

発現頻度は不明ですが、フィナステリドの服用により皮膚が過敏になり、発疹が出現する場合があります。蕁麻疹のようなものではなくでも、湿疹などの発疹が出現した場合は受診をおすすめします。

めまい

発現頻度は不明ですが、めまいが生じることがあります。症状としては宙に浮いた感じ・ふらつき・頭が回っている感じなどです。体に違和感を覚えたら医師に相談しましょう。

抑うつ症状

抑うつ症状とは、気分がゆううつになる・悲観的になる・思考力の低下・不眠・食欲不振・体がだるいなどです。人によっては死んだ方がいいと思ってしまうこともあります。
因果関係は明らかではありませんが、フィナステリド服用の患者さんで自殺念慮・自殺企図・自殺既遂の報告があり、プロペシア錠の添付文書の重要な基本的注意の項目にそのことが記載されています。
うつ病・うつ状態を経験した方は特に注意が必要です。自殺に関連するようなことを考えるようになったら速やかに医師に連絡してください。

フィナステリド(プロペシア)の基本情報


フィナステリド(プロペシア)は医療用医薬品です。基本情報について、プロペシア錠の添付文書をもとに詳しく解説します。

効能・効果

プロペシア錠の添付文書には効能・効果として男性における男性型脱毛症の進行遅延とあります。フィナステリドの効能・効果を理解するために、まずは発毛のメカニズムを説明しましょう。毛は皮膚から上の毛幹と皮膚の中の毛根に分けられます。
毛根の根元の膨らんだ部分を毛球といい、毛球の中のくぼんだ部分が毛乳頭です。毛乳頭に接した部分(毛母細胞)が、毛細血管から栄養を吸収して増殖・分化を繰り返して上に伸長し毛になり、毛乳頭からは成長を促すシグナルが毛母細胞に伝えられ毛が成長していきます。
毛髪の場合は成長期(2~6年)・退行期(約2週間)・休止期(3~4ヵ月)のサイクルを繰り返し、ヘアサイクルと呼ばれています。男性型脱毛症(AGA)は、前頭部・頭頂部の頭髪の成長期が短縮することで頭髪が細く短く軟毛化し、最終的に表皮にあらわれなくなる現象であり、原因物質はジヒドロテストステロン(DHT)です。
テストステロン(男性ホルモン)は5αリダクターゼにより活性の高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体と結合します。DHTと結合した男性ホルモン受容体は、髭では細胞成長因子などを誘導しますが、逆に前頭部・頭頂部ではTGF-β・DKK1といった細胞の増殖を抑制する物質を誘導することが報告されています。
頭髪の元となる毛母細胞の増殖が抑制されて成長期が短縮すると、頭髪が長く太く成長する前に抜けてしまい全体として薄毛が目立つようになるのです。AGAは進行性であり、何もせず放置していると、髪の毛が減り続け髪が薄くなっていきます。フィナステリドは5αリダクターゼの働きを阻害することにより、DHTを低下させ抜け毛を減らしAGAの進行を遅らせる作用があります。
薄毛になっても髪の毛は太く長く育つ可能性があるので早めの治療が大切です。プロペシア錠の添付文書には効能・効果のほか、効能・効果に関連する注意として以下の内容が記載されています。

男性における男性型脱毛症のみの適応(ほかの脱毛症の適応はない)

20歳未満での安全性・有効性は確立されていない

女性の適応はない

日本皮膚科学会の診療ガイドラインでは、女性への投与は無効あるいは有害であることを示すエビデンスがあるとして行うべきではないとしています。厚労省は女性と小児に使用しないよう注意喚起を行っています。

用法・用量

男性成人には通常、フィナステリドとして0.2mgを1日1回経口投与します。副作用や効果をみながら必要であれば適宜増量が認められていますが、1日1mgが上限です。
フィナステリドの先発品はプロペシアであり、プロペシア錠0.2mgとプロペシア錠1mgがあります。プロペシア錠の添付文書には用法・用量のほか、用法・用量に関連する注意として以下の内容が記載されています。

効果が確認できるまで通常6ヵ月の連日投与が必要

効果を持続させるためには継続的に服用

6ヵ月以上服用しても進行遅延がみられない場合は服用中止

増量による効果の増強は確認されていない

AGAは進行性であり、服用を中止したら再び薄毛が進行します。医師の指示通りに服用しましょう。少しでも早く効果を出したくても、自己判断で増量してはいけません。増量すると副作用のリスクが高まります。
AGA治療は、効果を確認するだけでなく副作用の発現についても注意深く観察しながら行われるべきものです。必ず医療機関を受診して、医師の指示通り正しく服用しましょう。デュタステリドなどほかのAGA治療内服薬も同様に、医師の指示通り正しく服用することが重要です。

禁忌

フィナステリドには禁忌があります。フィナステリドの成分に対して過敏症の既往歴のある患者さんはもちろんのこと、妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳中の女性は禁忌となっています。
生殖発生毒性試験において雄性胎児外部生殖器の雌性化が認められたことから妊婦・妊娠している可能性のある女性に対しての投与は禁忌です。また乳汁中への移行の可能性を配慮して、注意喚起として授乳中の女性も禁忌になっています。厚労省は、妊娠中かその可能性のある女性に対して以下のような警告を行っています。

決してプロペシアを使用してはいけない

砕けたり割れたりしたプロペシアをさわってはいけない

男の子を妊娠している場合、胎児の生殖器に異常を起こすおそれがあります。そのため厚労省は、プロペシアの有効成分が口から入ることはもちろんのこと、皮膚に付着して吸収されることのないように警告しています。

フィナステリド(プロペシア)の使用上の注意点とは?


フィナステリドには、効能・効果や用法・用量に関連する注意のほかにも以下のような使用上の注意点があります。

分割・粉砕しないこと

自殺念慮・自殺企図があらわれた場合は服用中止し速やかに医師に連絡すること

血清前立腺特異抗原(PSA)測定値が低下する

服用中は献血できない

フィナステリドのDHT低下作用により男子胎児の生殖器官などの正常な発育に影響があるとして、妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳中の女性は禁忌となっています。妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳中の女性が、本剤の分割・粉砕によって有効成分に接触する危険性を考慮して、分割・粉砕しないこととされています。
また本剤を服用中の患者さんの血液にはフィナステリドが含まれており、DHT低下作用があるとして献血できません。因果関係は明らかではありませんが、本剤を服用中の患者さんで自殺念慮・自殺企図・自殺既遂が報告されています。
うつ病・うつ状態の経験のある患者さんは特に注意が必要です。自殺念慮など気分の変化が認められたら速やかに医師に連絡してください。その他前立腺癌診断の目的で血清PSA濃度を測定する場合は測定値が約40%低下するので、本剤を服用していることを医師に伝えておきましょう。
このようにフィナステリドにはさまざまな使用上の注意点があるので、治療に際しては必ず医療機関を受診して医師の処方により正しく服用しましょう。ネットで個人輸入品も入手できますが、なかにはニセモノもあります。厚労省は有害事象の発生や偽装医薬品の可能性があるとして、本剤の個人輸入による安易な使用は控えるよう注意喚起しています。

フィナステリド(プロペシア)の飲み合わせについて


医療用医薬品との飲み合わせに関しては、医療用医薬品添付文書に薬の安全性に関わる必要な情報がすべて記載されています。プロペシア錠の添付文書には薬物相互作用の項目に多剤との相互作用は認められないと記載してあります。
薬物のみならず、代謝に影響を及ぼすとされているグレープフルーツジュースやセイヨウオトギリソウ含有食品との相互作用についても記載がないことから、飲み合わせについては問題ないといえるでしょう。

編集部まとめ


男性型脱毛症(AGA)治療薬であるフィナステリド(プロペシア)は日本皮膚科学会の診療ガイドラインで推奨度A(行うよう強く勧める)の薬です。

効果が期待され需要の高い薬ですが、安易に使用してはいけない薬でもあります。

男性胎児の生殖器に異常を起こすおそれがあるとして妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳中の女性は禁忌であり、女性は服用してはいけません。

また、自殺念慮・リビドー減退・勃起不全などの有害な事象も報告されているので、医療機関を受診して医師の指導のもと正しく服用する必要があります。

有害事象の発生や偽装医薬品の可能性があるので、個人輸入で入手するのはやめましょう。

AGA治療の成功の鍵は、最低でも6ヵ月間毎日継続して薬を服用することです。医師によるエビデンスに基づいた効果判定や副作用のチェックが必須となります。

必ず医療機関を受診して、医師の指示通り正しく薬を服用しましょう。

参考文献

プロペシア(PROPECIA)(男性型脱毛症用薬)に関する注意喚起について|厚生労働省

患者向医薬品ガイド|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

個人輸入において注意すべき医薬品等について|厚生労働省