「一生治らない」と言われる糖尿病との正しい向き合い方とは? 放置するとどんな合併症リスクがある?
「一生治らない」と言われる糖尿病との正しい向き合い方とは? 放置するとどんな合併症リスクがあるのかについて、「豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック」の澤口達也先生に解説していただきました。
※この記事はMedical DOCにて【糖尿病は治らない? 専門医が糖尿病になると治らないと言われる理由・対策・治療法を解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
澤口 達也(豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック)
日本大学医学部医学科卒業。その後、東京医科歯科大学初期臨床研修医、東京都健康長寿医療センターや横浜市立みなと赤十字病院に勤務、獨協医科大学心臓・血管内科 / 循環器内科助教を務める。2023年、東京都江東区に「豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック」を開院。医学博士。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会認定内科医、日本医師会認定健康スポーツ医。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、日本内分泌学会、日本甲状腺学会、日本アレルギー学会、日本ステロイドホルモン学会の各会員。
編集部
治療をせずに放置すると、どうなるのですか?
澤口先生
高血糖の状態が続くと、毛細血管や神経などに障害が表れます。その結果、「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」などの合併症が進行し、場合によっては重篤な状態になることもあります。また、「脳梗塞」や「心筋梗塞」など、大きな血管の障害も起こり得ます。そうした状態を引き起こさないためにも、治療によって血糖値が安定した後も、治療を継続していくことが必要なのです。
編集部
糖尿病の合併症は怖いと聞いたことがあります。
澤口先生
たしかに、糖尿病網膜症が進行すれば失明のリスクがありますし、糖尿病腎症が悪化すれば人工透析を受けなければなりません。また、神経障害が起きれば手足のしびれや痛み、感覚の麻痺が出現したり、ひどい下痢・便秘などを引き起こしたりします。手足の血流が悪くなってしまうと、最悪の場合は手足を切断する事態にもなり兼ねません。実際のところ日本において、失明の原因で2番目に多いのが糖尿病ですし、人工透析を受ける原因疾患の第1位も糖尿病と言われています。
編集部
糖尿病の合併症はQOLを低下させる要因にもなるのですね。
澤口先生
そうです。そのため、糖尿病治療では合併症を予防することが目的の1つになります。
編集部
糖尿病を予防するためには、どうしたらいいのでしょうか?
澤口先生
まずは「健康的な食事を摂る」「適切な運動習慣を身につける」ことが必要です。また、ストレスと糖尿病の関係性も指摘されており、ストレスが溜まったり睡眠不足だったりしても血糖値が上がりやすくなることから、日常的にストレスを溜めないよう工夫することが大切です。加えて、アルコールの多飲や喫煙も糖尿病による合併症の発症リスクを高めますから、節酒・禁煙を心がけましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
澤口先生
糖尿病の初期は自覚症状が表れないため、危機感を持つことが難しいとは思いますが、血糖値を高いままにしておくと、知らず知らずのうちに合併症が進行していきます。糖尿病の合併症は基本的に「悪化したものを健康な状態に戻す」という治療はなく、合併症の進行を抑制することしかできません。そのため、合併症が悪化する前に血糖値を正常化し、合併症を発症・進行させないことが重要です。「糖尿病を発症しても適切に治療をすることで、10年くらい寿命が伸びる」という海外の論文もあります。しかし、適切に治療をしなければ寿命が短くなる場合もあると言い換えることもできます。定期的に健診を受けて、万が一健診で異常があれば、必ず医療機関を受診しましょう。