「完璧な年下妻」と結ばれた彼が別れを選んだ理由
婚活を始めた男性2人の離婚事情から「結婚」について考えてみます(写真:kapinon/PIXTA)
最近は、再婚を希望し、婚活をスタートさせる人も増えている。
先日面談にきた2人の男性もバツイチ。離婚の理由だが、1人は家事を完璧にこなそうとする妻に息苦しくなった。もう1人は、子どもの教育には熱心だが、家事を手抜きする妻に不満がつのり、妻を愛せなくなった。
仲人をしながら婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、婚活事情をさまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、2人の男性が離婚した理由を掘り下げながら、結婚生活にとって何が大切なのかを考えたい。
疲れていても完璧でいたい
しずお(45歳、仮名)は、40歳のときにある結婚相談所に登録をし、2つ下のまりこ(仮名)と結婚したが、結婚生活は4年で終焉した。その理由がこうだった。
「元妻は、とても責任感が強い完璧主義者でした。家事や仕事を誰よりもきちんとするタイプ。会社での評価も高く、役職にもついていました。当時僕は、結婚したら子どもを授かることを望んでいたので、しっかり者の彼女なら、きっといいお母さんになるだろうと思っていたんです」
ところが、一緒に生活を始めてみると、完璧主義の彼女の性格が、だんだんと息苦しく感じるようになっていった。
「彼女が残業をして帰ってきたときには、顔がげっそりしていて、疲れているのがわかった。だけど、そんなときも家事を完璧にやろうとする。食材を冷蔵庫から取り出して夕食の支度に取り掛かるのだけれど、明らかに不機嫌。ご飯を食べるときもツンツンしていて、会話の受け答えにもトゲがあった」
そんな不機嫌な夕食を囲んだある日、先に食べ終えたしずおが、自分の食器を食洗機に入れながら言った。
「忙しいときは、買ってきた惣菜でも僕はいいよ。LINEで連絡をくれたら、僕がコンビニで弁当を買って帰るし、なんなら1食くらいカップラーメンでもいいじゃないか」
この言葉を聞き終えたまりこは、鬼の形相になり、ヒステリックに叫んだ。
「私は一生懸命にやっているのに、その言い草は何?」
そして、まだ食べていた食事を中断し、おいおい泣き出して、部屋に引きこもってしまった。
しずおは、筆者に言った。
「会社の仕事が忙しいときほど、家でヒステリックになるし、突然キレる。その傾向があるとわかってからは、会社から帰ってきてツンツンしながら家事をしたり、料理をしたりする彼女とは、なるべく言葉を交わさないようにしました」
結婚当初は、家事も分担していたのだが……。
「どうも僕のやり方は気に食わないみたいで。掃除や洗濯の仕方、洗濯物の畳み方にいちいち注意が入る。彼女のやり方があって、それを完璧にやらないと気がすまない人だとわかった。
やって怒られたり、彼女がやり直していたりするのを見るのもばかばかしくなって、僕はだんだんと家事をやらなくなりました」
夫婦関係は、どんどんぎくしゃくしていった。結婚生活はトータルで4年だったのだけれど、最後の1年は、離婚についての話し合いの時間になっていたという。
そして、協議書を交わして、離婚となった。
家族がいるのに1人の食卓
のぶお(48歳、仮名)の最初の結婚生活は15年で終幕した。入会面談に来たときに、彼はその結婚生活をこう振り返った。
「結婚当初、職場から1時間半かかる郊外に家を買ったんです。だから通勤に時間がかかって、家に帰るとだいたい21時を回っていた。
子どもがいなかったときは、そこから2人で夕食を食べていたのだけれど、子どもができてからは、仕事から帰ると僕は冷蔵庫に入っているものをレンチンして、1人で夕食をとるという、さみしい食卓になりました」
2つ下の妻、さとえ(仮名)はきれい好きで、掃除や洗濯などの家事は得意だったが、料理は苦手だった。
「結婚した当初から、スーパーの惣菜が食卓に並ぶことが多かった。元妻が料理をするといえば、肉や魚を焼く、生野菜を切る程度。ただ僕は食にこだわりがあるほうではないので、2人で食卓を囲めていたときは、何を食べても幸せを感じていました」
2年後に女の子を授かった。子どもが生まれて子育てに追われるようになったさとえは、さらに料理に手抜きをするようになり、ほとんどが出来合いの惣菜か冷凍食品になった。
「子どもが小さかった頃、私が会社から帰るのは、元妻が子どもを寝かしつけている時間。そのまま寝てしまう日もあったけれど、それは子育てで疲れていると思っていたし、頑張っている元妻に感謝もしていました」
のぶおは、元妻や子どもを起こさないように、冷蔵庫や冷凍庫から惣菜を静かに出して、レンチンし、自分の夕食の準備をした。
「子どもが小さなうちは仕方ないと思っていたのですが、成長してからも、元妻が子どもと先に食事をしてしまう習慣は変わらなかった。会社から帰ると、僕は残り物をレンチンする。それが当たり前のこととなっていました」
さらにさとえは、子どもの教育には人一倍熱心なのだが、のぶおには、どんどん無関心になっていった。
「小さかった頃の子どもは可愛かったけれど、小学校高学年になってくると、父である私に反抗的な態度をとるようになった。家族のうち、自分一人が孤立しているような感覚になっていったんです」
夫婦間も冷え切り、娘が中学に入った年に、妻から離婚を切り出され、離婚することを承諾した。
夫婦にとって大切なことは?
しずおとまりこのケースだが、まりこは完璧主義者。それは、仕事のうえでは評価されるし、ほめられることなのだろう。
しかし、妻が完璧主義を夫婦生活の中で押し通そうとすると、パートナーである夫は、いつしかそれを息苦しいと感じるようになる。
のぶおとさとえのケースは、最初は愛し合って結婚したのだろうが、次第に夫婦のコミュニケーションが気薄になっていった。
子どもが生まれてからは、子育てには熱心な一方で、夫には無関心。それがレンチンする1人の食卓によって浮き彫りにされ、のぶおの孤独感へとつながっていった。また、妻と子どもの間にはコミュニケーションがあるが、夫はいつも蚊帳の外で、家族は2対1の構図になっていった。
今回の2つのケースは、“食事”が夫婦のコミュニケーションの亀裂を生むきっかけになっている。
しずおとまりこのケースは、まりこが手作りの食事にこだわらず、疲れているときは家事を手抜きしてもよかったのではないか。コンビニ弁当を食べながら、1日あったことを話し合う時間を作っていたら、気持ちのすれ違いは生まれなかったような気がする。
のぶおとさとえのケースは、のぶおが帰宅したら、冷蔵庫に入っていた惣菜をさとえが温め直し、ご飯と味噌汁を添えて出す。
あまりにも疲れていた日は、子どもとそのまま休んでもよいのだが、余力がある日は、自分は食べなくても、のぶおが食事している間はそこに座って1日の話をしていたら、夫婦間に亀裂は入らなかったのではないか。
「現実」の結婚で大事なこととは
結婚とは、それまでまったく違った環境で育ち、生活習慣も考え方も違う2人が夫婦となって、一つ屋根の下に暮らすことだ。
他人同士だった2人が夫婦になるのだから、大切なのは会話をする時間を惜しまないこと。気持ちを言葉にして、お互いの考え方や価値観を語り合い、それを認め合うことではないだろうか。
現在、婚活をしている人たちは、“こんな相手と巡り会いたい”という、相手への理想の条件があるだろう。
その理想条件をある程度満たしている人と見合いをして、交際し、結婚していくのだが、出会ってから結婚まで進む過程のなかで、自分の考えや習慣や価値観を押し付けるのではなく、どのくらい相手のそれらを受け入れられるかを考えてみるといい。結婚生活が始まってからも、しかりだ。
相手を認め受け入れるためには、自我のベクトルを一方的に相手に向けて、押し付け、自分が正しいと主張してはいけない。夫婦にとって大切なのは、受け入れと認め合いだ。
(鎌田 れい : 仲人・ライター)